25 / 45
引きこもりの準備します。
23 姫巫女のスキル上げと王家の謝罪
しおりを挟む
「荷物は纏まったし、久しぶりに部屋で回復魔法の反復練習でもしてスキル上げしようかしら」
魔法は使えば使うほど、スキルレベルが上がる。
前世では、フィールドをうろつく魔物に殴られても体力が減らないぐらいの場所、例えば新人さんが戦うはじめの町の草原フィールドなどで、辻ヒールとかして回復魔法のスキル上げをしていたものだった。
これは、この世界でも常識のようで。
とにかく魔法を使って、熟練度を上げるのが上達の近道のようだった。
「うちの執事も侍女長の乳母やも腰痛持ちだし、毎日腰痛の治療したら、結構レベル上がりそうよね」
何せ持病の治療だ。そう簡単に治らない病気だし、彼らも助かるしで、win-winの関係。それに、毎日の訓練にもってこいである。
馬屋番とか下働きの者にまでヒールしたらお父様に序列だの何だので怒られそうなので、近場の家臣達のみで済ますけれど、まあ人助け兼スキル上げでもしましょうか。
「母なる方よ、癒しの奇跡を与え給え。ヒール」
患部を温めてから低級のヒールをじわっと……こう、マッサージのように、徐々に筋肉を揉み解す感じで使う。
「おお、これは心地よいものですなぁ……」
執事がほっこりと笑顔を浮かべたのを横目に、磁気治療もどきでヒールをのんびり掛けていきます。
こうして魔法を使ったりしていると思い出してしまうのが、VRMMOのこと。
私は前世、この世界そっくりのVRMMORPG「ヒーローズVSヴィランズ」 通称HVVで、回復系の役割(ロール)基本職、プリーストを経て上級職のドルイドに就いていた。
ドルイドの良いところは、プリーストの回復能力、能力値上昇(バフ)スキルに加えて森の仲間を使役出来ること。
まああれだ、ホープラビットのミミちゃんを筆頭に、各レベル帯で使役する動物の幅を増やしていき、もふもふパラダイスを築いていたのだ。
とはいえ、仲間に出来るものは限られている。魔物の中でも、精霊寄りとされる善なる獣と称されるごく一部の者のみで。
善なる獣とは、ライトウルフ、ホーリーベア等、ライトやホーリーなど聖なる属性を名前に冠するもの達なので、結構分かりやすかったけど。
特に私のビルドは、自由に割り振れるステータスをSTR、VIT……筋力と体力の二つに極振りしていた殴り僧侶系でして。
ログイン時間が不定期の為ソロ活動が多かった事もあって、盾役になれるホーリーベア等森の仲間達の事は、レベル上げの際にとても重宝していたものだった。
……と、考えている間に施療終了。
私の部屋に呼ぶ訳にもいかず、居間に呼んで椅子を並べて施療した訳だけれど、二人とも血色も良くなり、動きも楽そうで目に見えて効果があったことが分かる。
流石は魔法ね。
「姫様に癒して頂くなんて、何と有難いことか」
「ほっほ。これでまた二十年は頑張れますぞ」
侍女長こと乳母やと執事の爺やが嬉しそうに言ってくれるからヒール修行も嬉しくなるわ
。
さて、ヒールのスキル上げをしたら、久々にもふり甲斐のあるホーリーベアのくま蔵くんを呼び出してもふろう……。
なんて考えていたところ。
◆◆◆
家に篭って一週間目に、王家からの使者がやって来た。
……何故だかついでに、公爵様もくっついて来て。
今日の訪問者は私のお客様なので、私が対応する。
お父様? 隣で仁王立ちしているわ。
「ええと、アマデウス様は何のご用件で」
わあ、面倒なマッドアルケミストが来たぞと私が困惑気味に聞くと。
「僕? そうだね、例の件で続報かな」
彼は中性的な美貌に柔らかな笑みを浮かべる。
例の件、ねえ……ヒロインさんの事かしら。だとしたら、気になっているし話は聞きたいところだけれど。
「そうですの。では、お使者様のご用件が済んだ後、時間を取りますわ」
私はにっこり微笑んで、彼を招き入れた。
応接室に案内された使者の方は、お父様と私を前にして羊皮紙を縦にさっと広げると、王家よりの謝罪の内容を述べる。
「イグ=ロザ国王陛下ならびに王妃陛下からのお言葉である……」
貴色である白に近い、クリーム色のお仕着せを着た王家の使者曰く。
王家から正式な謝罪の言葉を賜ると共に、何やら私にお詫びの品を下さるという。
謝罪内容は、まずは王太子の不貞での婚約破棄の為、婚約自体がない事となった。
それから、姫巫女に対する非礼への謝罪。
流石に国王陛下や王妃殿下がほいほい頭を下げる訳にもいかないので、迷惑料として王妃陛下の化粧領である茶葉で有名な荘園の一部を私のものとして下さるとか。あの荘園の茶葉は一級品だから、これで生きてくだけなら安泰ね。
ついでに没落した伯爵家の名を下さり、女伯に遇するとまで言われたけれど。
私神官だしもともと国から距離を置きたかった事もあって、領地のみ頂くことにして丁重にお断りする事にした。全部断ると角が立ちそうだし、お茶は好きだから荘園は貰うけど。
というか……あからさまに私を王家に繋ぎ止めようとするのいい加減やめよう、ね?
