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闘人都市崩壊編
闘技場の異変
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「よく生きてたな……」
「……少し頭が痛い」
「よしよし……(なでなで)」
「……んっ……」
衝撃の際に頭を強かに打ったのか、よくよく確認するとコトミの頭部に小さなたんこぶのような物が出来ており、刺激しないように頭ではなく頬を撫でやると、ごろごろと猫のように喉を鳴らしながらコトミは抱き付いてくる。
彼女の豊満な乳房が押し付けられるが、今は感触を楽しんでいる暇は無く、レノは「ゲイ・ボルグ」と「クサナギ」が衝突した際に発生した衝撃波に吹き飛ばされた他の三人を探す事を決めた。
一流の魔法使いと盗賊であるセンリとバルはともかく、特に戦闘能力を持たないヨウカが心配であり、すぐにでも捜索を行おうとした時、
「あ、レノたん!!やっと見つけた~!!」
「ヨウカ?」
「……あっ」
――路地裏から出た途端、あっさりとヨウカが姿を現し、彼女は満面の笑顔で2人に向かってくる。コトミ同様、服装に乱れがあるが、特に大きな怪我は無さそうだ。
「良かった~……無事だったんだね」
「まあね……そっちは平気だった?」
「うん。少し頭打ったり、転んだり、変な人たちに追いかけ回されていたけど平気だよ」
「……無事で良かった」
「いや、無事とは言わないよそれ……」
何ともないように語るヨウカだが、よくここまで1人で生き残れたとある意味感心する。だが、よくよく考えればレノと出会った時も彼女は馬に乗った聖導教会の兵士たちからも逃げ延びており、もしかしたら単純な身体能力は獣人族並に高いのかもしれない。
「一応は確認しておくか……」
「え……ひゃんっ!?」
パァンッ!!
ヨウカの尻を軽く叩き、掌を見つめ、
「む、このむっちりとした感触、確かにヨウカだ」
「も、もう……触るなら事前に言ってよう……」
「念のためにもう少し」
「ひゃんっ……お、お尻撫でないでぇ……」
「……むうっ」
恥ずかしげにヨウカは尻元を抑え、コトミは嫉妬したようにレノの腕に抱き付き、取りあえずは戦闘能力が低い2人と先に合流したことに安堵する一方、残りの2人の捜索を始める前に地面に「魔方陣」を書き込み、「枯葉の森」に避難させようとすると、
「ん、もしや……お前は!?」
「ん?」
「あ、ライオンさんだ」
「……がお~」
三人の前方から見知った獅子型の魔人族が現れ、レノと二度ほど交戦した「ライオネル」が姿を現す。咄嗟にレノは2人を庇う様に前に出ると、彼は慌てた様子で両手を上げ、
「ま、待て!!俺は正気だ!!他の奴等とは違う!!」
「……嘘じゃないようだな」
剣乱武闘の参加者たちの殆どが操られているようだが、この反応から察するにライオネルはどうやら無事だったらしく、すぐに警戒を解く。彼は安堵したように近づき、三人を見て腕を組む。
「お前も無事だったようだな……流石は俺に打ち勝った男だ」
「まあね……それより、何が起きているか知っているのか?」
「知らん。たまたま宿から出た途端、他の奴等に襲われてこの様だ……」
ライオネルの全身は無数の切傷や火傷の跡があり、どうやら既に剣士や魔術師などの参加者たちと交戦済みらしい。枯葉闘技場に地下施設ではなく都市の宿に泊まっていたことからリーリスの呪縛から逃れたようだが、随分と疲労している。
「そっちの2人は誰だ?お前の女か?」
「お、女って……照れるな~」
「……嫁です」
「そんな事より、人を探してるんだけど……」
「ん?何だ?」
彼の軽口に2人は照れた様に頬を赤く染めるが、レノはそれを無視してライオネルに「バル」と「センリ」の事を尋ねる。2人の特徴を伝えると、彼は考え込むように顎に手をやり、
