種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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ヒナ編

会議の結果

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「……会議の結果が出た」


待合室でヒナ達が待機してから1時間ほど経過し、疲れた表情を浮かべたアルトとジャンヌが戻ってくると、王国に使える騎士団の団長達の会議の結果を伝える。ちなみに今回の会議の参加できるのは各騎士団の団長と副団長クラスだけであり、王国の首脳も交えて会議を開いた。


「私達テンペスト騎士団は一度聖導教会に赴き、彼等のワルキューレ騎士団の協力を要請します。その後は闘人都市の復興作業の協力と、ロスト・ナンバーズからの襲撃に備えて都市の警備を強化します」
「他の騎士団は各地の警備の見直しと、ロスト・ナンバーズの捜索隊を派遣する事が決まった。以上だ」
「お待ちください!!ワルキューレ騎士団の協力はともかく、我々だけがどうして闘人都市の警備に当たらなければならないのですか!?」
「あの都市は間違いなく、ロスト・ナンバーズが再襲撃のために訪れるのは間違いない。捜索隊に入れないと言っても、僕たちテンペスト騎士団の価値が甘く見られたわけじゃない」


ゴルスが憤慨したように言うが、すぐにアルトの言葉に冷静になり、それでも不満そうな表情を浮かべたまま、


「ですが……やはり、都市の警備も重要ですが我々も捜索隊に入るべきでは」
「文句を言うんじゃないにゃ~」
「捜索隊と言っても、有力な情報が入らない以上はどうしようもないだろう。それに今回の聖導教会の訪問はワルキューレ騎士団だけが目的じゃない」
「……オルトロスか」


ヒナの言葉に全員が視線を向け、以前にセンリが語っていたが、聖導教会の地下にはオルトロスと呼ばれる存在が封印されており、カトレア達が襲撃した理由の1つだと言う。

前回は未然に防げたが、それでもデュランダルを一時的に奪われ、暴走した勇者によって聖導教会が大きな被害を受けた。それでもあの時から聖導教会総本部の警備が見直されており、より堅固な要塞と化した。


「……確かにそれもある。だが、今回の訪問の主な目的は……」
「カノン将軍の事です」
「「カノン将軍!?」」


ジャンヌの言葉に待合室に居る全員が驚愕し、特に事情を知らなかったゴルスとキティに至っては目を見開く。彼女は表向きは「行方不明」の扱いであり、未だに生存して聖導教会に入院している事を知らされていない。


「ど、どういう事ですか!?カノン教官が生きていたというのか!!」
「カノン教官の安否は!?ちゃんと生きているのかにゃ!?」
「お、落ち着いてくれ!!それを確かめるためにも、私達は聖導教会に出向かないといけない!!」


詰め寄ってくる2人組にリノンが慌てて抑えると、アルトはジャンヌに視線を向け、


「ジャンヌ、僕は例の件もある。先に行かせてもらう」
「分かりました……お気を付けて」
「ああ……大丈夫だ。もう過ちは犯さない」


アルトは頷くと、自分の背中に装備したデュランダルを確認し、もう二度とリーリスの分身に乗っ取られない様に決意する。



――彼が剣乱武闘の開催前、修行のためにデュランダルの能力を完全に習得するため、在る場所に赴いた。そこは彼にとっても懐かしの場所であり、同時に自分の人生で初めて敗北を味わった場所でもある。



「ヒナ……君も僕に付いてきてくれないか?いや、付いて来て欲しい」
「え?」


まさかのアルトからの言葉に驚いたようにヒナが視線を向けると、彼は苦笑しながら、


「君が僕に対してどう思っているのかは知っている……だが、君に見届けて欲しいんだ」
「どういう事?」
「……僕が本当に聖剣に選ばれる器なのか、もう一度選定の義を再び行う」


選定の義という言葉にヒナは首を傾げるが、すぐに思い出す。聖導教会は以前にデュランダルの継承者を探すために数多くの人間を呼び集め、選定を行った。その際にアルトがデュランダルを引き抜き、彼が所有者として選ばれたと聞いているが、


「……僕が選定の儀を受けて、この大聖剣に選ばれた……だが、結果的にはあんな無様な姿を見せてしまった」



――アルトは自分の欲望のためにレノに勝負を挑み、そして建物の被害も考えずに聖剣の力を解放して戦闘を挑んだ。あの時、彼は首筋にリーリスの分身である「黒蛇」を埋め込まれて冷静な状態ではなかったが、聖剣の所持者がミラークリスタルを通して世界中に失態を見せつけた形となり、本当にデュランダルの所有者なのかと疑われている。



