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剣乱武闘編
虫の大群
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「傷は治ったよ。けど……」
「ゴンゾウ!!」
ダンゾウが彼を抱き起すが、意識までは取り戻せず、顔色が悪い。すぐにアクアに視線を向けるが彼女は首を振る。
「いっぱい血が出ちゃったからね……助かるかどうかはその子次第。しょれり、ここから離れないとラビットちゃんが困っちゃうよ?」
『あの~……心配なのは分かりますけど、次の試合の予定もあるので移動してください。ゴンゾウ選手は救護室に移送してくださいね』
「そ、そうだな……」
すぐにダンゾウはゴンゾウを背負いあげ、アクアはそのまま空中をふよふよと移動し、人魚族専用の観客席に戻る。
『え~……続きまして――』
ラビットが次の選手の名前を言い切る前に、レノはすぐに地下施設に向かう。ゴンゾウの事も心配だが、まだ地下施設にはホムラが居る可能性が高い。
(あの女……何のつもりだ!?)
この大会に参加している事も驚きだが、観衆の前であのような姿を見せるなど訳が分からない。
「ここで……!!」
ボウッ……!
レノの右手の「紋様」が強く光り輝き、奴と戦うために蓄積させた「魔力」は十分存在し、以前のような結果にはさせない。
「……待ってろ!!」
ダァンッ!!
観客席から移動し、螺旋階段の元までたどり着くと、レノは一気に駆け下りようとした時、
「っ……!?」
暗闇に覆われた階段に足を延ばした途端、異様な気配を感じ取って立ち止まる。この感覚はホムラの威圧感ではなく、危険に直面した際の感覚だ。
「シャドウ……か?」
ライオネルに言われた事を思いだし、暗闇が奴の真価を発揮するらしく、どうしてこの場面でシャドウが待ち構えているのかが気にかかる。レノが目的で襲撃したとしたら、先ほど彼が試合終了後に地下通路内を移動していた時に待ち伏せを行っていた方が有利のはず。
「くそっ……行くしかない」
危険を覚悟で地下通路内に残っているはずのホムラとシャドウの元に向かうため、レノは螺旋階段を駆け下りる。こんな事ならば通路内に転移魔方陣でも仕掛けて置けば良かったと考えていると、
ブゥウウンッ……!!
「またか……」
前方から虫の羽音が聞こえ、すぐにシャドウの「契約虫」らしき黒い塊が壁際を伝って移動してくる。レノはすぐに右手を構えようとしたが、音の数が1つではない事に気が付く。
ブブブブッ……!!
「……嘘だろ?」
――黒色の塊は単体はなく、壁一面に無数の魔甲虫が群がり、その数は数百、下手をしたら数千を超える。
ブァアアアアッ……!!
「嘘っ!!」
無数の魔甲虫が飛び上がり、レノは即座に踵を返して階段を駆け上がる。流石にこの狭い階段内ではあれほどの数とは戦闘出来ず、相手は強い魔法耐性を持っており、1人で戦うには分が悪過ぎる。それでもこの下層に向かうには虫の大群を何とかしなければならず、試しに右手を向け、
「乱刃!!」
ドォオオオオンッ!!
右手から三日月状の嵐の刃を放ち、急成長の影響によってレノの身体が強化された影響か、威力も規模も上昇している。
ドガァアアンッ!!
斬撃が魔甲虫に放たれて薙ぎ払うが、やはり致命傷は与えられず、何十匹か動きを怯ませた程度だ。
「なら……風盾」
ブォオオオオッ……!!
右手に渦巻き状の竜巻を発現させ、螺旋階段に凄まじい突風が巻き起こる。効果は抜群であり、魔甲虫達は階下に吹き飛ばされていく。
「よし……って、根本的な解決にはならないか」
下方に吹き飛んだ虫たちを確認して考え込む。例え暴風で吹き飛ばしたとしても、いずれは魔甲虫達はこの場所に戻ってくるだろう。、
「……よし」
一か八かの賭けではあるが、レノは自分が螺旋階段の中腹部にいる事を確認すると、魔甲虫達が戻ってくる前に壁際にある転移魔方陣を書き込む。
ブゥウウウンッ!!
「来たか……」
魔方陣を書き込み終えると、レノは地上に向けて階段を駆け上がる。すぐに後方から魔甲虫の羽音が聞こえ、一定の距離を保ちながら逃走を行う。
「……見えたっ」
地上の光を確認した途端、後方から追跡してくる虫たちの動きが鈍る。
「やっぱりか……」
振り返ると魔甲虫たちは地上から一定の距離を保ちながら壁際で停止しており、レノの様子を見つめてくる。これほどの数の虫たちを1匹1匹操作するとは考えられず、1つの命令に統一して虫たちに指示を与えているのではないかと考えられる。
魔甲虫たちは日の光が当たらない距離に移動し、階段の影から監視を行っている。恐らく階段に降りてくるものを容赦なく攻撃するように指示を与えられているのだろうが、どうやら魔甲虫のほぼ全てが階段の上部に移動してくれたようだ。
「さて……上手く行くかな」
次の試合は既に始まっており、早くしないと地下施設に試合を終えた選手たちが入ってくる。これ以上の時間を掛けていたら、あの2人を逃してしまう。
「転移」
ボウッ……!!
すぐに魔方陣を地面に書き込み、レノの身体が光り輝き、周囲の光景がジェットコースターに乗ったように高速に変化する。そして魔甲虫たちの横を校則で通り過ぎるが、転移している間は誰からも気付かれず、攻撃も受けない。
ブゥンッ……!!
