夕日(夕日凪)

夕日(夕日凪) (著者名:夕日(夕日凪))

ちまちまと色々投稿しています。書籍もちょこちょこ。一般文芸系は夕日凪、それ以外は夕日という名義です。

本日の短編(18)後

 パン屋に向かった私は丁寧に手を洗うと誰もいない広い厨房へ入り壁に貼ってあるリストを確認した。
 ここの森のめぐみは店頭販売だけではく、各家庭への配達や、貴族の家への納品もしているため毎日作るパンの量が多い。
 食パン1斤で小麦200g……今日の販売予定は100斤。
 他のパンの材料のことも考えると……。
 そんなことを考えつつ私は倉庫へと向かう。

「よいしょっ」

 小麦が20㎏単位で入っている袋を2つ積み重ね両腕で抱えて厨房へ行き、机の上にとりあえず積んで。
 魔石式の冷蔵庫の中身を確認すると菓子パンに使う牛乳やバターの在庫が少し足りない気がしたので、後で買い足しに行こうとメモをする。
 するとおかみさんのメリンダさんや他の従業員の方々が眠そうな顔で出勤してきた。

「ベルちゃんおはよう。助かるわー」

 メリンダさんが机の上の小麦粉を見ると、にこにこと笑った。
 メリンダさんは長い黒髪を後ろでまとめた、セクシーな未亡人である。
 ……多分狙っている従業員も多い。

「メリンダさん、材料が少し足りないんで後で買いに行ってきます。ついでに配達もして来ようと思うんですけど。午前中って何件あります?」
「午前は20件ね。お願いできるかしら?」
「わかりました、じゃあパンが焼けたら配達の準備をしますね」

 私の主な仕事は、実はパンの配達だ。
 この国では獣人が珍しいらしく、そんな獣人の私が大量のパンが入った箱を抱え王都中を走り回る光景は何故かこの国の人々に注目されてしまった。

「マスコットキャラクターってヤツよね。うちの名前もどんどん売れて助かるわぁ」

 メリンダさんや他の従業員の方々もとても嬉しそうだし、役に立っているのなら私も嬉しい。

 私はベルーティカ。ライラック国の王女であり、現在は『森のめぐみ』のマスコットキャラクター……らしい。
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登録日 2018.11.19 00:50

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