実際、レノとアルトの戦闘の件以来、バルトロス国王は王国が使える2人の大聖剣の使い手同士を戦わせた件で各種族に問い詰められ、立場が悪くなったのも事実であり、人間(ヒューマン)の立場が危うくなっている。

中にはアルトの王位継承権を疑念を抱く者も続出し、街を破壊する彼の姿はとても王国を背負える存在とは思い難い。だが、デュランダルは未だにアルトの手元にあり、彼はまだ聖剣を操作出来る。


「僕はまだデュランダルの力を使用できる……これはまだ、この剣が僕を認めているという事なのか、それとも次の選定者が見つからないだけなのかはわからないが、試してみたいんだ……僕が本当に聖剣の所持者の資格を持っているのか」
「選定の儀って……何度でもやれるの?」
「いえ、本来なら選定の儀とは、前任の聖剣の所有者が死亡、もしくは聖剣から見放された時にしか出来ません。しかし、現在の聖剣の所有者本人が望む場合は特例として開く事が認められます」
「つまり……アルトは自分が本当に聖剣に認められる存在なのかもう一度試したいって事?」
「そうだ……僕自身、撲に疑問を抱いている」
「何を弱気な……と言いたいところだが、気持ちは分かる」
「わふっ……ここ最近のアルトさん、少し怖かったです」
「そうだね」


リーリスに乗っ取られていたとはいえ、アルトは我ながらに暴力的な行為を行い、特にリノンの事に関する事は異常なまでの執着心を露わにしていた。だからこそ、レノを打ち倒す事に必死になっていたが、結果は返り討ちに遭い、逆に彼に救われる形となった。

あの時、アルトに乗り移っていたリーリスの分身が聖石によって浄化された事により、彼は長年の憑き物が落ちた様に楽になり、以前のようなリノンに対する執着心は薄れている。今でも彼女を想う気持ちはあるが、それでも異常なまでの嫉妬心は消失している。


「撲は先行して選定の儀をもう一度受ける。出来ればヒナとリノンに僕の姿を見届けて欲しいんだ」
「リノンはともかく、私も?」
「ああ……君は僕を救ってくれた、だからこそ見届けて欲しい」
「別にそう言う事なら……」


特にヒナもアルトに対して恨みは抱いていないため、断る理由は無い。それに今の彼は何となくだが大丈夫な気がした。


「けど、先行するって事は皆とは一緒に行かないの?」
「君は知らないだろうが、本来なら聖導教会の総本部とは様々な手順を踏まなければ入る事は許されない。だが、聖剣所持者だけは特権として何時でも聖導教会に入れる権利を貰える」
「その割には私、聖導教会に入る事を拒否された事あるんだけど……」
「そ、そうなのか?」


かなり昔の話だが、ミキの弔いのために闘人都市の聖導教会に訪れようとしたときに門前払いされたことがある。あの時はハーフエルフという理由で追い返されたが、巫女姫であるヨウカの取り計らいで自由に行き来できるようになっている。

ちなみにレノの弔いを拒んだ聖導教会の人間は何故か次に訪れたときは姿を見せず、風の噂で追放されたと聞いている。


「まあ、君も何だかんだで聖導教会からは重要人物として指定されている。僕たちだけなら聖導教会総本部に入れるだろう」
「なるほど。けど、どうやって移動するの?今の私は転移魔法は使えないけど……」


一応はカトレアの形見である「十字架鍵」は所持しているが、現在の状態では魔法は使用できないため、聖導教会には転移できないのだが、


「問題ない。王国にも聖導教会専用の転移魔方陣は存在するからね。ジャンヌ、僕たちは先に行かせて……」


コンコンッ……


アルトが言葉を言い切る前に扉がノックされ、ジャンヌが入ってくるように指示を出すと、



「――失礼しま~す!!」



そこにはまるで聖導教会のような修道服を纏った少女が現れ、全員が訝しげな視線を向けると、アルトだけは何かに気付いたように目を見開き、



「み、ミカ!?」
「あ、アルト様~!!」


両目をハートマークに変化させ、何故か修道女の服装の勇者であるミカが彼に向けて突進し、そのまま抱き付いてきた。
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