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剣乱武闘編
地下施設での邂逅
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――ラビットの語る「第二次予選」の内容と規則(ルール)は以下の通りに説明された。
・予選の場所はこの闘技場を中心にした半径1500メートルの「街中」であり、既に住民の避難と64名の審判員が配置されている。
・今回の戦闘方法はバトルロイヤル形式であり、予選通過者の約280名が競い、ここから64名まで搾られる。
・街中での戦闘に備え、既に数多くの罠が仕掛けられており、それらを掻い潜り、あるいは利用して他の選手たちを打ち倒す事も認められる。
・大会側の審判員や退去が遅れた一般人の攻撃は禁止されており、もしも仮に攻撃を行った場合は即座に失格となる(木札を利用して大会の運営側は常に監視している)。建物の大々的な破壊も認められず、住居の中に隠れこむ事も禁止。
・選手達は木札を必ず「胸」か「腕」もしくは「背中」に張り付ける事を義務付けられており、この木札を破壊された時点で失格となる。但し、破壊されずに奪取した場合は復帰は認められる。
・それぞれの選手たちの木札には「1~5」の数字の「P(ポイント)」がランダムに刻まれており、自分が所持している木札の「P(ポイント)」も含めて、合計Pが「10P」を超えた選手は審判員に木札(自分と獲得した物を含め)を渡せば、大会本戦に参加するために必要な「メダル」と交換できる。審判員達が所持しているメダルは1人1つであり、Pと交換してメダルを入手したとしても、この闘技場に戻らなければ合格は認められない。また、移動中に他の選手にメダルを奪われた場合、相手の選手が闘技場に先に足を踏み入れた場合はその選手が合格となる。同時に木札もメダルを失った人間は当然ながら失格となる。
これらの規則(ルール)を守りさえすれば、後はどのような行動も認められており、選手同士の協力も咎めない。
『――ちなみに予選開始の時間内に闘技場に残っている選手の皆さんは失格となりますので、そこのところは気を付けてくださいね。それでは、せいぜい頑張って下さいね~』
その言葉を最後にラビットの声が途切れ、レノ達は顔を見合わせる。全員が木札を取りだすと、ご丁寧に表面に張り付けられた鏡の部分に「8:24」という時刻まで刻まれている。どうやらただの木の札ではないようであり、まるで現実世界のタブレットのように色々と操作出来るらしい。
「えっと……午前9時から開始なら……あと30分ぐらいしかないですよ!?」
「闘技場の周囲1500メートルの街中が試合場か……という事は、もう移動を始めても問題ないのか」
「もう既に動き出している者も多いな。先に街に移動して、罠の把握と地の利を得ようとしているんだろう」
既にレノ達の目の前では特別個室から次々と選手が飛び出し、人だかりが出来ていた。
「退け!!俺が先だ!!」
「優勝するのは俺だ!!」
「街中かよ……くそっ!!」
大勢の選手たちが通路を駆け、予選が開始されるまで時間的余裕はあるが、少しでも有利な条件を得るために疾走する。
「私達もすぐに……」
「待てや」
「きゃんっ!?」
駈け出そうとしたポチ子の尻尾を掴み、彼女が頬を赤らめて「し、尻尾は駄目です~」と呟きながらレノに振り返る。
「移動するならある程度の人が減った後でいい。今はここで大人しくしてよう」
「しかし……呑気すぎないか?少しでも情報を得るなら、先に動いた方が得策じゃ……」
「大丈夫だよ。それに俺達にはもう利点がある」
「……?」
「この予選は選手同士の協力が認められている。なら、別行動を取るよりも皆一緒に行動した方が安全という事」
「おおっ!!」
レノの言葉に納得し、ゴンゾウとポチ子は頷くが、リノンだけは通路の方に視線を向け、
「それは名案だが……アルトと合流しなくていいのか?」
「何処に行ったのかも分からないしなぁ……」
