あらゆるスキマ時間で集中学習! 無駄ゼロ独学術

そのやり方だと合格しないよ?――多くの人がやっている残念な資格勉強法

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キャリアアップ、資格試験、公務員試験、TOEIC、リスキリングなどにおいて、予備校や専門学校に頼らず一人で勉強するのはうまくいかないものです。いわゆる「独学」が難しいといわれる理由は――人間の意志がそもそも弱いからです。ただし、人間の意志は弱いという事実を受け入れることで、独学の成功率を高めることができます。この本には、忙しい社会人でも実践できる、独学を成功させるためのノウハウが満載です!
この連載をまとめ、加筆・改稿したビジネス書『意志の力に頼らないすごい独学術』(石動龍)が、アルファポリスより好評発売中です。

勉強のつらさは大したことない

どんなジャンルでも、一流に触れることは、大きな学びになります。
大学を卒業して新聞記者になったとき、人の話を聞く機会に多く恵まれました。
スポーツ選手、国会議員、大会社の経営者、作家など、数多くの成功者に会い、苦労したこと、成功できたポイントなど、それぞれのエピソードを興味深く聞きました。それなりに記事にしてまとめたものの、どこか遠い世界の物語と感じていました。
私はスポーツ、勉強、仕事など、いわゆる「普通」の人生で触れるイベントは、それなりの努力をして、人並みにできていたように思います。
ところが、高い目標を実現しようと考えたとき、見える風景が一気に変わりました。

学生のころ、総合格闘技に本気で取り組んでいたものの、プロ選手にはなれませんでした。
社会人になり、運動不足が気になっていたことから、趣味にしようと軽い気持ちでブラジリアン柔術を始めました。
最初は週に1回程度の練習でしたが、気づけばすっかりはまってしまい、練習は週に5日、毎月試合に出るようになりました。
新聞記者から転職して時間の余裕ができたこともあり、練習のペースはさらに増え、プロ格闘家が集まる練習にも参加するようになりました。気づけば、学生時代より、格闘技に真剣に向き合うようになりました。

当時、印象に残る一流選手が二人いました。
どちらも世界選手権での優勝を目指し、鍛錬を重ねていました。
1日に8時間以上心拍数が上がった状態をキープしていたり、相手を100回ギブアップさせるまで練習を終えなかったりなど、常人にはとてもマネできない内容で、一種の狂気をはらんでいたように思います。

目標達成への真剣な気持ちが並外れた努力になり、一般人のリミッターを大きく超えた状態でした。
二人は生活のすべてを捧げるような努力を何年も続けたものの、どちらも世界選手権の優勝には届きませんでした。
私も一時は格闘技で生計を立てることを検討していましたが、彼らの日常を目の当たりにするうち、「自分にはとてもできない」という思いが強くなっていきました。
ポッキリ心が折れる音が聞こえ、格闘技への情熱はすっかり冷めました。
2010年くらいのことだったと記憶しています。
その後、紆余曲折あり、資格試験を受けるようになるわけですが、つらい日々の中で、この経験が大きく役立ちました。
ジャンルは違いますが、これ以上できないレベルの努力を見たことで、苦しくなっても「彼らの努力に比べると大したことはない」と感じることができました。

その後も、プロミュージシャンになった人や、設立した会社を高額で売却した人など、様々なジャンルで成功した人に会います。
ある程度の成功を納めた人のなかに、努力していない人は一人もいません。
むしろ、人並み外れた努力をするのはチャンスをつかむための参加チケットに過ぎず、運や環境などが絡んで、成否が分かれる印象です。
はっきり言えば、資格試験に合格するための努力は、何かで世界チャンピオンになったり、一流のプロになったりするのに比べると、大したものではありません。
数年間は勉強を人生で一番の優先事項にする必要はあるかもしれませんが、命を削るほど大変なエネルギーは不要です。
それより、合格するために必要なレベルを正しく認識し、そこに到達するためのプロセスを淡々と繰り返すことが求められます。

