夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(6)

マクシミリアンの幼少期のお話の続き。
相変わらず暗め。



『私の昔の話・2』

 7つの頃の私は、笑いもせず、泣きもしない可愛げのない子供になっていた。
 笑いかける相手も泣いてまで感情を伝えたい相手も周囲にいなかったから、というだけに過ぎないのだが。
 兄2人がルミナティ魔法学園に通う年齢になり入寮し、この家には両親と私が残された。
 両親は以前以上に私に関わらなくなり、屋敷で顔を合わせる事もほとんど無くなった。
 起きて身支度をし、一人で食事をして、家庭教師から勉強を習い、それが済むとまた一人で食事をし、入浴をしてから眠る。
 毎日はただそれの繰り返しだった。
 夜になると『化け物を産んでしまった』と叫ぶあの日の母の姿を毎晩のように夢で見た。
 朝、目が覚める度に『自分は生まれてはいけなかったのだ』という思いが増し、心にひっかき傷が増えていく。
 けれどどうしていいのか分からずに……心に増える傷に見ないふりをしながら私は日々を過ごしていた。
 そんなある日、母が叔父を屋敷に連れて来て私に引き合わせた。
 叔父は王宮で働く上級魔法師で私が今でも尊敬する人物だ。
 自分達ではどうする事もできないと判断し、母は叔父を連れて来たのだろう。
 腰まである銀色の髪に燃えるような赤い目の叔父は何かを測るようにしばらく私の目を覗き込むと、優しく笑いかけながら私の頭を労わるようになでた。

「……辛かっただろう? マクシミリアン」

 2年ぶりに、人に優しく触れてもらえた。
 2年ぶりに、人に優しい声をかけてもらえた。

 その懐かしい感覚に感情を激しく揺さぶられ、叔父に縋りついて私は大声を上げて泣いてしまった。
 私が落ち着くまで叔父は私の背中をなで続け、母が気まずそうにその光景から目を逸らすのが視界の隅に見えた。

「マクシミリアンと2人で話をしてもいいかな?」

 叔父は母にそう言うと、私の手を引いて私の部屋を訪れた。
 
(彼は、俺が怖くないんだろうか)

 そんな不安に苛まれ彼に視線を向けると、叔父は優しく微笑み返した。



筆が乗ったので更新が早めになりました。
マクシミリアンの幼少期の一人称は『俺』なのです。
続きはたぶん6日中でそれが幼少期編ラストになる予定です。
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登録日 2018.11.06 03:34

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