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かつて世界には「朝日」というものが存在していた。
しかし、“決して望んではいけない願い”により朝日が闇に呑まれ消えてしまう。
夜の闇が覆う世界で、男ばかりの一家に生まれた唯一の乙女・リアンク。
彼女は兄と共に剣を遊び道具にしながら生きていた。
そしてある日の夢の中、リアンクは燃えるような月と蒼い夜空を見る――。
兄が成人し、旅立ったその日。
神官マーリヴォルトにより、黄金の鍵がリアンクの手へと渡る。
その鍵は“夜明け”を誘う唯一の希望。
しかし、その真実を知る者は限られていた。
一方で、深い闇の中ひとり罪を背負い続ける者がいた。
朝を閉じ込め、黄金の鍵を葬った夜鷹が――。
“黄金の鍵”を持つ赤子・リアンク。
彼女の誕生から、ふたつの歯車が動き始める。
リアンクが成人の日を迎えると、彼女から鍵を奪うために夜鷹が舞う。
そして彼の訪れを報せるように夜の深度がわずかに浅くなった……。
夜鷹の青年は、リアンクと静かなる攻防を始める。
名を捨てた青年の攻撃を躱しきった彼女が、強かに笑って言った。
「あなたに名前を差し上げます。よろしく、スティーラィ」
部屋の明かりに照らされる美しいリアンクの姿が、青年の黒い瞳へ映る。
彼は思わず息を呑んだ。
半ば強引に旅の供となった青年・スティーラィは、闇夜がほんの少し薄れていくのを感じた。
けれどまだ、朝を知らない世界は果てしなく続いている。
朝を迎えに行く星の乙女・リアンクと、夜明けを拒む夜鷹の闇・スティーラィ。
ふたりの運命と宿命は交わるのだろうか。
唯一、“夜明けの扉”の場所を知る彼は、果たしてリアンクを正しく導くのか。
闇の向こうで待っているのは、新たな始まり――それとも、さらなる終焉か……。
願うことは罪なのか。願った未来を生きる彼らは、その答えにたどり着けるだろうか。
登録日 2025.10.25
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