酷道ひより

酷道ひより

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ファンタジー 完結 短編
 予備校の非常階段は、昼でも薄暗い。  理由は簡単で、誰も使わないからだ。  使わないのに俺は使う。  理由は簡単で、ここが一番歯を磨きやすいからだ。 「……あ」  歯磨き粉を泡立てたまま、俺は声を出した。  いた。  非常階段の踊り場。  立ち入り禁止の黄色いテープの向こう側に、少女が一人、膝を抱えて座り込んでいる。  制服じゃない。  予備校生でも、高校生でもない。  白の外套に金属の装飾。靴はブーツ。  コスプレか?  いや、この予備校に来るタイプのコスプレじゃない。  何より――  俺を見ても、逃げなかった。  普通は逃げる。  俺の風貌は、もうそういう段階を通り越している。  六浪。  年齢二十四。  無精髭。伸び放題の髪。  常に予備校のロッカーの鍵を三つ持ち、コピー機の使い方に誰よりも詳しい。  講師ですら俺を避ける。  なのに少女は、じっと俺を見て、 「……ここは、結界の内側ですか?」  そう聞いてきた──
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文字数 9,634 最終更新日 2026.06.29 登録日 2026.06.29
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