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剣乱武闘 覇者編
レナ
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「参ります‼」
「……っ⁉」
レナは長剣の柄を握りしめ、そのまま抜き放つ。その刀身を見てソフィアが抱いた感想は白銀の刃であり、同時に違和感を抱く。先ほど一瞬だけ魔鎧で受け止めたはずの刃だが、その刀身に風が渦巻き、螺旋状に風の刃を纏わせながら突き刺してくる。
「螺旋剣‼」
「なんのっ‼」
アルトのディバインスパイラルを思わせる剣撃に対し、ソフィアは両腕に魔鎧を発動させて交差し、そのまま正面から受け止める。
ガキィイイインッ‼
「はあああっ‼」
「あたたたっ……⁉」
魔鎧によって螺旋の斬撃を防ぐ一方、周囲に風の刃が四散し、ソフィアの身体に飛び散る。普通の状態ならば肌が切り裂かれていただろうが、森人族の血を流れているソフィアは風属性の魔法の体勢があり、それにレノの時と比べて今の彼女は強靭な肉体のため、服が切り裂かれる程度だが。
「このっ……‼」
「きゃっ⁉」
ガァンッ‼
そのまま力ずくで弾き返し、ソフィアは両腕の魔鎧を確認すると、先ほどの一撃で随分と削り取られている事に気が付く。魔力で形成した鎧はすぐに形状を元に戻せるが、金剛石並の防御力を誇るソフィアの魔鎧を削り取るなど相当な威力だった。
レナは風の聖痕を所持していたカトレア級の実力者であり、ソフィアは手加減は必要ないと判断して右拳を握りしめる。この半月の修行で魔鎧の戦闘方法も見直し、今までのように単純に纏うだけではなく、より攻撃的に形状を変化させる。
「魔鎧刀」
ブォンッ‼
レーザーサーベルを思わせる刀身が右腕に纏われ、その光景をみてレナは額に汗を流し、相性的には火属性の魔力で形成された魔鎧の方が有利だが、剣の技量ならば間違いなく彼女が上だろう。
(長引かせない‼ )
ソフィアは右腕を振るってレナに放ち、彼女は咄嗟に剣を振り上げて防ぐ。その動作だけで火花が飛び散り、ソフィアの魔鎧刀が弾かれる。
ガキィンッ‼
「くっ……厄介だねその風……」
「甘く見ないで下さいまし‼」
レナは螺旋剣を振り上げ、ソフィアの魔刀を正面から受け止めるのではなく弾き返し、2人は何合も打ち合う。少しずつだが技量に劣るソフィアの方が押されるが、それと同時に螺旋剣を渦巻く嵐にも異変が起きる。
「はあっ……はあっ……⁉」
「その技、あんまり長持ちしないようだね」
「そ、そんな事は……⁉」
明らかにレナの螺旋剣の嵐は縮小しており、反面にソフィアの魔刀は大きさを増している。2人の魔力容量の差は桁違いであり、戦い続ければレナの方が不利である。
「くっ……こうなったら‼」
「奥の手でも出す気?」
レナは懐から掌大の魔水晶を取り出し、恐らくは風属性の魔水晶だと思われるが、彼女は螺旋剣に魔水晶を掲げた瞬間、一気に渦巻く嵐が膨れ上がる。カトレアが風の聖痕を発動させて魔法を増幅させた時と似たような現象であり、ソフィアも身構える。
「大螺旋撃‼」
「くっ……‼」
ビュオォオオオオッ……‼
螺旋剣に渦巻く竜巻が砲弾のように放たれ、ソフィアは迂闊に良ければ周囲に大きな被害が生まれる事を考慮し、恐らくはレナは彼女が絶対に避けない事を知って放出したのは間違いない。
(仕方ない……きついけど‼ )
「二重・肉体強化!!」
ビキィイイッ……‼
ソフィアの身体に血管が浮き上がり、限界まで身体能力を上昇させ、右腕を振り絞る。向い来る嵐の砲弾は明らかに彼女の身体を飲み込めるほどの巨大だが、それでも敢えて逃げずに正面から打ち返す。
「魔弾撃!!」
ギュルルルッ‼