「ふむっ……そう言えば、さっき空中で何かが通り過ぎたような気がするが……その2人のどちらかは飛行魔法も扱えるのか?」
「多分、それだ。何処に行ったか分かる?」
「あっちの方角だが……」
ライオネルは闘技場が存在する方角を指示し、全員が視線を向けた瞬間、すぐに異変に気が付く。
「あれ……ね、ねえ、あの大きな岩の塊……なんだかおかしくないかな?」
「……赤くなってる」
「あれは……」
「まさか……」
――何時の間にか闘技場の上空に展開されている魔方陣の紋様が変化しており、魔方陣の上に浮揚する巨大な「隕石」の塊に無数の亀裂が発生しており、罅割れから「赤色の光」が漏れ出ている。
まるで、火属性の魔石を想像させる光を放ちながら、徐々に隕石の塊は罅割れが酷くなっており、段々とだが隕石全体が赤い光に染まっていく気がする。明らかに危険な雰囲気を醸し出しており、全員が冷や汗を流す。
「も、もしかしてだけど……あれって」
「……爆発する?」
「多分……」
「ま、不味い……非常に不味いぞ!!あれほどの巨大な岩石が爆発したら、この都市が……!!」
「だな……」
十中八九、もう少し時間が経過すれば隕石が爆発を起こし、無数の残骸が都市中に降り注ぐだろう。下手をしたら、爆発による勢いだけで都市全体が焼野原と化す可能性も否定できない。
「ど、どうしよう!?誰か、水を持ってきて~!!」
「いや、そんな物でどうにか出来る物ではないだろうが!?は、早く避難しなければ……!!」
「ええい、落ち着け……そうだ、ホノカだ。ホノカの転移魔法なら……」
「……無理。あの隕石、すごく大きい……」
既に闘技場の上空に浮揚する「隕石」の大きさは「300メートル」を超えており、最早ホノカのフライングシャーク号よりも大きい。既にホノカが転移できる範囲を超えており、どうしようもできない(それ以前に彼女の居所が不明なのだが)。
「……時間が無い、ここでもたもたしている暇は無い。早く住民たちを避難させよう」
「う、うん!!勿論、手伝ってくれるよねライオンさん!?」
「え、お、俺もか!?ま、まあ構わんが……」
「……頼りにしている」
「う、うむ……」
ライオネルは冷汗を流しながらも同意し、どうやら心根は優しい男、いや「漢」らしい。4人はその場を離れ、バルとセンリの捜索を行う一方、建物内に残った住民たちの避難を誘導させる事を決意する。
「……少し頭が痛い」
「よしよし……(なでなで)」
「……んっ……」
衝撃の際に頭を強かに打ったのか、よくよく確認するとコトミの頭部に小さなたんこぶのような物が出来ており、刺激しないように頭ではなく頬を撫でやると、ごろごろと猫のように喉を鳴らしながらコトミは抱き付いてくる。
彼女の豊満な乳房が押し付けられるが、今は感触を楽しんでいる暇は無く、レノは「ゲイ・ボルグ」と「クサナギ」が衝突した際に発生した衝撃波に吹き飛ばされた他の三人を探す事を決めた。
一流の魔法使いと盗賊であるセンリとバルはともかく、特に戦闘能力を持たないヨウカが心配であり、すぐにでも捜索を行おうとした時、
「あ、レノたん!!やっと見つけた~!!」
「ヨウカ?」
「……あっ」
――路地裏から出た途端、あっさりとヨウカが姿を現し、彼女は満面の笑顔で2人に向かってくる。コトミ同様、服装に乱れがあるが、特に大きな怪我は無さそうだ。
「良かった~……無事だったんだね」
「まあね……そっちは平気だった?」
「うん。少し頭打ったり、転んだり、変な人たちに追いかけ回されていたけど平気だよ」
「……無事で良かった」
「いや、無事とは言わないよそれ……」
何ともないように語るヨウカだが、よくここまで1人で生き残れたとある意味感心する。だが、よくよく考えればレノと出会った時も彼女は馬に乗った聖導教会の兵士たちからも逃げ延びており、もしかしたら単純な身体能力は獣人族並に高いのかもしれない。
「一応は確認しておくか……」
「え……ひゃんっ!?」
パァンッ!!