「ふうっ……」
先ほど仕掛けた螺旋階段の「中腹部」に到達し、無事に魔甲虫達を潜り抜けて転移出来た事を確認し、レノは階下に向けて走り出した。
「ゴンゾウ!!」
ダンゾウが彼を抱き起すが、意識までは取り戻せず、顔色が悪い。すぐにアクアに視線を向けるが彼女は首を振る。
「いっぱい血が出ちゃったからね……助かるかどうかはその子次第。しょれり、ここから離れないとラビットちゃんが困っちゃうよ?」
『あの~……心配なのは分かりますけど、次の試合の予定もあるので移動してください。ゴンゾウ選手は救護室に移送してくださいね』
「そ、そうだな……」
すぐにダンゾウはゴンゾウを背負いあげ、アクアはそのまま空中をふよふよと移動し、人魚族専用の観客席に戻る。
『え~……続きまして――』
ラビットが次の選手の名前を言い切る前に、レノはすぐに地下施設に向かう。ゴンゾウの事も心配だが、まだ地下施設にはホムラが居る可能性が高い。
(あの女……何のつもりだ!?)
この大会に参加している事も驚きだが、観衆の前であのような姿を見せるなど訳が分からない。
「ここで……!!」
ボウッ……!
レノの右手の「紋様」が強く光り輝き、奴と戦うために蓄積させた「魔力」は十分存在し、以前のような結果にはさせない。
「……待ってろ!!」
ダァンッ!!
観客席から移動し、螺旋階段の元までたどり着くと、レノは一気に駆け下りようとした時、
「っ……!?」
暗闇に覆われた階段に足を延ばした途端、異様な気配を感じ取って立ち止まる。この感覚はホムラの威圧感ではなく、危険に直面した際の感覚だ。
「シャドウ……か?」
ライオネルに言われた事を思いだし、暗闇が奴の真価を発揮するらしく、どうしてこの場面でシャドウが待ち構えているのかが気にかかる。レノが目的で襲撃したとしたら、先ほど彼が試合終了後に地下通路内を移動していた時に待ち伏せを行っていた方が有利のはず。
「くそっ……行くしかない」
危険を覚悟で地下通路内に残っているはずのホムラとシャドウの元に向かうため、レノは螺旋階段を駆け下りる。こんな事ならば通路内に転移魔方陣でも仕掛けて置けば良かったと考えていると、
ブゥウウンッ……!!
「またか……」
前方から虫の羽音が聞こえ、すぐにシャドウの「契約虫」らしき黒い塊が壁際を伝って移動してくる。レノはすぐに右手を構えようとしたが、音の数が1つではない事に気が付く。
ブブブブッ……!!
「……嘘だろ?」
――黒色の塊は単体はなく、壁一面に無数の魔甲虫が群がり、その数は数百、下手をしたら数千を超える。
ブァアアアアッ……!!
「嘘っ!!」
無数の魔甲虫が飛び上がり、レノは即座に踵を返して階段を駆け上がる。流石にこの狭い階段内ではあれほどの数とは戦闘出来ず、相手は強い魔法耐性を持っており、1人で戦うには分が悪過ぎる。それでもこの下層に向かうには虫の大群を何とかしなければならず、試しに右手を向け、
「乱刃!!」
ドォオオオオンッ!!
右手から三日月状の嵐の刃を放ち、急成長の影響によってレノの身体が強化された影響か、威力も規模も上昇している。
ドガァアアンッ!!
斬撃が魔甲虫に放たれて薙ぎ払うが、やはり致命傷は与えられず、何十匹か動きを怯ませた程度だ。
「なら……風盾」
ブォオオオオッ……!!
右手に渦巻き状の竜巻を発現させ、螺旋階段に凄まじい突風が巻き起こる。効果は抜群であり、魔甲虫達は階下に吹き飛ばされていく。
「よし……って、根本的な解決にはならないか」
下方に吹き飛んだ虫たちを確認して考え込む。例え暴風で吹き飛ばしたとしても、いずれは魔甲虫達はこの場所に戻ってくるだろう。、
「……よし」
一か八かの賭けではあるが、レノは自分が螺旋階段の中腹部にいる事を確認すると、魔甲虫達が戻ってくる前に壁際にある転移魔方陣を書き込む。
ブゥウウウンッ!!
「来たか……」
魔方陣を書き込み終えると、レノは地上に向けて階段を駆け上がる。すぐに後方から魔甲虫の羽音が聞こえ、一定の距離を保ちながら逃走を行う。
「……見えたっ」
地上の光を確認した途端、後方から追跡してくる虫たちの動きが鈍る。
「やっぱりか……」
振り返ると魔甲虫たちは地上から一定の距離を保ちながら壁際で停止しており、レノの様子を見つめてくる。これほどの数の虫たちを1匹1匹操作するとは考えられず、1つの命令に統一して虫たちに指示を与えているのではないかと考えられる。
魔甲虫たちは日の光が当たらない距離に移動し、階段の影から監視を行っている。恐らく階段に降りてくるものを容赦なく攻撃するように指示を与えられているのだろうが、どうやら魔甲虫のほぼ全てが階段の上部に移動してくれたようだ。
「さて……上手く行くかな」
次の試合は既に始まっており、早くしないと地下施設に試合を終えた選手たちが入ってくる。これ以上の時間を掛けていたら、あの2人を逃してしまう。
「転移」
ボウッ……!!
すぐに魔方陣を地面に書き込み、レノの身体が光り輝き、周囲の光景がジェットコースターに乗ったように高速に変化する。そして魔甲虫たちの横を校則で通り過ぎるが、転移している間は誰からも気付かれず、攻撃も受けない。
ブゥンッ……!!
「ふうっ……」
先ほど仕掛けた螺旋階段の「中腹部」に到達し、無事に魔甲虫達を潜り抜けて転移出来た事を確認し、レノは階下に向けて走り出した。
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