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闘人都市崩壊編
森人族の誇り
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「ふうっ……ここいらの住人の避難は完了したみたいだね」
「ええ……しかし、この調子ではヨウカ様が……」
「はあっ……はあっ……へ、平気だよ」
「無理をするなヨウカ……顔色が悪いぞ」
立て続けに回復魔法を使用し、冒険者を撃退しているセンリよりもヨウカの魔力消費が激しい。彼女の回復魔法は高い治癒力を持つが、その分に相当な魔力を消費してしまう。ホノカは定期的に魔力回復のためにマナ・ポーションを手渡すが、それでも怪我人が多すぎる。
周囲を見渡して次の場所へ移動するが、何か乗り物を確保できればもう少し早く楽に進めるのだが、今の状況では贅沢は言ってられない。
「こんな時にレノたんがいたらなぁ……」
「ああ……彼の魔力供給なら、効率よく回復できるのだろうが……」
「レノさんも考えが合って行動しているのでしょう。さあ、次の場所へ……っ!?」
センリがヨウカに顔を向けた瞬間、その目を大きく見開き、既にバルとカゲマルも動き出していた。
「避けな!!」
「えっ――」
バルの声に反応して振り向くと、自分に向けて短剣が向かって来ることに気が付き、隣にいたホムラが咄嗟に転移魔方陣を展開させようとした時、
ガキィンッ!!
「させないでござる!!」
「わあっ!?」
カゲマルが前に出てヨウカを突き飛ばし、短剣をクナイで払うと、すぐに放たれた方向に視線を向け、ホムラもヨウカを抱き起しながら周囲を警戒する。
「ヨウカ様!!」
「だ、大丈夫だよ~」
「良かった……しかし、何処から来たんだい?」
「分からないでござる……しかし、相当な手練れなのは間違いないでござるな」
「ふむっ……」
周囲を警戒しながらも、バルたちはヨウカを中心に円陣を組み、何処から攻撃されたのか注意する。カゲマルが先ほど庇わなかった場合、あのまま短剣はヨウカの顔面を貫いていただろう。
「……すんすんっ……だめだね、焼けた臭いが広がって鼻が効かない」
舌打ちしながらバルは周囲の建物に落ちた隕石を忌々し気に視線を向け、さらに各地で起きている火災のせいで黒煙が舞い上がっている。一応は王国の魔導士が消火活動を行っているが、人手が圧倒的に足りない。
嗅覚が使えない以上、視覚を頼りに探すしかないのだが、周囲を見渡してもヨウカを狙った人影は見つからない。恐らくはカゲマルと同じ「忍」である可能性が高く、短剣を彼女が調べてみると、刃先に何か紫色の液体が付着していた。
「これは……うっ、直に触れるのは危険でござるな……」
「おいおい……何だいそれ?」
「……アラクネ種の毒だね。僕も一度しか見たことが無いが……これは毒液というよりも溶解液だ」
ジュワァッ……!!
刃先から液体が漏れ出て、そのまま煉瓦製の地面を誘拐させて、地中に染み込んでいく。こんな液体を喰らえば魔物であろうとひとたまりも無く、全員の顔色が変わる。
「たくっ……こんな状況で嬢ちゃんを暗殺しようってのかい!?」
「せ、センリさん……!!」
「大丈夫です、私が守ります……」
「……無理、センリも疲れている」
「いたのでござるかコトミど……あいたっ!?何で叩くのでござる?」
「……その台詞はレノだけで良い」
コトミは胸元からハンカチを取り出し、ヨウカの汗を拭うと彼女は「ありがと~」と疲れた表情を浮かべながら礼を告げる。
既にここの全員が疲れ切っており、救助と暴走した冒険者達との戦闘により、既に限界が近い。ポチ子だけはリノン達が泊まっているバルトロス王国の宿泊施設に向い、援軍を求めに移動しているがあまり期待できない。彼らが一番に保護すべきは王族であり、既に宿から避難している可能性は高い。
「どうする……?このまま退くかい?」
「そうしたい所でござるが……どうやら退路は絶たれたようでござる」
「……くっ」
カゲマルの言葉に全員が視線を向けると、そこには到底冒険者とは思えぬ恰好の集団が現れ、以前にも遭遇したことがある深淵の森の戦士たちだった。
「……巫女姫様を渡せ!!素直に渡せば、我らも危害は加えん!!」
戦士長らしき男が前に出ると、一方的にバルたちに告げる。どうやら彼等の今回の目的はレノではなく、巫女姫(ヨウカ)のようだ。
「……何の真似です!!我ら聖導教会は森人族と永久同盟を結んでいるのですよ!!」
「分かっている!!だが、既に我らは「森人族」から離れた存在だ……これは我ら「深淵の森」に済むの独断行動だ……!!」
歯を食い縛り、戦士長はゆっくりと抜刀すると、他のエルフ達も複雑そうな表情を浮かべながら武器を構える。どうやら彼等も今回の行動には色々と思う所はあるようだが、今のバルたちにとっては邪魔者でしかない。
「何をふざけた事を言ってるんだい!!あんたら、誇りを捨てたのかい!!」
「くっ……」
「森人族は六種族の中でも誇りに重んじる種……何か事情があるのでしょうが、巫女姫様を守るのが私の使命!!」
センリは前に出ると皆を守るように杖を向け、周囲に「光球」を作り出す。だが、これまでの戦闘の疲労によって数は少ない。しかし、巫女姫(ヨウカ)を守るために光球をの形を「鏃」に変形させ、待ち構える。
「……放て!!」
「鉄球!!」
ズドドドドッ――!!