既に彼は地下施設を出て行ったため、何処に居るのかは見当がつかない。また、この闘技場は試合場として認められないため、何時までも残っているわけには行かない。
「レミアとジャンヌも出来れば一緒に行動したいけど……」
「あの2人はまだ上の観客席に残っているはずだが……もう既に移動を始めている可能性が高いな」
「そうか……なら、そろそろ俺達も……」
先ほどまで通路内で争い合っていた選手たちも移動を終えており、どうやら話しこんでいる間に殆どの者が闘技場の外に移動したらしい。すぐに自分たちも移動を始めようとした時、
「ううっ!?」
「これは……」
「……臭い」
「ああ……」
一番近くに存在する地上に繋がる螺旋階段に向かう途中、移動中に異常な「死臭」を感じ取り、ポチ子以外の全員も勘付く。
「これは……一体何が起きている!?」
「……レノ、囲まれているぞ」
「そうだね」
「わうっ……どんどんと近づいてきます」
通路の前方と後方から足音が聞こえ、ゴンゾウは戦士としての勘で察知したのだろうが、レノとポチ子の聴覚ではっきりと捉える。数までは分からないが、複数人で行動している。
「……階段までまだ距離はある。レノ、転移魔方陣で……」
「そんな時間も無いみたいだけど」
右手から感じる聖痕の反応、そして前方と後方から無数の「漆黒」のフードで全身を覆い隠した集団が現れ、レノ達を挟み撃ちの形で取り囲む。
「こいつらは……」
「わうっ!!」
「死人か!!」
「……それだけじゃない」
レノは前方に視線を向け、無数のマントの集団の中から1人だけ紅いローブを身に纏った背の低い猫背の男が現れ、
ブゥーーンッ!
その男の周りには見覚えのある魔甲虫が纏わりつき、彼が指先を向けると、人差し指の先に虫が止まる。
「……初めまして、か?」
「はっ……直に会うのは初めてだな。半端者」
――最初に出会ったのは1年以上前、次に出会ったのは半月ほど前、どちらも使役している死人での邂逅であり、直に顔を合わせるのは初めてである。
間違いなく、この男こそが死霊使いの正体であり、レノの養母であるビルドを操り、深淵の森のレンとランも操作していた男だ。
・予選の場所はこの闘技場を中心にした半径1500メートルの「街中」であり、既に住民の避難と64名の審判員が配置されている。
・今回の戦闘方法はバトルロイヤル形式であり、予選通過者の約280名が競い、ここから64名まで搾られる。
・街中での戦闘に備え、既に数多くの罠が仕掛けられており、それらを掻い潜り、あるいは利用して他の選手たちを打ち倒す事も認められる。
・大会側の審判員や退去が遅れた一般人の攻撃は禁止されており、もしも仮に攻撃を行った場合は即座に失格となる(木札を利用して大会の運営側は常に監視している)。建物の大々的な破壊も認められず、住居の中に隠れこむ事も禁止。
・選手達は木札を必ず「胸」か「腕」もしくは「背中」に張り付ける事を義務付けられており、この木札を破壊された時点で失格となる。但し、破壊されずに奪取した場合は復帰は認められる。
・それぞれの選手たちの木札には「1~5」の数字の「P(ポイント)」がランダムに刻まれており、自分が所持している木札の「P(ポイント)」も含めて、合計Pが「10P」を超えた選手は審判員に木札(自分と獲得した物を含め)を渡せば、大会本戦に参加するために必要な「メダル」と交換できる。審判員達が所持しているメダルは1人1つであり、Pと交換してメダルを入手したとしても、この闘技場に戻らなければ合格は認められない。また、移動中に他の選手にメダルを奪われた場合、相手の選手が闘技場に先に足を踏み入れた場合はその選手が合格となる。同時に木札もメダルを失った人間は当然ながら失格となる。
これらの規則(ルール)を守りさえすれば、後はどのような行動も認められており、選手同士の協力も咎めない。
『――ちなみに予選開始の時間内に闘技場に残っている選手の皆さんは失格となりますので、そこのところは気を付けてくださいね。それでは、せいぜい頑張って下さいね~』
