種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

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「センチュリオンの仕業?」
「まだそこまでは分からないが、前回の大会でも同じような事件が起きている。最も被害者の規模は今回の方が圧倒的に多いんだが……」
「前回の時と同一犯?」
「恐らく……同じ手口だから可能性が高い」
「こ、怖いです……」


レノは先日に出会った死霊使いが頭に離れず、嫌な予感がする


(……あいつか?)


しかし、彼が無差別に大会参加者を襲撃する理由が分からない。予選を勝ち残った者だけではなく、敗退した選手まで襲う必要性が不明だ。死霊使いが大会に参加しているのならば自分が勝ち上がるために他の参加者を減らすための行動だと思われるが、それにしては不審な点が多い。


「犯人の手掛かりは……なさそうだね」
「ああ……何せ、被害にあった者全員が何をされたのか分からずじまいだからな」
「あの、襲われた人は大丈夫なんですか?」
「命に別状はないし、特に大きな怪我を負わされたわけじゃない。だが、異様なまでに魔力枯渇を起こしており、魔力が回復するまで大会に参加する事は不可能らしい」
「俺が魔力供給をやれば参加できそうだけど」
「いや、それは辞めた方がいい。あまりにも数が多すぎる……まあ、レノならあっさりと回復させられそうだが……大会で戦うかも知れない相手を助けるのは割に合わないだろう」
「そだね」


放浪島で何十人もの人間の魔力を回復させたレノなら、被害者たちを回復させる事も出来そうだが、これ以上目立つ行動は出来るだけ避けねばならない。王国側としてもレノが目立ち、森人族との確執を深めるのは避けたいところである(それにわざわざ敵に塩を送るような真似をする必要も無い)。


「相手が分からないんじゃ、対策も取れないのか……」
「ああ……参加者全員を護衛できることは出来ない。それに襲撃された者も不用心だという意見も出ている」
「ま、そうだよね」


この剣乱武闘は大陸一の武芸者、もしくは魔術師を決める大会と言っても過言ではなく、わざわざ参加証を得たにもかかわらず、大会の外で敗れる者は参加の資格は無いと判断される。

厳しいようだがこの意見にも確かに一理あり、参加不可能となった選手たちは失格とされ、既にこれまでの被害者の数は40人その内の予選を通過した参加者は28名であり、彼等は既に全員が失格扱いされていた。


「残りの予選通過者は245名……予想を大幅に下回る人数だ」
「確か最高で333名だっけ?」
「ああ……そして今日の第二次予選で64名に選定される……予選免除された私達33名も含めてな」


今回の予選から第一次予選の免除をされていた特別選手たちも参戦し、一気に64名の選手にまで搾られる。5日目以降は選手たちのトーナメント方式となり、優勝者が決まる。


「今回の予選の内容は知ってるの?」
「いや……私も知らされていない。あくまでも一参加選手として出場するからな」
「わうっ……リノンさん達とは戦いたくないです」
「そうだな……」
「同感」


試合内容が分からないため、もしかしたらこの場にいる面子での戦闘も有り得る。だが、出来れば全員が大会の本戦に出場したいところだ。


「そう言えばさっきアルトと会ったけど……リノン達は会った?」
「アルトが?いや、ここには来ていないな」
「最近、入れ違いが多い」


てっきりリノンに会うために地下施設に訪れたと思い込んでいたが、どうやら違うらしい。彼は王族のため、この地下施設の特別個室ではなく、外の宿泊施設で寝泊まりしているはずだが、一体何の様で訪れたのか。


「それより気になる事があるんだけど」
「ん?何だ?」
「どうしました?」
「?」


レノは聖痕の話を伏せ、地下施設から奇妙な魔力を複数感じる事を伝える。レノが聖痕を回収している事を知っているのはホノカとヨウカ、あとは故人ではあるがミキだけであり、他の者には伝えていない。

別にリノン達を信用していない訳ではないが、彼女達は王国側の人間のため、聖痕を集めている事を上層部に報告する可能性は否定できない。聖痕回収がセンチュリオンに繋がる可能性が高い以上、王国側も事情を知ればレノに対して詰問してくるだろう。

彼としてはこれからも内密に聖痕回収を行うため、出来れば王国側の力を頼りたくない。不用意に大々的に聖痕所持者の調査を行えばセンチュリオンに感付かれる可能性がある。


「奇妙な魔力か……確かに、昨日と比べて雰囲気が可笑しくはあるが……」
「……様子がおかしい奴、何人か見かけた」
「わぅっ……臭いがまだします」


既にこの通路は特別個室が並んでおり、一般参加者の出入りは禁止されているはずだが、ポチ子の様子を見る限りはまだ死臭を感じ取れるらしい。


「参加者の中に死人が混じっている可能性が高い……内密に大会側に注意したらどう?」
「そうだな……だが、もうすぐ予選が始まる。間に合うかどうか」
「え?大会開始は正午からじゃ……」
「ん、聞いてないのか?大会の開始時刻が変更の報せが木札を通して届いているはずだが……」


レノとポチ子が自分の参加証の証である「木札」を確認すると、今までは自分の参加者のナンバーだけが刻まれていたはずだが、何時の間にか表面に新しい文字が浮かんでいる。


『予選2日目の大会開始時刻を変更』
『当初の予定時刻「正午」から「午前9時」に変更』
『時刻までに「都市内部」に集まらなければ失格とする』


この3つの文字列が並んでおり、レノは都市内部という文字に首を傾げる。何故、闘技場ではなく都市内部という文字が刻まれているのか。



――ピンポンパンポンッ……



地下施設内に奇妙な警報音が鳴り響き、周囲を見渡すと何時の間にか天井にスピーカーらしき機器が設置されており、すぐに実況と審判役を担うラビットの声が流れてきた。


『え~……全参加者の皆様がこの「都市」に集まったのを確認しましたので、闘技場に待機している参加者の皆様だけに規則の説明を先行します。この場にいない選手の方々にも、木札を通して説明をお伝えしますのでご安心下さいね』


若干、声量が低く、明らかに寝ぼけている様子でラビットは説明を開始する。
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