右拳に魔鎧を発動させ、足の裏、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転・加速させ、勢いを乗せた拳を放つ。その勢いは凄まじく、衝撃波を生み出す程であり、そのまま嵐の砲弾の中心部に叩き込む。
――ドパァアアアアンッ‼
「そんなっ……きゃああっ‼」
ソフィアの弾撃がレナの竜巻を打ち消し、そのまま彼女の拳から放出された衝撃波が周囲に拡散し、レナは吹き飛ばされる。
「ふうっ……いててっ」
完全に打ち消す事はできなかったのか、右腕に多少の掠り傷を負い、ソフィアは倒れたまま動かないレナに視線を向ける。彼女の手元から螺旋剣が離れており、先ほどまで渦巻いていた螺旋状の風が消え去っている。先ほどの砲撃魔法で魔力を使い果たしたのか、それとも彼女の手元から離れた事が原因なのかは分からないが、間違いなくナナが装備している飛燕や氷華にも劣らぬ「魔剣」の一種だろう。
「ちょっと冷やっとしたかな……まあ、私の勝ちだよ」
「ううっ……れ、レフィーア様……」
ソフィアはうなされているレナから木札を回収し、これで背中の袋のを合わせれば合計で19個が集まり、後はポチ子と対戦しているワオウから最後の1つを回収すれば予選突破に必要な木札を集め終えた事になるが、
「おっと……そこまでだよ」
「わ、わうっ……ごめんなさいソフィアさん……」
「ポチ子⁉」
視線を向けるとそこには地面に倒れ伏しているポチ子と、髪の毛がぼさぼさで鼻血を噴出している状態のワオウが彼女に向けて剣を向けている状態であり、どうやらソフィアとは正反対に決着が着いてしまったようだ。
「まさか犬牙流をここまで操れるとはね……だが、残念だが僕の方が上手だったようだね」
「ま、まさかワンオウさんも犬牙流を操れるなんて……和風牙をあんな形で破られるなんて……」
「ふっ……和風牙の最大の弱点は地面に着地する瞬間、必ず速度を落とさないといけない。減速した瞬間を狙えば他愛ないさ」
「余裕をかましているところでなんですが、結構な損傷ダメージ受けてますよね?」
鼻血をぼたぼたと落としながら笑みを浮かべるワオウにソフィアが突っ込むが、状況はかなり悪い。正直に言えばポチ子が敗れるとは予想できず、この距離からでは肉体強化で近づくことも難しい。
「さあ……この子をこれ以上、傷つけられたくなければ木札を渡してもらおうか。一応は倒れているその子とは同盟を組んでいるんでね。全ての木札を渡してここから離れてもらう」
「くっ……卑怯な」
「おいおい、戦いに卑怯なんて言葉は無いんだよ? 勝てばよかろうなのだ‼」
「なんか、キャラおかしくない?」
会話をする一方、ソフィアはどうにかしてポチ子を組み伏せるワオウをどうにかできないか考えるが、レノの状態ならば魔法で彼だけを吹き飛ばせるのだが、ソフィアでは肉弾戦以外は出来ない。
(こうなったら一か八か、足元の小石でも……ん? )
ソフィアが石でも蹴ってワオウを怯ませようかと考えたが、彼の後方からやってくる人物に気が付いて押し黙る。そんな彼女に少し苛立ったような表情を浮かべたワオウがポチ子の首元に刃を構え、
「さあ‼ 世間話をしているのも惜しい‼ さっさと渡して貰おう……⁉」
「……何をしている?」
「えっ」
背後から声を掛けられ、しかもその声音を聞いてワオウは冷や汗を流しながら振り返ると、そこには金棒を背中に抱えたゴンゾウの姿があり、既に何人もの参加者を打ち倒したのかその両腕には無数の木札が巻き付かれており、憤怒の表情でポチ子の上に乗り上げるワオウを睨み付ける。
「あ、ゴンさん……」
「……俺の親友に、何をしている」
「いや、これは……⁉」
「ゴンちゃん」
ソフィアがゴンゾウに声をかけると、三人は彼女に視線を向け、
「やっちゃえ♪」
「うむ」
「いや、ちょっ――⁉」
――ドゴォオオオンッ‼
