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グンマー帝国——外の人間が「群馬県」と呼ぶ場所——に、一人の男が生まれた。
塩原幸之助。通称、ファッキュー塩原。
彼の高祖父・塩原ちんの助は、明治三十二年の群馬県議会にて日本史上初めて「ファッキュー」と叫んで昇天した伝説の人物だ。その血は世代を超えて受け継がれ、幸之助もまた高校二年生の現代文の授業中、歴史的な脱糞とともに「ファッキュー!」と天に向かって叫んだ。
これが、すべての始まりだった。
上京した幸之助は、ニホントリテツの一種・細川だい(本名の「だい」は親が中卒のため平仮名)と再会し、謎のユニット「Shit」を結成する。担当楽器はエアギターとカスタネット。音楽的根拠は一切ない。
しゃがれた自信のなさそうな声でセクハラを放ち、空気を読まず、発作のように「ファッキュー!(昇天)」を繰り返す男と、「うん……(暗黒微笑)」しか言わない鉄道狂の非人間が織りなす、前代未聞の日常ギャグ小説。
フルネームを言われると死亡し、異性に声をかけられると蘇生するだいと、ちんの助の血を忠実に継承し続ける幸之助。この二人に、常識は通用しない。論理も通用しない。グンマー語と石川語だけが、かろうじて二人の間に架かる橋だ。
笑えるのか、引くのか。それはあなたが決めていい。
ファッキュー!(昇天)
文字数 3,550
最終更新日 2026.06.06
登録日 2026.06.06
あなたは今、どこへ向かっているのか。
いや、そんな大げさな話ではない。ただ、美術館が駅から遠いという話をしていたら、なぜか伊藤忠商事の人事部がパニックになり、ハローワークの担当者が暗号を交わし、病院の医者がステロイド剤を処方しながら「にやけた顔がキモい」と言い放つ。それが本書である。
スネークマンショーをご存知だろうか。1980年代、桑原茂一・小林克也・糸井重里らが生み出した伝説のコントユニット。彼らはYMOのアルバムに潜り込み、日常の隙間に不条理を滑り込ませ、日本語とも英語ともつかない奇妙なグルーヴを作り上げた。笑えるのか笑えないのかわからないまま、気づけばこちらが壊れている。そういうコントだった。
あれから四十年以上が経った。
令和の日本では、派遣コーディネーターが「一番きもい職業」と罵倒され、Notion Certified Administratorが履歴書のスキル欄に書かれ、ChatGPTとの壁打ちが趣味として分類される。ハローワークでは時給1050円の倉庫作業が提示され、就活生のYouTubeチャンネルの概要欄には謎の限定公開動画が潜んでいる。画面に映るのは13から0へとカウントダウンする数字。そして最後に一行。
heading 090。
これは平沢進が言っていたことに近い、かもしれない。美術館で会った人のことを、我々はまだ覚えているだろうか。あの問いかけは今も有効で、むしろインターネットとSNSと生成AIが複雑に絡み合った令和においてこそ、より深く刺さる。どこへ向かっているのかわからないまま、それでも人は歩き続ける。駅から徒歩で遠い美術館へ向かうように。
本書に収録された各エピソードは、医療・就活・行政窓口という日常的な場所を舞台に、ネットミームと昭和テクノポップと現代の閉塞感が衝突し続けるコント集である。笑えるところは笑っていただいて構わない。ただ、笑い終わったあとに何かが残るとしたら、それはおそらく「合言葉は?」という問いに答えられない自分自身への、漠然とした不安である。
北緯37度。heading 090。パレスチナ。
All my life has ever been a freelaNcer. i need some ALcohol and drunkEr’s AdviSes who makeS me BE hilarioU.S.
weno、どこへ行くの。
著者:Weno Nicca / Connecting Dots Publishing
文字数 3,192
最終更新日 2026.06.06
登録日 2026.04.15
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