その言葉を最後にラビットの声が途切れ、レノ達は顔を見合わせる。全員が木札を取りだすと、ご丁寧に表面に張り付けられた鏡の部分に「8:24」という時刻まで刻まれている。どうやらただの木の札ではないようであり、まるで現実世界のタブレットのように色々と操作出来るらしい。
「えっと……午前9時から開始なら……あと30分ぐらいしかないですよ!?」
「闘技場の周囲1500メートルの街中が試合場か……という事は、もう移動を始めても問題ないのか」
「もう既に動き出している者も多いな。先に街に移動して、罠の把握と地の利を得ようとしているんだろう」
既にレノ達の目の前では特別個室から次々と選手が飛び出し、人だかりが出来ていた。
「退け!!俺が先だ!!」
「優勝するのは俺だ!!」
「街中かよ……くそっ!!」
大勢の選手たちが通路を駆け、予選が開始されるまで時間的余裕はあるが、少しでも有利な条件を得るために疾走する。
「私達もすぐに……」
「待てや」
「きゃんっ!?」
駈け出そうとしたポチ子の尻尾を掴み、彼女が頬を赤らめて「し、尻尾は駄目です~」と呟きながらレノに振り返る。
「移動するならある程度の人が減った後でいい。今はここで大人しくしてよう」
「しかし……呑気すぎないか?少しでも情報を得るなら、先に動いた方が得策じゃ……」
「大丈夫だよ。それに俺達にはもう利点がある」
「……?」
「この予選は選手同士の協力が認められている。なら、別行動を取るよりも皆一緒に行動した方が安全という事」
「おおっ!!」
レノの言葉に納得し、ゴンゾウとポチ子は頷くが、リノンだけは通路の方に視線を向け、
「それは名案だが……アルトと合流しなくていいのか?」
「何処に行ったのかも分からないしなぁ……」
既に彼は地下施設を出て行ったため、何処に居るのかは見当がつかない。また、この闘技場は試合場として認められないため、何時までも残っているわけには行かない。
「レミアとジャンヌも出来れば一緒に行動したいけど……」
「あの2人はまだ上の観客席に残っているはずだが……もう既に移動を始めている可能性が高いな」
「そうか……なら、そろそろ俺達も……」
先ほどまで通路内で争い合っていた選手たちも移動を終えており、どうやら話しこんでいる間に殆どの者が闘技場の外に移動したらしい。すぐに自分たちも移動を始めようとした時、
「ううっ!?」
「これは……」
「……臭い」
「ああ……」
一番近くに存在する地上に繋がる螺旋階段に向かう途中、移動中に異常な「死臭」を感じ取り、ポチ子以外の全員も勘付く。
「これは……一体何が起きている!?」
「……レノ、囲まれているぞ」
「そうだね」
「わうっ……どんどんと近づいてきます」
通路の前方と後方から足音が聞こえ、ゴンゾウは戦士としての勘で察知したのだろうが、レノとポチ子の聴覚ではっきりと捉える。数までは分からないが、複数人で行動している。
「……階段までまだ距離はある。レノ、転移魔方陣で……」
「そんな時間も無いみたいだけど」
右手から感じる聖痕の反応、そして前方と後方から無数の「漆黒」のフードで全身を覆い隠した集団が現れ、レノ達を挟み撃ちの形で取り囲む。
「こいつらは……」
「わうっ!!」
「死人か!!」
「……それだけじゃない」
レノは前方に視線を向け、無数のマントの集団の中から1人だけ紅いローブを身に纏った背の低い猫背の男が現れ、
ブゥーーンッ!
その男の周りには見覚えのある魔甲虫が纏わりつき、彼が指先を向けると、人差し指の先に虫が止まる。
「……初めまして、か?」
「はっ……直に会うのは初めてだな。半端者」
――最初に出会ったのは1年以上前、次に出会ったのは半月ほど前、どちらも使役している死人での邂逅であり、直に顔を合わせるのは初めてである。
間違いなく、この男こそが死霊使いの正体であり、レノの養母であるビルドを操り、深淵の森のレンとランも操作していた男だ。
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