森人族と風の魔力付与がされた矢と、センリが作り出した光の鏃が同時に放たれ、空中に衝突する。
「ええ……しかし、この調子ではヨウカ様が……」
「はあっ……はあっ……へ、平気だよ」
「無理をするなヨウカ……顔色が悪いぞ」
立て続けに回復魔法を使用し、冒険者を撃退しているセンリよりもヨウカの魔力消費が激しい。彼女の回復魔法は高い治癒力を持つが、その分に相当な魔力を消費してしまう。ホノカは定期的に魔力回復のためにマナ・ポーションを手渡すが、それでも怪我人が多すぎる。
周囲を見渡して次の場所へ移動するが、何か乗り物を確保できればもう少し早く楽に進めるのだが、今の状況では贅沢は言ってられない。
「こんな時にレノたんがいたらなぁ……」
「ああ……彼の魔力供給なら、効率よく回復できるのだろうが……」
「レノさんも考えが合って行動しているのでしょう。さあ、次の場所へ……っ!?」
センリがヨウカに顔を向けた瞬間、その目を大きく見開き、既にバルとカゲマルも動き出していた。
「避けな!!」
「えっ――」
バルの声に反応して振り向くと、自分に向けて短剣が向かって来ることに気が付き、隣にいたホムラが咄嗟に転移魔方陣を展開させようとした時、
ガキィンッ!!
「させないでござる!!」
「わあっ!?」
カゲマルが前に出てヨウカを突き飛ばし、短剣をクナイで払うと、すぐに放たれた方向に視線を向け、ホムラもヨウカを抱き起しながら周囲を警戒する。
「ヨウカ様!!」
「だ、大丈夫だよ~」
「良かった……しかし、何処から来たんだい?」
「分からないでござる……しかし、相当な手練れなのは間違いないでござるな」
「ふむっ……」
周囲を警戒しながらも、バルたちはヨウカを中心に円陣を組み、何処から攻撃されたのか注意する。カゲマルが先ほど庇わなかった場合、あのまま短剣はヨウカの顔面を貫いていただろう。
「……すんすんっ……だめだね、焼けた臭いが広がって鼻が効かない」
舌打ちしながらバルは周囲の建物に落ちた隕石を忌々し気に視線を向け、さらに各地で起きている火災のせいで黒煙が舞い上がっている。一応は王国の魔導士が消火活動を行っているが、人手が圧倒的に足りない。
嗅覚が使えない以上、視覚を頼りに探すしかないのだが、周囲を見渡してもヨウカを狙った人影は見つからない。恐らくはカゲマルと同じ「忍」である可能性が高く、短剣を彼女が調べてみると、刃先に何か紫色の液体が付着していた。
「これは……うっ、直に触れるのは危険でござるな……」
「おいおい……何だいそれ?」
「……アラクネ種の毒だね。僕も一度しか見たことが無いが……これは毒液というよりも溶解液だ」
ジュワァッ……!!
刃先から液体が漏れ出て、そのまま煉瓦製の地面を誘拐させて、地中に染み込んでいく。こんな液体を喰らえば魔物であろうとひとたまりも無く、全員の顔色が変わる。
「たくっ……こんな状況で嬢ちゃんを暗殺しようってのかい!?」
「せ、センリさん……!!」
「大丈夫です、私が守ります……」
「……無理、センリも疲れている」
「いたのでござるかコトミど……あいたっ!?何で叩くのでござる?」
「……その台詞はレノだけで良い」
コトミは胸元からハンカチを取り出し、ヨウカの汗を拭うと彼女は「ありがと~」と疲れた表情を浮かべながら礼を告げる。
既にここの全員が疲れ切っており、救助と暴走した冒険者達との戦闘により、既に限界が近い。ポチ子だけはリノン達が泊まっているバルトロス王国の宿泊施設に向い、援軍を求めに移動しているがあまり期待できない。彼らが一番に保護すべきは王族であり、既に宿から避難している可能性は高い。
「どうする……?このまま退くかい?」
「そうしたい所でござるが……どうやら退路は絶たれたようでござる」
「……くっ」
カゲマルの言葉に全員が視線を向けると、そこには到底冒険者とは思えぬ恰好の集団が現れ、以前にも遭遇したことがある深淵の森の戦士たちだった。
「……巫女姫様を渡せ!!素直に渡せば、我らも危害は加えん!!」
戦士長らしき男が前に出ると、一方的にバルたちに告げる。どうやら彼等の今回の目的はレノではなく、巫女姫(ヨウカ)のようだ。
「……何の真似です!!我ら聖導教会は森人族と永久同盟を結んでいるのですよ!!」
「分かっている!!だが、既に我らは「森人族」から離れた存在だ……これは我ら「深淵の森」に済むの独断行動だ……!!」
歯を食い縛り、戦士長はゆっくりと抜刀すると、他のエルフ達も複雑そうな表情を浮かべながら武器を構える。どうやら彼等も今回の行動には色々と思う所はあるようだが、今のバルたちにとっては邪魔者でしかない。
「何をふざけた事を言ってるんだい!!あんたら、誇りを捨てたのかい!!」
「くっ……」
「森人族は六種族の中でも誇りに重んじる種……何か事情があるのでしょうが、巫女姫様を守るのが私の使命!!」
センリは前に出ると皆を守るように杖を向け、周囲に「光球」を作り出す。だが、これまでの戦闘の疲労によって数は少ない。しかし、巫女姫(ヨウカ)を守るために光球をの形を「鏃」に変形させ、待ち構える。
「……放て!!」
「鉄球!!」
ズドドドドッ――!!
森人族と風の魔力付与がされた矢と、センリが作り出した光の鏃が同時に放たれ、空中に衝突する。
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