ゴンゾウの右拳がワオウに放たれ、そのまま彼は10メートル以上先の街路にまで吹き飛ばされた。
「……っ⁉」
レナは長剣の柄を握りしめ、そのまま抜き放つ。その刀身を見てソフィアが抱いた感想は白銀の刃であり、同時に違和感を抱く。先ほど一瞬だけ魔鎧で受け止めたはずの刃だが、その刀身に風が渦巻き、螺旋状に風の刃を纏わせながら突き刺してくる。
「螺旋剣‼」
「なんのっ‼」
アルトのディバインスパイラルを思わせる剣撃に対し、ソフィアは両腕に魔鎧を発動させて交差し、そのまま正面から受け止める。
ガキィイイインッ‼
「はあああっ‼」
「あたたたっ……⁉」
魔鎧によって螺旋の斬撃を防ぐ一方、周囲に風の刃が四散し、ソフィアの身体に飛び散る。普通の状態ならば肌が切り裂かれていただろうが、森人族の血を流れているソフィアは風属性の魔法の体勢があり、それにレノの時と比べて今の彼女は強靭な肉体のため、服が切り裂かれる程度だが。
「このっ……‼」
「きゃっ⁉」
ガァンッ‼
そのまま力ずくで弾き返し、ソフィアは両腕の魔鎧を確認すると、先ほどの一撃で随分と削り取られている事に気が付く。魔力で形成した鎧はすぐに形状を元に戻せるが、金剛石並の防御力を誇るソフィアの魔鎧を削り取るなど相当な威力だった。
レナは風の聖痕を所持していたカトレア級の実力者であり、ソフィアは手加減は必要ないと判断して右拳を握りしめる。この半月の修行で魔鎧の戦闘方法も見直し、今までのように単純に纏うだけではなく、より攻撃的に形状を変化させる。
「魔鎧刀」
ブォンッ‼
レーザーサーベルを思わせる刀身が右腕に纏われ、その光景をみてレナは額に汗を流し、相性的には火属性の魔力で形成された魔鎧の方が有利だが、剣の技量ならば間違いなく彼女が上だろう。
(長引かせない‼ )
ソフィアは右腕を振るってレナに放ち、彼女は咄嗟に剣を振り上げて防ぐ。その動作だけで火花が飛び散り、ソフィアの魔鎧刀が弾かれる。
ガキィンッ‼
「くっ……厄介だねその風……」
「甘く見ないで下さいまし‼」
レナは螺旋剣を振り上げ、ソフィアの魔刀を正面から受け止めるのではなく弾き返し、2人は何合も打ち合う。少しずつだが技量に劣るソフィアの方が押されるが、それと同時に螺旋剣を渦巻く嵐にも異変が起きる。
「はあっ……はあっ……⁉」
「その技、あんまり長持ちしないようだね」
「そ、そんな事は……⁉」
明らかにレナの螺旋剣の嵐は縮小しており、反面にソフィアの魔刀は大きさを増している。2人の魔力容量の差は桁違いであり、戦い続ければレナの方が不利である。
「くっ……こうなったら‼」
「奥の手でも出す気?」
レナは懐から掌大の魔水晶を取り出し、恐らくは風属性の魔水晶だと思われるが、彼女は螺旋剣に魔水晶を掲げた瞬間、一気に渦巻く嵐が膨れ上がる。カトレアが風の聖痕を発動させて魔法を増幅させた時と似たような現象であり、ソフィアも身構える。
「大螺旋撃‼」
「くっ……‼」
ビュオォオオオオッ……‼
螺旋剣に渦巻く竜巻が砲弾のように放たれ、ソフィアは迂闊に良ければ周囲に大きな被害が生まれる事を考慮し、恐らくはレナは彼女が絶対に避けない事を知って放出したのは間違いない。
(仕方ない……きついけど‼ )
「二重・肉体強化!!」
ビキィイイッ……‼
ソフィアの身体に血管が浮き上がり、限界まで身体能力を上昇させ、右腕を振り絞る。向い来る嵐の砲弾は明らかに彼女の身体を飲み込めるほどの巨大だが、それでも敢えて逃げずに正面から打ち返す。
「魔弾撃!!」
ギュルルルッ‼
右拳に魔鎧を発動させ、足の裏、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転・加速させ、勢いを乗せた拳を放つ。その勢いは凄まじく、衝撃波を生み出す程であり、そのまま嵐の砲弾の中心部に叩き込む。
