種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

最速終了

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「ブモッ……?」
「ふっ……醜いな、しかし、美しくもある!!君という存在がいるからこそ、僕はより光り輝ける!!」


何処からか茂はバラの花を取り出し、口元に加えて観客達に視線を向ける。そんな彼の姿にレノ達は顔を引きつらせる。


「うわぁっ……」
「これはひどい……」
「……この人が一番強い勇者?」
「……全力で否定したいが……事実だ……!!」


あまりの茂の異様な性格に誰もがドン引きになるが、一部の女性観客はうっとりと彼を認める。確かに顔立ちは整っているが、それにしては色々と酷いキャラである。

茂は剣を抜き取り、刀身を露わにする。外見は「レイピア」と「日本刀」を合わせたような形であり、この世界でも珍しい形状の刃だった。


「あれが茂殿が自身の手で作り出した魔刀「村正丸」か……見るのは私も初めてだ」
「え?作り出したって……それに村正丸?」
「ああ、勇者殿の中では一番に茂殿だけがすぐにこの世界に馴染み、王国の鍛冶師から直接手解きされて自分自身で武器を作り出したんだ。あの銀色に統一した鎧も彼の作品だ」
「へぇ~……見かけによらず、器用だな……」
「何よりも凄いのが、茂さんは一から素材を自分で集めてたんですよ。私も時々手伝わされました」
「マジか」
「そう言えば撲の所に始めてやって来たのも彼だな……砂漠を徒歩で横断してきたのは本気で驚いたが」
「マジでか」


外見に寄らず、相当に凄い人物のようだが、試合場で見る限りは痛い男にしか見えない。


『はいはい……私語はそれくらいにして、とっとと戦ってください。始め~』


ガァアアアアンッ!!


いい加減な口調でラビットが最後の試合開始の合図を行い、勢いよく鐘の音が叩かれる。一刻も早く、試合を終わらせたいという思いが伝わってくる。


「ふっ……観衆の目が僕ぶごぁっ!?」
「フンッ!!」


ドゴォオオオッ!!


まだ自分に酔っていた茂の顔面に容赦なくミノタウロスの拳がめり込み、そのまま彼が吹き飛ばされる。誰もがその光景に呆気にとられ、試合が最速で終了したのかと思った時、


「ふんっ!!」


くるりんっ!


謎の擬音を上げ、一回転を行いながら見事に着地し、茂は余裕の笑みを浮かべようとしたが、


ズルンッ!!


「のうっ!?」


何も無いにもかかわらず、唐突に足を滑らせ、そのまま顔面から倒れこむ。その光景に誰もが気まずい表情を浮かべ、即座に彼は起き上がり、


ぼたぼたっ……


「くっ……や、やるな……この僕に傷をつけたのは43人目だ」
「ブモッ!?」


鼻血を垂らしながら顔を抑え、ミノタウロスの方を睨み付ける。吹き飛ばしたのはミノタウロスだが、結果的に勝手に転んで怪我を負ったのは茂に見えるが、


ジャキィッ……!


「僕の剣技を味わうがいい!!」


遂に彼も武器を構え、ミノタウロスも身構えると、2人は硬直状態に陥る。どちらも相当な実力者であり、迂闊には動けない。


「……あの人、本当に強いんだ」
「え?」
「言動はともかく、構え方が様になっている」


今までレノが出会った勇者達の殆どは勇者の恩恵である「魔法(スキル)」に頼りきりであり、実戦技術が疎かになっていたが、茂の構え方は一流の剣士その物であり、アルトにも劣らない見事な構えだった。


「ああ……ふざけているように見えるが、あの人は誰よりも努力家だ。そして、強い」
「シゲルさんはいつも1人で戦ってるんです……よく分からないんですけど、1人で闘う方が「ケイケンチ」というのが多くは入るそうで……」
「へえ……」


旧世界から召喚された勇者達は「ステータス」という能力を扱え、彼らはここがまるで「ゲーム」の世界観だと思い込んでおり、実際に彼等にはレベルという恩恵が存在する。

彼等は魔物と戦闘を行う事で経験値を入手し、レベルを上昇する事でステータスが更新される。確かにゲームと相違ない方法だが、レベルを上げる事ばかりに集中して純粋な戦闘技術を疎かにしやすい。だが、目の前のシゲルの構え方は明らかに何らかの武道を学んでおり、隙が全く無い。


「ふっ……出来れば君とは最終日で出合いたかったが……行くぞ!!」
「ブモッ!?」


ドォンッ!!


シゲルがレイピアを構え、そのまま突進してくる。右手で柄を握り締めながら、ミノタウロスに目掛けて無数の突きを放つ。



――ズドドドドドッ!!



その速度は尋常ではなく、無数の残像を生み出しながら接近し、まるで彼の右腕が何本も生えたかのように思える。


「ブギァアアアアアッ!?」


牛刀を構えて防御を行おうとするが、それよりも先にシゲルの突きがミノタウロスの腹部を貫き、無数の傷口が誕生する。


ドプゥウウウッ!!


「ブギィッ……!?」
「ふっ……降参する気になったかな?」


腹部の傷穴から激しく出血し、傷口自体は小さいが数が多く、ミノタウロスの右手だけでは塞ぎきれない。シゲルはミノタウロスの首筋に愛刀の「村正丸」を構え、


「さあ……終わりだ」
「……ブモッ……!!」


ズズンッ……!!


ミノタウロスは武器を地面に手放し、両手を上げる。それは降伏のポーズであり、完全に戦意を失ったようだ。


『それまで!!勝者「シゲル選手」!!何と、今までの試合の中でも最速に終わらせましたよ!!』
『本当、人は見かけによらないね~』


ラビットの言葉に観客達が湧き上がり、アクアの皮肉に対してシゲルは「ふっ」と自分に酔ったような笑みを浮かべ、武器を降ろした瞬間、


「ブモォッ!!」
「ふげっ!?」
「「「あっ」」」


隙を突いたミノタウロスの頭突きが彼の顔面に激突し、そのまま空中で回転しながら吹き飛んだ――
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