お父様が、今も忿怒の形相で使者を睨みつけているし。無駄に怪我人増やすの嫌なんですけれど……。
そんな微妙な空気を破るように、朗らかな声で公爵様が言った。
「さ、これで用件は済んだよね? ご苦労。君は先に帰って」
「は、ですが、公爵閣下は……」
おそらく馬車を共用してこちらに来たのであろう使者は、公爵の言葉に困惑している。
そこで公爵は、まさかの行為に出た。
「僕はこれから、こちらの姫君に用事があるんだ。無粋な事は言うものではないよ?」
私の座る椅子の肘掛けに腰を寄せると。
私の赤髪を、長く白い指先で一房掬い取って。
それに形の良い唇を近づけて……触れさせた。
すごい気障だけど、美貌の若い公爵様がやると途轍もなく様になるんだね。
私は公爵様の美貌を物凄い近くで見ながら何だか感心した。
おおー、三次元なのに超アップでも破綻がない……凄い。
乙女ゲーの美麗スチルを眺めるように美貌の公爵様をほくほくと眺めていたら、周りがいきなり動き出した。
「は、ははっ!」
そんな絵になる光景に何を思ったか、赤面しつつも慌てて部屋を飛び出て行く使者と。
「こ、この小僧、俺のフレイアちゃんに何をする!! 貴様も王族だろうが、俺は許さんぞー!」
娘に手を出されたが如く怒るお父様と。
「おやおや? 私が姫に以前より求愛している事など周知の筈なのにおかしいね」
私の髪を弄びながら、にこにこと笑う上機嫌なアマデウス公爵様と。
あれ? 何だかカオスです。
魔法は使えば使うほど、スキルレベルが上がる。
前世では、フィールドをうろつく魔物に殴られても体力が減らないぐらいの場所、例えば新人さんが戦うはじめの町の草原フィールドなどで、辻ヒールとかして回復魔法のスキル上げをしていたものだった。
これは、この世界でも常識のようで。
とにかく魔法を使って、熟練度を上げるのが上達の近道のようだった。
「うちの執事も侍女長の乳母やも腰痛持ちだし、毎日腰痛の治療したら、結構レベル上がりそうよね」
何せ持病の治療だ。そう簡単に治らない病気だし、彼らも助かるしで、win-winの関係。それに、毎日の訓練にもってこいである。
馬屋番とか下働きの者にまでヒールしたらお父様に序列だの何だので怒られそうなので、近場の家臣達のみで済ますけれど、まあ人助け兼スキル上げでもしましょうか。
「母なる方よ、癒しの奇跡を与え給え。ヒール」
患部を温めてから低級のヒールをじわっと……こう、マッサージのように、徐々に筋肉を揉み解す感じで使う。
「おお、これは心地よいものですなぁ……」
執事がほっこりと笑顔を浮かべたのを横目に、磁気治療もどきでヒールをのんびり掛けていきます。
こうして魔法を使ったりしていると思い出してしまうのが、VRMMOのこと。
私は前世、この世界そっくりのVRMMORPG「ヒーローズVSヴィランズ」 通称HVVで、回復系の役割(ロール)基本職、プリーストを経て上級職のドルイドに就いていた。
ドルイドの良いところは、プリーストの回復能力、能力値上昇(バフ)スキルに加えて森の仲間を使役出来ること。
まああれだ、ホープラビットのミミちゃんを筆頭に、各レベル帯で使役する動物の幅を増やしていき、もふもふパラダイスを築いていたのだ。
とはいえ、仲間に出来るものは限られている。魔物の中でも、精霊寄りとされる善なる獣と称されるごく一部の者のみで。
善なる獣とは、ライトウルフ、ホーリーベア等、ライトやホーリーなど聖なる属性を名前に冠するもの達なので、結構分かりやすかったけど。
特に私のビルドは、自由に割り振れるステータスをSTR、VIT……筋力と体力の二つに極振りしていた殴り僧侶系でして。
ログイン時間が不定期の為ソロ活動が多かった事もあって、盾役になれるホーリーベア等森の仲間達の事は、レベル上げの際にとても重宝していたものだった。
……と、考えている間に施療終了。
私の部屋に呼ぶ訳にもいかず、居間に呼んで椅子を並べて施療した訳だけれど、二人とも血色も良くなり、動きも楽そうで目に見えて効果があったことが分かる。
