「君たちはどう生きるか」「ゴジラ-1.0」の米アカデミー賞受賞でも、まだまだ足りない日本のアニメ・ゲーム輸出への努力

2024.03.13 Wedge ONLINE

 グッズやコト消費による収入確保、更にはタイアップやテーマパークへの参入など、周辺ビジネスの展開についても、日本のコンテンツの場合はスピード感がない。これは、言葉の壁と契約社会への不慣れという面が大きい。

 日本発のコンテンツに対して世界中にファンが増えている現在、何もかもを日本人が仕切るのではなく多国籍の人材を集めて、しっかり日本コンテンツの権利を確保しつつスピーディーに売り込む体制を構築すべきだ。

 3点目は資金である。現在、日本人の脚本・演出・出演による日本語のドラマでも、Netflixなどの外資ストリーミングサービスが進出してきている。監督や役者の多くは、こうした外資の資金力のおかげで生活が安定するのは事実だ。また、全世界同時配信で日本のコンテンツがヒットしてゆくのは現象としては素晴らしい。

 だが、外資制作の作品では日本経済への貢献は限定的となる。日本のコンテンツである以上は、やはり民族資本の投資によって制作し、その成果を日本の国内総生産(GDP)に着実にカウントすべきだ。

若手クリエーターにチャンスを

 問題はリスクである。高齢者の個人資産など、日本国内のマネーはリスクを極端に嫌う。そうなるとリスク選好マネーは世界市場から引っ張ってくるしかない。かといって円安トレンドが支配的な現在、日本が世界からドル建ての借り入れをするのには、かつてない勇気が必要だ。

 そんな中で、長年使われてきたのが複数の企業に出資してもらう「製作委員会方式」だ。一種のリスク分散のシステムである。

 だが、このような保守的な方法論では、評価の確立した大家の作品ならともかく、無名の若手が大胆なプロジェクトに挑むようなケースは支えられない。そんな中で、伸び盛りのクリエーターが外資に囲い込まれる可能性が高くなっている。

 官製ファンドとなると、やはり制約が気になる。かといって既存の金融機関がリスクの大きなコンテンツ産業向けにファンドを組成するなどというのは、ノウハウ的に期待はできない。

 ここは、ウォール街とハリウッドで経験を得た人材を引き抜いて、民間主導のファンドを立ち上げ、しっかり日本の民族資本としてまとめ上げ、リターンも国内に残す仕掛けを考えたい。