種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

相談

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「それで僕の所にやってきたのかい?」
「ホノカならなにかいい考えがあるんじゃないかと思って……」
「僕以外にも相談相手はいくらでもいるだろうに」


ソフィアに見合い話が持ち込まれてから翌日、彼女は学園都市にて飛行船で大量の魔石を移送してきたホノカの元に出向き、事の顛末を説明する。どうして彼女を相談相手に選んだのかというと、交易都市を収めており、しかも年齢的にも結婚できるはずなのに未だに独り身の彼女ならば何か良い方法を知っているのではないかと判断したからである。


「大方、僕がずっと独り身だから相談しに来たんだろうが僕と君とでは立場が違うよ? 僕の場合は見合い話を持ち込まれても自分ではっきりと断ってるからね」
「私がそれをやると色々と問題があるらしくて……」
「まあ、表向きは君も王国の配下だからね。断りにくいのも分からないでもないが」


ホノカの場合は彼女が交易都市の頂点に位置するため、結婚を申し込まれたとしても即座に拒否している。実際、彼女が結婚となると色々と問題があり、その場合は夫婦のどちらが交易都市を収めるのか、そもそも夫になる男がどれほど有能な男でなければならないのかが問題となる。

現在の交易都市の発展はホノカの力が大きく、仮に彼女がいなければ現在の都市は繁栄していない。彼女以外の人間が都市を支える事は出来るとも人材が存在するのも怪しく、逆に結婚しても彼女が都市を収めた場合は夫の必要性が疑われる。

理想としては結婚後もホノカが交易都市の頂点の座に位置し、夫には別分野で彼女を支えるのが良いのだろうが、現在の所はホノカ事態が恋愛に現を抜かす予定はないと断言しており、発展に集中していた。


「いっその事、君の代わりにレノ君の姿で「姉と結婚したければ吾輩を倒して見せろ‼」とでも宣言したらどうだい?」
「吾輩なんて1人称は使ったことはないけど、それだと世間にレノがシスコンだと思われるじゃん」
「そうか、一番手っ取り早い方法だと思ったが」


確かにその方法ならば誰も名乗りを上げる者などいなくなる。ハーフエルフの英雄であり、魔王や伝説獣を打ち倒した彼を打倒できるなど思い上がった人間は流石にいないだろうが、仮にいたとしてもレノならば大抵の相手ならば打ち倒せるのは間違いない。問題があるとすれば世間一般にレノが極度のシスコンであると広まってしまう事だが。


「ふむ……やはり、ソフィア君の問題はレノ君と比べて世間にはっきりとした功績を知られていない事だろうね」
「やっぱりそこか……剣乱武闘にでも出場してみようかな」
「ああ、それは良案じゃないか? 近々、本格的に再開する予定なのだろう? 僕にも招待状が送られてきたよ」





――剣乱武闘のロスト・ナンバーズの襲撃による中断から一年近くの時が経過し、ようやく大会再開の目途が立った。前回と前々回は途中で中断されたため、今回は大々的に闘技場の警備を一から見直し、さらには闘人都市には王国軍が配備され、さらには剣乱武闘の参加者も大幅に増やしている。



開催日時は約二週間後であり、闘人都市にもう一度世界中から大勢の種族が集まってくるだろう。今回の優勝賞品は各種族の代表から直接に渡される手筈であり、賞金額も1位から10位までに支給され、さらには「MVP枠」という大会の成績に関係なく観客の投票によって選ばれた選手には特別商品が送られる手筈だった。

今回の剣乱武闘には各種族からも猛者が集められ、既に特別枠の選手には参加将として「金のメダル」が支給され、彼等は予選を免除されて本戦に参加できる事になっている。他にも第一次予選だけを免除される「銀のメダル」最後に大会に参加できる「銅のメダル」が用意されており、参加希望者は剣乱武闘の歴史の中でも最多の「1万人」の枠が存在する。



「確か王国側もレノ君とゴンゾウ君が出るはずじゃなかったのかい?」
「まあね。あんまり興味はないけど、優勝者によって種族間の有利が決まるらしいから頑張るつもりだけど」
「今回から聖遺物の使用は禁止されていたはずだから、君も危ないんじゃないのかい?」
「流石に鬼人化のゴンちゃんとやりあうのは避けたい」


剣乱武闘は過去に二度も大会が中断された失態があるため、大会側の警備方面も強化されており、王国も当然だが協力している。今までの大会の中でも最高警戒体制で大会は開催される手筈だった。


「ゴンゾウ君は王国に所属しているが、彼は巨人族だから優勝したとしたら巨人族側にも有利に働くだろうね。そういう意味では人間は不利になるのかな?」
「ゴンちゃんは巨人族の誇りを持った人間側の戦士として参加する予定」
「そうか。良く分からないが、何だか格好いい響きだな」


ちなみに大会には前回の優勝候補であるライオネルも参加できない。彼の場合は種族代表という立場があるため泣く泣く断念し、その代わりに彼の旧知の仲であるデュラハンが参加する予定であり、他
にも森人族側は「護衛長」と呼ばれるバルトロス王国で言う所の「大将軍」に相当する猛者が参加し、、獣人族からはポチ子同様に「犬牙流」を極めた者が出場するらしく、巨人族も多数の戦士が既に闘人都市に入っているという情報が入っている。但し、いつも通りに人魚族だけは大会には参加せずに大会期間中に特設歌唱劇を行う予定らしい。

レノも予選免除をされた特別選手枠として参加する予定だが、ソフィアは参加する予定はなかった(というよりはややこしい事態になるためにする気もなかったが)ため、ここで実力を見せつけるという意味では剣乱武闘は良い機会かもしれない。


「よし……‼ 大会参加者を全員半殺しにしよっ」
「それはそれで問題があると思うが……まあ、頑張ってくれ」

 
自分の不用意な発言で途轍もないことを口走るソフィアにホノカは内心冷汗も流しながらも、そのまま礼を告げて立ち去ろうとする彼女を引き留める。



「あ、待ってくれ。実は君に頼みたいことがあったんだ」
「ん?頼み?誰を暗殺すればいいの?」
「君が私の事をどんな風に思っているのかが気にかかるが、暗殺ではなく排除してもらいたい存在がいるのは確かだね」


ホノカは一枚の写真を取り出し、ソフィアに手渡す(アイリィが残した彼女の実験試料を参考に大分科学も進歩しており、カメラと似た機械も作り出すことに成功している)。


「これは写真というものだが、絵ではなく風景を紙に書き込むと説明したらいいのか……」
「いや、大丈夫だよ。普通に分かるから説明はいいよ」
「そ、そうかい? なら有難いが……これは試作機の魔導写生機器、面倒だから僕はカメラと呼んでいるが……ともかく、このカメラで撮った写真なんだが……ここに奇妙な影が映っているだろう?」


ホノカが差し出した写真は飛行船から映し出した物なのか、延々と続く森の風景が映し出されており、その中に奇妙な黒い影が隅の方に移っていた。形から察するに鳥の類ではなく、動物のようだが画像が荒くてよく分からない。


「こちらはその影をさらに拡大化させたものだ」
「これって……狐?」



もう一枚写真を渡され、はっきりとした姿ではないが特徴だけは浮き上がっており、白い体毛に覆われた狐のような生物が映っており、何故か尻尾が3本も存在していた。
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