「ただいま……」
「おかえり、アキ」


「お腹すいたぁー」
「夕飯はできているよ、さぁ、荷物をおいておいで」


「ありがとう……今日の夕飯なに？」
「一段と寒かったから、季節外れだけれど、ラタトゥイユを作ったよ」


「……え、」
「uh-huh？」


「あ、いや、」
「アキ」


「なんでも……」
「アーキー？隠し事は無し、だよ。私が……またなにか忘れているのかな？」


「……う…ん、でも、大したことじゃな」
「小さなことも大事なんだ。君一人が悲しむのもいけない。辛くないよ、思い出すかもしれないし、思い出にすればいい。約束、しただろう？」


「…うん……そう、だね」
「大丈夫」


「前に……一緒に暮らし始めた頃。やっぱり寒い日で」
「二月頃？」


「そのくらい……で、俺、ラタトゥーユはじめてで」
「uh-huh」


「食べてから気づいたんだけど、…パプリカ……」
「夏野菜だけれど、日本はいつでも売っているからな。私が作ったんだね」


「昔、あたったことがあって。いや、嫌いじゃないんだけど……食べれるかな、って。随分前の事だから……そしたら、その後お腹壊して」
「……アキは食べ物を大切にするからね。とても素晴らしいことだけど、」


「腹壊したりするとさ、なんとなく、何に当たったかわかるじゃん？もう、なんか、全体的にパプリカで。絶対的に、もう、む」
「wow……」


「え、？ステュー……？」
「今日のラタトゥイユは、パプリカが入っていないんだ」


「……え？」
「いや、買い物をしていて、何度かパプリカの売り場を通ったんだよ。ただ何となく食指が動かなくてね。まぁ、季節ではないからかと思って……なるほど。そういう理由が……アキ？」


「……」
「アキ、どうしたんだ……気分でも」










「………………もう…………スキ…(小声)」

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蛇足：秋はラタトゥイユって言えない