秘密の関係

椎奈風音

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疾風の如く?

第八話

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「今のでボール取られないなんて、成長したな、塔哉」
「……それって、誉められてるの?」
「もちろん」
 余裕な戒兄ちゃんを見てると、その余裕を崩してみたくなる。

「……戒兄ちゃん」
「え?」
 僕が笑みを浮かべると、戒兄ちゃんが不思議そうな顔をした。

 一瞬、戒兄ちゃんの動きが止まった。
 その隙を逃さず、ゴールに向けてボールを投げた。
 スリーポイントラインから、ゴールに入る確率はそんなに高くない。
 だけど、ゼロでもない。
 絶対に、兄ちゃんの余裕を崩してやる。

 ボールが弧を描いて、ゴールネットに向かって吸い込まれていく。
(やばっ!!あれは外れる)
 いつもの勘で外れることがわかった僕は、ゴール下に全速力で走った。
 すっと横に戒兄ちゃんの影が見えた。
 スタートを切ったのは明らかに僕の方が早かったが、戒兄ちゃんは足が凄く早い。

(戒兄ちゃん、早過ぎだよ!!)
 戒兄ちゃんは、短距離で高校記録を持っている。
 だから早いのは当たり前だが、今日は負けたくない!!


 ボールがゴールポストに弾かれて落ちてくる。
(ちょっと、待って!!)
 僕は必死でボールを追いかけた。
 反射的に手を伸ばし、ボールを取ろうとした瞬間、横から戒兄ちゃんの腕が見えた。
 僕と戒兄ちゃんの身長差は20センチくらいある。
 普通にジャンプしただけなら負けてしまう!

 咄嗟にそう判断した僕は、ボールを指先で弾いて軌道を変えさせた。
 体勢の崩れた戒兄ちゃんを横目で見ながら、もう一度、ジャンプしてボールを取り、そのままシュートした。
 ボールは綺麗な弧を描いて、ネットに吸い込まれていった。
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