ウーバー、中核事業をウーバーイーツへ転換…飲食店、店内飲食からデリバリーへ転換必至

「年間取引額×収益率×取引継続年数」

 たとえば、年間取引額が100万円で収益率を5%とすると年間5万円 そしてそのお客様が20年間継続してお取引できればLTVは100万円ということで計算できます。

 しかし、実際にはこうしたライフタイムバリューの分析はほとんどの企業ではできていないと思います。今後はあらゆる企業がサブスクリプション、すなわち会員化に向かうと考えられるため極めて重要な指標となるでしょう。

 ただ、顧客一人ひとりのLTVを計算するのは非常に難しいので、顧客全体のデータで計算したほうが現実的です。得意客を特定するために、購買頻度や1回当たりの購買金額などを考慮に入れることもあります。なお、マイナスの場合にはあえて取引を停止することも必要です。売上だけを目標にすると危険な事例も多いのです。

 新規顧客の獲得コストは、既存顧客を維持するコストの5~10倍はかかるといわれています。どの業界も、競合他社がひしめいているので、他社の顧客を奪うことは簡単ではありません。企業はいかにLTVを高めるかが重要なのです。それは、その製品やサービスの顧客をいかに自社のファンにするかとも言い換えられるでしょう。

 ここでファンとは、継続的に購入してくれるお客様のことを意味します。今後あらゆる業種がLTVを経営上の重要指標に置く必要に迫られるでしょう。LTVを高めるためには、顧客単価やリピート率などを上げていくことが必要です。目先の利益を追い求めるのではなく、長期的な信頼関係を築いていくという考え方が大切でしょう。

 また、顧客維持に使うコストを抑える視点を持つことも重要です。お得意様に高率の割引券を頻繁に送ったり、ポイントカードシステムを充実させ過ぎたりすると、リピート率は上がっても、収益率は下がってしまいます。バランスを見極めることが肝心です。

 新型コロナの影響は企業の存亡にかかわる事態となってきていますが、ピンチをチャンスに変えられるかどうかの瀬戸際ですので、今こそ日本の経営者もスピード感をもって、新しいビジネスモデルへの転換を検討する必要性に迫られているのではないでしょうか。経営者としての力量が問われる時代になってきています。

(文=平野敦士カール/株式会社ネットストラテジー代表取締役社長)

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●平野敦士カール:経営コンサルタント・作家

米国イリノイ州生まれ。麻布中学・高校卒業、東京大学経済学部卒業。

株式会社ネットストラテジー代表取締役社長、社団法人プラットフォーム戦略協会代表理事。日本興業銀行、NTTドコモを経て、2007年にハーバードビジネススクール准教授とコンサルティング&研修会社の株式会社ネットストラテジーを創業し社長に就任。ハーバードビジネススクール招待講師、早稲田MBA非常勤講師、BBT大学教授、楽天オークション取締役、タワーレコード取締役、ドコモ・ドットコム取締役を歴任。米国・フランス・中国・韓国・シンガポール他海外での講演多数。

著書に『プラットフォーム戦略』(東洋経済新報社)『図解 カール教授と学ぶ成功企業31社のビジネスモデル超入門!』(ディスカヴァー21)『新・プラットフォーム思考』・『シリーズ 経営戦略・ビジネスモデル・マーケティング・金融・ファイナンス』(朝日新聞出版)監修にシリーズ18万部を突破した『大学4年間の経営学見るだけノート』『大学4年間のマーケティング見るだけノート』(宝島社)など30冊以上。海外でも翻訳出版されている。