流石は魔法ね。
「姫様に癒して頂くなんて、何と有難いことか」
「ほっほ。これでまた二十年は頑張れますぞ」
侍女長こと乳母やと執事の爺やが嬉しそうに言ってくれるからヒール修行も嬉しくなるわ
。
さて、ヒールのスキル上げをしたら、久々にもふり甲斐のあるホーリーベアのくま蔵くんを呼び出してもふろう……。
なんて考えていたところ。
◆◆◆
家に篭って一週間目に、王家からの使者がやって来た。
……何故だかついでに、公爵様もくっついて来て。
今日の訪問者は私のお客様なので、私が対応する。
お父様? 隣で仁王立ちしているわ。
「ええと、アマデウス様は何のご用件で」
わあ、面倒なマッドアルケミストが来たぞと私が困惑気味に聞くと。
「僕? そうだね、例の件で続報かな」
彼は中性的な美貌に柔らかな笑みを浮かべる。
例の件、ねえ……ヒロインさんの事かしら。だとしたら、気になっているし話は聞きたいところだけれど。
「そうですの。では、お使者様のご用件が済んだ後、時間を取りますわ」
私はにっこり微笑んで、彼を招き入れた。
応接室に案内された使者の方は、お父様と私を前にして羊皮紙を縦にさっと広げると、王家よりの謝罪の内容を述べる。
「イグ=ロザ国王陛下ならびに王妃陛下からのお言葉である……」
貴色である白に近い、クリーム色のお仕着せを着た王家の使者曰く。
王家から正式な謝罪の言葉を賜ると共に、何やら私にお詫びの品を下さるという。
謝罪内容は、まずは王太子の不貞での婚約破棄の為、婚約自体がない事となった。
それから、姫巫女に対する非礼への謝罪。
流石に国王陛下や王妃殿下がほいほい頭を下げる訳にもいかないので、迷惑料として王妃陛下の化粧領である茶葉で有名な荘園の一部を私のものとして下さるとか。あの荘園の茶葉は一級品だから、これで生きてくだけなら安泰ね。
ついでに没落した伯爵家の名を下さり、女伯に遇するとまで言われたけれど。
私神官だしもともと国から距離を置きたかった事もあって、領地のみ頂くことにして丁重にお断りする事にした。全部断ると角が立ちそうだし、お茶は好きだから荘園は貰うけど。
というか……あからさまに私を王家に繋ぎ止めようとするのいい加減やめよう、ね?
お父様が、今も忿怒の形相で使者を睨みつけているし。無駄に怪我人増やすの嫌なんですけれど……。
そんな微妙な空気を破るように、朗らかな声で公爵様が言った。
「さ、これで用件は済んだよね? ご苦労。君は先に帰って」
「は、ですが、公爵閣下は……」
おそらく馬車を共用してこちらに来たのであろう使者は、公爵の言葉に困惑している。
そこで公爵は、まさかの行為に出た。
「僕はこれから、こちらの姫君に用事があるんだ。無粋な事は言うものではないよ?」
私の座る椅子の肘掛けに腰を寄せると。
私の赤髪を、長く白い指先で一房掬い取って。
それに形の良い唇を近づけて……触れさせた。
すごい気障だけど、美貌の若い公爵様がやると途轍もなく様になるんだね。
私は公爵様の美貌を物凄い近くで見ながら何だか感心した。
おおー、三次元なのに超アップでも破綻がない……凄い。
乙女ゲーの美麗スチルを眺めるように美貌の公爵様をほくほくと眺めていたら、周りがいきなり動き出した。
「は、ははっ!」
そんな絵になる光景に何を思ったか、赤面しつつも慌てて部屋を飛び出て行く使者と。
「こ、この小僧、俺のフレイアちゃんに何をする!! 貴様も王族だろうが、俺は許さんぞー!」
娘に手を出されたが如く怒るお父様と。
「おやおや? 私が姫に以前より求愛している事など周知の筈なのにおかしいね」
私の髪を弄びながら、にこにこと笑う上機嫌なアマデウス公爵様と。
あれ? 何だかカオスです。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,884
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる