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誰かを想う気持ちは、写真に写るのだろうか。
高校二年生の榛名伊織は、風景や誰もいない空間を撮ることを好む写真部員。ある日、校内の渡り廊下に飾られた自身の作品を見つめる一年生、瀬良澪と出会う。
「この写真……音がする」
誰も写っていない一枚から、そこにいた誰かの気配を感じ取った澪。その言葉は、伊織の心に小さな波紋を残した。
人の表情や、その瞬間に生まれる感情を写真に残したい澪と、光や景色の中にある静けさを切り取る伊織。正反対の視点を持つ二人は、写真部で過ごす時間や、夏の花火大会、海辺での撮影合宿を通して、少しずつ互いの世界を知っていく。
伊織にとって、写真はただ目の前の景色を残すものだった。けれど、いつからかファインダーを覗くたび、そこに澪の姿を探している自分に気づき始める。
一方の澪もまた、伊織の写真だけでなく、その不器用な優しさや何気ない言葉に惹かれていた。写真を口実に近づきながら、いつか自分の気持ちに気づいてほしいと願っていた。
文化祭に向けて準備を進める中、幼い頃から伊織の隣にいた親友・鷹野新との関係にも変化が訪れる。大切な居場所を失うことへの恐れ、伝えられなかった想い、そして誰かを守りたいという気持ち。それぞれの感情が交差する中で、彼らは自分にとって本当に大切なものと向き合っていく。
同じ景色を見ていても、心に映るものは人それぞれ。
ピントを合わせるように、少しずつ相手を知り、距離を縮めていく二人が、最後に見つける景色とは――。
これは、写真が繋いだ出会いから始まる、ひと夏の終わりと恋の物語。
文字数 105,912
最終更新日 2026.10.30
登録日 2026.10.30
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