現役コンサルが3秒で相手に伝える「凄い話し方」

私 「ちょっと意味がわかりません」
先輩「例えば『明日から旅行に行ってきます』って言われたらどう思う?」
私 「え、旅行ですか。いいですねー。どこに行くんですか?ってなります」
先輩「だよね。じゃあ『アフリカに行きます』って言ったら?」
私 「また何でアフリカなんですか?ってなります」
先輩「そうだよね。つまり、『明日から旅行に行く』というシンプルな一言から『どこに行くの?』とか『なんでアフリカなの?』っていう『?』が生まれたよね。この『?』が相手にとって足りないピースなんだよ。でもキミは、『家族が前々から見たいと言っていたコーヒー豆見学ツアーに参加する目的で、これまでずっと念願だったアフリカ旅行に明日から行ってきます』みたいに、最初から『?』をぜんぶ自分で埋めようとするから、どうしても話が長くなる。相手は理解できなかったら質問してくれるから、最初は言いたいことだけを言えば伝わるから」

確かにクライアント先に同行してみると、リーダーやマネージャーは「今回の貴社の問題点はここにあると考えます」といった具合に、的確にポイントだけを伝えている。

そのシンプルな言葉からお客様の質問を引き出し、その質問に対して的確に答えていくことにより会話しながら信頼されていく。これを見て「こういうことか」と、ものすごく腑に落ちました。

私はこれまで「短く伝えると誤解されるのではないか? 正しく伝わらないのではないか?」と思っていましたが、それは誤解でした。足りないピースは相手が求めてくるという言葉を聞き、「できるだけシンプルに伝えよう」という意識が生まれました。

10分の1に絞り込んだポイントだけを伝える

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もちろん、ただ短い言葉で伝えるだけではいけません。その後も、様々なコンサルの仕事ぶりを観察していくとわかったのは、クライアントへの説明を行う際には

①あらゆる場面を想定した圧倒的な準備を行う

②ポイントだけを絞り込んだシンプルな説明を心がける

というのが、仕事における鉄則だということです。

実際に、我々がクライアントへの説明で使う資料は10枚だけでも、その裏では補足資料として100枚以上を準備しておくことはざらにあります。

ただ、100枚分説明していてはいくら時間があっても足りませんし、意思決定スピードを重視するクライアントに対してやるべき行為ではありません。

しかし、それだけ用意周到に準備しているからこそ自信を持って話せますし、相手が足りないピースを求めてきてもスッと対応できるのです。

圧倒的な準備を行い、シンプルな説明を心がける。これは言い換えれば、物事の本質を徹底的に考えたうえで、それをギュッとまとめて、一言で言えるくらいシンプルな表現にして伝えるということです。

誤解や抜け漏れを恐れて遠回しな説明をするよりも、端的に伝えて、その後に相手の「?」に答えればいい。この方法がお互いにとって最も効果的なコミュニケーションなのです。