――ドパァアアアアンッ‼
「そんなっ……きゃああっ‼」
ソフィアの弾撃がレナの竜巻を打ち消し、そのまま彼女の拳から放出された衝撃波が周囲に拡散し、レナは吹き飛ばされる。
「ふうっ……いててっ」
完全に打ち消す事はできなかったのか、右腕に多少の掠り傷を負い、ソフィアは倒れたまま動かないレナに視線を向ける。彼女の手元から螺旋剣が離れており、先ほどまで渦巻いていた螺旋状の風が消え去っている。先ほどの砲撃魔法で魔力を使い果たしたのか、それとも彼女の手元から離れた事が原因なのかは分からないが、間違いなくナナが装備している飛燕や氷華にも劣らぬ「魔剣」の一種だろう。
「ちょっと冷やっとしたかな……まあ、私の勝ちだよ」
「ううっ……れ、レフィーア様……」
ソフィアはうなされているレナから木札を回収し、これで背中の袋のを合わせれば合計で19個が集まり、後はポチ子と対戦しているワオウから最後の1つを回収すれば予選突破に必要な木札を集め終えた事になるが、
「おっと……そこまでだよ」
「わ、わうっ……ごめんなさいソフィアさん……」
「ポチ子⁉」
視線を向けるとそこには地面に倒れ伏しているポチ子と、髪の毛がぼさぼさで鼻血を噴出している状態のワオウが彼女に向けて剣を向けている状態であり、どうやらソフィアとは正反対に決着が着いてしまったようだ。
「まさか犬牙流をここまで操れるとはね……だが、残念だが僕の方が上手だったようだね」
「ま、まさかワンオウさんも犬牙流を操れるなんて……和風牙をあんな形で破られるなんて……」
「ふっ……和風牙の最大の弱点は地面に着地する瞬間、必ず速度を落とさないといけない。減速した瞬間を狙えば他愛ないさ」
「余裕をかましているところでなんですが、結構な損傷ダメージ受けてますよね?」
鼻血をぼたぼたと落としながら笑みを浮かべるワオウにソフィアが突っ込むが、状況はかなり悪い。正直に言えばポチ子が敗れるとは予想できず、この距離からでは肉体強化で近づくことも難しい。
「さあ……この子をこれ以上、傷つけられたくなければ木札を渡してもらおうか。一応は倒れているその子とは同盟を組んでいるんでね。全ての木札を渡してここから離れてもらう」
「くっ……卑怯な」
「おいおい、戦いに卑怯なんて言葉は無いんだよ? 勝てばよかろうなのだ‼」
「なんか、キャラおかしくない?」
会話をする一方、ソフィアはどうにかしてポチ子を組み伏せるワオウをどうにかできないか考えるが、レノの状態ならば魔法で彼だけを吹き飛ばせるのだが、ソフィアでは肉弾戦以外は出来ない。
(こうなったら一か八か、足元の小石でも……ん? )
ソフィアが石でも蹴ってワオウを怯ませようかと考えたが、彼の後方からやってくる人物に気が付いて押し黙る。そんな彼女に少し苛立ったような表情を浮かべたワオウがポチ子の首元に刃を構え、
「さあ‼ 世間話をしているのも惜しい‼ さっさと渡して貰おう……⁉」
「……何をしている?」
「えっ」
背後から声を掛けられ、しかもその声音を聞いてワオウは冷や汗を流しながら振り返ると、そこには金棒を背中に抱えたゴンゾウの姿があり、既に何人もの参加者を打ち倒したのかその両腕には無数の木札が巻き付かれており、憤怒の表情でポチ子の上に乗り上げるワオウを睨み付ける。
「あ、ゴンさん……」
「……俺の親友に、何をしている」
「いや、これは……⁉」
「ゴンちゃん」
ソフィアがゴンゾウに声をかけると、三人は彼女に視線を向け、
「やっちゃえ♪」
「うむ」
「いや、ちょっ――⁉」
――ドゴォオオオンッ‼
ゴンゾウの右拳がワオウに放たれ、そのまま彼は10メートル以上先の街路にまで吹き飛ばされた。
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