「新年の目標」が大体達成されない科学的根拠

別の環境への移行がどれほど困難であろうと、またフランクルのようにその環境がどれだけひどいものであっても、人には適応する能力があり、実際に適応する。そうやって、その人の意志とは関係なく、その人自身が作られていく。

また、環境は遺伝子さえも変えてしまう。社会心理学者のジェフリー・リーバー博士によると、「物理的な世界の中、物理的な体を持ち、特定の文化的・地理的な場所に存在する家で、特定の両親の元、私たちはある1つの時代に暮らしている。こうした物事によって私たちの選択肢は狭められている」と述べている。

例えば山岳地帯に住む人間を見てみよう。ペルーの山岳地は空気が薄く、そこで暮らす人は世界のほとんどの地域の人たちと比べて背が低い。これは、空気が特定の条件を作り出し、それに人が順応した結果だ。

ノミの実験では、これがより顕著に観察されている。あるビンに複数のノミが入っている。フタがされていなければ、ノミはいとも簡単にビンの口を飛び越えることができる。しかし、フタをすると環境のルールが変わる。高く飛ぶとフタに体がぶつかり、これはまったく気分のいいものではない。その結果、ノミは新しいルールに適応し、あまり高く飛びすぎないようになる。

興味深いのはここからだ。3日後にフタを外すと、フタはもう存在しないにもかかわらず、ノミはビンから飛び出さなくなる。ノミの集合意識に精神的なバリアが作られ、ノミの集団の中で、これまでよりも抑制されたルールが出来上がってしまうのだ。

そして、このルールは同じビンで生まれた次世代のノミにも影響を及ぼす。しかし、1匹のノミをビンから取り出し、別の大きなビンに入れると様子は一変する。もっと高く飛ぶノミたちに囲まれて、そのノミも高く飛ぶようになるのだ。まさに、行動を抑制していた古いルールが、新しいルールに取って代わられたのだ。

ファストフードを自分だけ我慢するのは困難

しかし、こうした事実があるにもかかわらず、私たちは「自分のパーソナリティーは、自分が選んだもの」と思い込む。誰もが、物事を「自分のやり方」でやりたがる。

これは、欧米主導で進められた「個人主義」が長い年月をかけて広まり、スタンダードな環境として根付いたことが影響している、と筆者は分析している。

しかし、自分が置かれた状況の影響を無視したままでは、たとえ強い信念や意志を持ったとしても、成せることもままならない。

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身近な例を挙げると「片づけ」。多くの人が「部屋を片づけたい」「デスクをきれいにしたい」と思っているのにそれが実現しないのはなぜか? それは、人は自分が所有している物について、ただ「自分が持っているから」という理由だけで過大に評価してしまうため。

ものをなくさなければ所有物は増える一方で、いくら意志力を働かせたところで部屋が片づくことはないだろう。自分の物というだけで「プレミア」がついているのだから。

「スマホ」中毒にも同じことが当てはまる。誰もが、「スマホを見続けることはいけないこと」だと頭ではわかっている。しかし、平均的な人は1日85回以上スマホをチェックし、ウェブサイトやアプリで5時間以上を費やす。そしてこの数字は、自分が思っている数字の倍以上に達するという。

スマホが枕元にある限り、目覚めて数秒のうちにテクノロジーがあなたを奴隷にする。そして、仕事をしている間ずっと、メールやSNS、好奇心をそそるウェブサイトに触れていないとあなたは数分も集中していられなくなる。

どんなにファストフードを食べないでおこうと思っても、まわりが食べていれば食べずにはいられない。自制心は思いのほか役に立たない。環境は、容易に個人の意志を凌駕していくのだ。

(文=ベンジャミン・ハーディ:組織心理学者、著作家、起業家)