種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

現実世界の延長線上

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「……この世界の真実?」
「そう……この世界と貴方が知る現実世界の関係性を知る覚悟はありますか?」
「まわりくどいな……いいから言ってくれ」
「分かりました……一言で告げるなら」


アイリィは左手の人差し指に青い光を灯し、そのまま空中に一筋の「線」を描き、



「――この世界はレノさんが知っている「現実世界」の遥か延長線上の世界なんです」



一瞬、何を言われたのか理解できなかったが、すぐに言われた言葉の意味を理解した。だが、とてもではないがそう簡単に信じられる内容ではない。


「ここが……あの「世界」の未来の世界だって言うのか?」
「そうです。一体、どれほどの時が経っているのかは知りませんが……それが私の出した結論です」
「……詳しく話せ」
「分かりました……けど、あまり聞かなかった方がいいと思いますけどね」



――今から「一千年前」まだアイリィが魔術教会に所属していたころ、彼女は後に「放浪島」と呼ばれる「海上王国アトランティス」に訪れ、興味深い文献と研究施設を発見した。



当時は様々な種族が交わっていた「海上王国アトランティス」にアイリィは研究員として訪れ、海上王国に存在する世界の歴史の資料に興味をそそられる。その中には遥か昔の資料も残されており、彼女は過去の歴史の解明を進める。

海上王国には遠い昔にこの世界で失われた「科学」の資料が保存されており、アイリィはそれらの資料を読み通し、あまりにも突拍子の無い内容に他の研究員は見向きもしなかったが、彼女だけは真面目に考察した。


資料の内容とは嘗てこの世界には「魔法」という概念が存在せず、代わりに「科学」と呼ばれる未知の文化によって繁栄していたという。また、この世界は元々は複数の大陸が存在し、ある事象が切っ掛けで現在のような大陸に統一されたという。



――過去に「科学」によって繁栄していたこの「地球」と呼ばれる星には突然、無数の「隕石群」が墜落し、この隕石の衝突によって当時の人類は1割にまで激減し、さらには星の環境が大きく狂ってしまった事が明かされる。



隕石によって地球の環境に異常が発生し、全世界の生態系が狂わされる。今までに見たことも無い未知の「生物」が世界各地で誕生し、さらに生き残った人間達にも影響が出てくる。

人間の中にまるで動物のような能力を持つ者が誕生し始め、この時に「人間(ヒューマン)」以外の他の種族が生まれた予測される。また、今現在の魔物が生まれたのもこの時期と重なり、当時の「科学」ではどうしようもない状況だったという。

この隕石の影響で誕生した生物は特殊な力を宿しており、後に魔法の基となる力を宿している事が判明した。この際に科学から魔法へと文化が変更され、今の世界に繋がっていく。



――しかし、アイリィはこの資料を全て読み終え、1つの疑問を抱く。確かにこれらの資料に間違いはないだろうが、それにしては星に飛来したという隕石群によって随分と都合がいい世界が出来上がっているように感じた。その考えは間違いではなく、後々に「異世界」から召喚されたという「勇者(人間)」達が語る「RPG」というゲームの世界に酷似している事が判明する。



アイリィはさらに科学という文化が繁栄していた過去の世界の資料を調べ上げ、ある1人の人間に辿り着く。当時の世界でも最も有名な人物であり、史上初の「女性総理大臣」にまで上り詰め、レノとも無関係とは言えない「女性」の事を突き止める。



「――アイリス、という名前に聞き覚えは?」
「……ああ、そういう事か」



その名前を聞いた瞬間、レノは妙な納得をしてしまう。あの「女」ならば、確かにこの世界を作り上げる事が出来るかもしれない。自分の死に際に立ち合い、前世で最後に別れを告げた相手でもある。

だが、この話しぶりだと1つの疑問が浮かぶ。レノは目の前の「アイリィ」が「アイリス」と同一人物、もしくは何らかの関係があると思い込んでいたが、どうやら彼女の話しぶりでは違うらしい。


「このアイリスというのが、どうやら私のご先祖様らしんですよね……レノさんを助ける時に少しばかり記憶を読みましたが、まさか貴方が過去の世界でご先祖様と関わりがあると知った時は驚きましたけど」
「……なるほど」


確かに「アイリィ」が「アイリス」の子孫というならば、彼女と近い雰囲気を纏っている事に違和感は無い。


「レノさんは気付いてないようですけど、私はある程度の容姿は変化出来るんですよ。あの時は「アイリス」の姿なら、貴方と契約を結ぶのに便利だと思って姿を少し変えていたんですよ」
「……性格の悪さは先祖譲りか」
「失礼な……とはいえ、言い訳はできませんね」



アイリィの話によると、この「RPG」を想像させる世界観は全て「アイリス」と呼ばれる存在の仕業であり、隕石によって狂わされた生態系も、もしかしたら彼女が隕石を利用して故意に生態系を狂わさせた可能性も高い。

また、この隕石群を全て最初に確保したのは彼女が生み出した組織であり、隕石から噴き出る未知の「エネルギー」を解析した彼女は「魔法」という超常現象を生み出し、世界中に浸透させたという。



――やがて、この星に墜落した「7つ」の隕石の中から、後の六種族の命とも言える宝玉が生み出され、今現在の世界が出来上がったというのがアイリィの推論だった。
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