一方で、正しい努力を適切に繰り返さないと、合格することは難しいです。
正しい努力は資格試験の種類によって異なります。
具体的に言えば、「本番で合格水準以上の点を安定的に取るために必要な努力」です。
これまで、私の経験を踏まえて、目標達成に必要な様々な情報を伝えてきました。
それは、あくまでも私が考えている内容であって、万人に当てはまるものではありません。取捨選択して、自分に必要な情報を取り組めばよいと思います。
とはいえ、結果が出ない人のうち、共通すると感じるパターンもあります。
この本の締めくくりに、絶対にやらないほうがいいと考える勉強法をお伝えします。

理解するまで先に進まない

難関資格試験のもっとも多い失敗パターンは、「本試験にたどり着かない」ものです。
合格して人生を変えよう、と意気込んで勉強を始めても、早々に挫折してあきらめてしまう人が多いです。
かつて私が公認会計士試験の専門学校に通い、数か月で通学しなくなったように、多くの人が専門学校に大金を払い、何の成果も出せずにいます。
当時、講師の先生に聞いたところ、試験を受験するのは入学者のわずか三割ほどと言われたように記憶しています。
この数字が正確かはわかりませんが、同じクラスで授業を受けていた人が毎週のように減っていったのは間違いありません。

試験前に挫折してしまう人のパターンはだいたい同じです。
たいていの人は、最初は順調にカリキュラムを消化していくものの、次第についていけなくなってノルマをためてしまい、そのうちに膨大な試験範囲を前にしてあきらめてしまいます。
あとには山積みになったテキストが残るだけです。

こうなる原因は、試験範囲を一周するのに時間をかけてしまっているからです。
これまで書いたとおり、特別な天才を除いては、範囲を一周しただけで合格レベルの知識を身につけられる人はいません。
普通の人は、何回も何回も同じ論点についてテキストを読み、問題を解くことで理解が深まり、合格に必要な実力をつけることができます。

一周してしまえば、あとは同じことの繰り返しになるので、二周目、三周目と周を重ねるごとに負担が減っていきます。
体感ですが、範囲を一周終えた人が挫折する確率は大きく下がるように思います。
実際、私が税理士試験のサポートを行っている受験生も、これまでの数年間は一度も試験範囲を終えることができず、受験までたどり着きませんでしたが、試験範囲を一周したあとは勉強が効率化して速度が上がっており、挫折しそうな気配はありません。

この観点から、絶対にやってはいけない勉強法は、「納得して理解するまで先に進まない」という勉強法です。
普通の人は、努力して記憶したことも、少し時間が経つと嘘のように忘れてしまいます。
高校時代に勉強した古文や数学の内容に継続して触れていなければ、ほとんど忘れてしまっている人も多いのではないでしょうか。
そのため、テキストを一周しただけでは内容を理解することはできません。
大学受験など、成功した過去の勉強体験を振り返っても、模試や教科書の読みこみを繰り返し、何度も同じ内容を学んでいたはずです。
それにもかかわらず、資格試験になると、一定割合の人が、テキストを最初から読み始め、納得するまで理解してはじめて、次の論点に進むスタイルで勉強しようとします。

難関資格試験は範囲がとても広く、覚えるべきことも相当な量になります。
普通の人は一つ一つの内容を細かく覚えることは無理なので、ある程度理解したらどんどん次に進み、何度も同じ論点に触れることを重視すべきです。
人によっては、勉強期間中に一周だけ試験範囲を学び、本試験に臨む人もいるようですが、その方法では合格する可能性は低いでしょう。
それは極めて単純な理由で、一回で難しい内容を覚えられる人はいないからです。

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プロフィール

石動龍
石動龍

青森県八戸市在住。公認会計士、税理士、司法書士、行政書士。読売新聞社記者などを経て、働きながら独学で司法書士試験、公認会計士試験に合格。石動総合会計法務事務所代表。ドラゴンラーメン(八戸市)元店長、ワイン専門店vin+共同オーナー、十和田子ども食堂ボランティアとしても活動している。趣味はブラジリアン柔術(黒帯)と煮干しラーメンの研究。

著書

意志の力に頼らないすごい独学術

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