ヨウカの尻を軽く叩き、掌を見つめ、
「む、このむっちりとした感触、確かにヨウカだ」
「も、もう……触るなら事前に言ってよう……」
「念のためにもう少し」
「ひゃんっ……お、お尻撫でないでぇ……」
「……むうっ」
恥ずかしげにヨウカは尻元を抑え、コトミは嫉妬したようにレノの腕に抱き付き、取りあえずは戦闘能力が低い2人と先に合流したことに安堵する一方、残りの2人の捜索を始める前に地面に「魔方陣」を書き込み、「枯葉の森」に避難させようとすると、
「ん、もしや……お前は!?」
「ん?」
「あ、ライオンさんだ」
「……がお~」
三人の前方から見知った獅子型の魔人族が現れ、レノと二度ほど交戦した「ライオネル」が姿を現す。咄嗟にレノは2人を庇う様に前に出ると、彼は慌てた様子で両手を上げ、
「ま、待て!!俺は正気だ!!他の奴等とは違う!!」
「……嘘じゃないようだな」
剣乱武闘の参加者たちの殆どが操られているようだが、この反応から察するにライオネルはどうやら無事だったらしく、すぐに警戒を解く。彼は安堵したように近づき、三人を見て腕を組む。
「お前も無事だったようだな……流石は俺に打ち勝った男だ」
「まあね……それより、何が起きているか知っているのか?」
「知らん。たまたま宿から出た途端、他の奴等に襲われてこの様だ……」
ライオネルの全身は無数の切傷や火傷の跡があり、どうやら既に剣士や魔術師などの参加者たちと交戦済みらしい。枯葉闘技場に地下施設ではなく都市の宿に泊まっていたことからリーリスの呪縛から逃れたようだが、随分と疲労している。
「そっちの2人は誰だ?お前の女か?」
「お、女って……照れるな~」
「……嫁です」
「そんな事より、人を探してるんだけど……」
「ん?何だ?」
彼の軽口に2人は照れた様に頬を赤く染めるが、レノはそれを無視してライオネルに「バル」と「センリ」の事を尋ねる。2人の特徴を伝えると、彼は考え込むように顎に手をやり、
「ふむっ……そう言えば、さっき空中で何かが通り過ぎたような気がするが……その2人のどちらかは飛行魔法も扱えるのか?」
「多分、それだ。何処に行ったか分かる?」
「あっちの方角だが……」
ライオネルは闘技場が存在する方角を指示し、全員が視線を向けた瞬間、すぐに異変に気が付く。
「あれ……ね、ねえ、あの大きな岩の塊……なんだかおかしくないかな?」
「……赤くなってる」
「あれは……」
「まさか……」
――何時の間にか闘技場の上空に展開されている魔方陣の紋様が変化しており、魔方陣の上に浮揚する巨大な「隕石」の塊に無数の亀裂が発生しており、罅割れから「赤色の光」が漏れ出ている。
まるで、火属性の魔石を想像させる光を放ちながら、徐々に隕石の塊は罅割れが酷くなっており、段々とだが隕石全体が赤い光に染まっていく気がする。明らかに危険な雰囲気を醸し出しており、全員が冷や汗を流す。
「も、もしかしてだけど……あれって」
「……爆発する?」
「多分……」
「ま、不味い……非常に不味いぞ!!あれほどの巨大な岩石が爆発したら、この都市が……!!」
「だな……」
十中八九、もう少し時間が経過すれば隕石が爆発を起こし、無数の残骸が都市中に降り注ぐだろう。下手をしたら、爆発による勢いだけで都市全体が焼野原と化す可能性も否定できない。
「ど、どうしよう!?誰か、水を持ってきて~!!」
「いや、そんな物でどうにか出来る物ではないだろうが!?は、早く避難しなければ……!!」
「ええい、落ち着け……そうだ、ホノカだ。ホノカの転移魔法なら……」
「……無理。あの隕石、すごく大きい……」
既に闘技場の上空に浮揚する「隕石」の大きさは「300メートル」を超えており、最早ホノカのフライングシャーク号よりも大きい。既にホノカが転移できる範囲を超えており、どうしようもできない(それ以前に彼女の居所が不明なのだが)。
「……時間が無い、ここでもたもたしている暇は無い。早く住民たちを避難させよう」
「う、うん!!勿論、手伝ってくれるよねライオンさん!?」
「え、お、俺もか!?ま、まあ構わんが……」
「……頼りにしている」
「う、うむ……」
ライオネルは冷汗を流しながらも同意し、どうやら心根は優しい男、いや「漢」らしい。4人はその場を離れ、バルとセンリの捜索を行う一方、建物内に残った住民たちの避難を誘導させる事を決意する。
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