ウーバー、中核事業をウーバーイーツへ転換…飲食店、店内飲食からデリバリーへ転換必至

 この波は新型コロナの感染拡大が続けば、日本にも来るかもしれません。ウィズコロナ時代には飲食店においてもソーシャルディスタンスといわれる一定の距離を置くことが求められるため、最大でもかつての半数にまで顧客数が減少する可能性がある以上、存続するためには、テイクアウトやデリバリーを強化せざるを得ないからです。

 前回もご紹介した「ゴーストキッチン」「クラウドキッチン」などの新業態の登場も予想されますが、飲食店で働いていたものの新型コロナで失業した方を受け皿にして、地域特化型デリバリープラットフォームを担う会社が登場する可能性があるのではないでしょうか。

ウォルマートは15年遅れでサブスクを開始予定との報道

 一方、アメリカ小売最大手のウォルマートは、新しいサブスクリプションサービス(有料会員サービス)である「ウォルマート+(プラス)」(年会費98ドル)を7月後半にも始めるとの報道がありました。

 アマゾン・ドット・コムが2005年に始め、1億5000万人を超える有料会員サービス「アマゾンプライム(年間119ドル)」に15年遅れで対抗する狙いです。

 会員の特典としては、食料品や雑貨の同日配達、ウォルマート系列のガソリンスタンドでの燃料割引、セール品への優先アクセスなどがあるようです。さらには動画配信も検討中とのことですから、まさにアマゾンがAmazon Goを始めたりホールフーズマーケットを買収したりしてスーパーマーケット市場に攻め込んできたことへの反撃といえるでしょう。

 ちなみにアマゾンプライム会員の年間支出額は非会員の2倍以上といわれており、一度会員になれば継続率も高いため、いかに有料会員化が重要かがわかります。

 ウォルマートは車から降りずに生鮮品等を持ち帰れるグローサリー・ピックアップを展開しており、ガソリンスタンド併設のものもあります。ウォルマートのネット通販売上は、今年の2~4月期は74%増と急増したものの、いまだアマゾンの8分の1程度と報道されています。またウォルマートで買い物をする人の半数はアマゾンプライム会員でもあるというデータもあり、「アマゾン離れ」も指摘されるものの、今後どこまで会員数を伸ばせるかが注目されます。

日本企業への示唆

 以上の2社の動きを見ると、以下のような経営上の課題について早急に検討するべきではないでしょうか。

1.物流業界・運送業界の会社は、他地域の同業者やIT企業と連携することも視野に、レストランの出前や食料品などのデリバリープラットフォーム事業への参入を検討。すでに一部のタクシー業界は参入との報道もありました。つまり、自社の顧客層を見極めた上で、自社のビジネスドメイン(事業領域)をより広く捉えることで新たな分野への参入を検討することです。

2.リアルでの店舗販売をしている小売事業者はオンラインショップの開設または強化、有料会員制(サブスクリプション)の検討。なお、有料会員制は配送無料だけでなく、いかに魅力的なサービスを提供できるかが重要です。その場合には、自社サービスだけでなく他業態の会社との提携も視野に検討をすれば、収益配分などは要検討ですが、より消費者にとっては魅力的なものになるでしょう。

 大切なことは短期的な売上増を狙うのではなく、長期的な視野で顧客満足度を上げることでリピーターとしてライフタイムバリュー(LTV)、すなわち顧客生涯価値を上げることに注力するべきです。

 筆者は数年前からすべての産業は会員化すると述べてきましたが、新型コロナによってこの動きは一気に進むのではないかと思っています。

 LTVとは、「ひとりの顧客が生涯にどれくらい購入してくれるか」を算出するマーケティング指標です。正確には、これまでに顧客が購入した総額から、その顧客を維持するために使った費用を差し引いた利益の額を算出します。次の方程式によって計算できます。