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ネオンが煌めく大都会。そこには人々の希望、情熱、そして、欲望や恐怖、あらゆる感情が溢れていた。そして、そこから妖が生まれる。
そうして生み出された妖が、人々を襲い、精気を食らい、大きく成長し、更に被害者を生む。
そんな、混沌とした街には、人知れず、妖を祓う一族が居た。
彼等は、古の天皇より、この任を賜り、脈々と受け継がれてきたのだ。
そして、今も彼らは妖を祓い続けていた。
文字数 37,597
最終更新日 2025.12.13
登録日 2025.12.07
舞台は古代の日本。都が栄えた時代に怨霊を退治する者たちがいた。華やかで雅な皇族、貴族たちだが、彼らは常に政権を争い、命を奪い合っている。そのため、恨みや憎しみが生まれ、怨霊を産み、呪い、呪われた。その邪の巣窟のような朝廷に安息はない。
十五歳になった沙宅涼悠は、修行を終えて、呪術師として怨霊退治の任務についた。彼の家は代々、都を怨霊から守ることを任されていた。涼悠にはすでに両親はなく、怨霊との戦いで命を落としていた。姉の美優と共に、父の弟である叔父に育てられた。叔父には息子が一人いて、涼悠と同じ歳で、名は颯太という。若い二人の呪術師が、今では都を守る主力となっていた。
涼悠が親を亡くしたのは五歳で、まだ幼かった。ふさぎ込む涼悠に、叔父が蔵に保管されている美術品の中から欲しいものがあれば持って行きなさいと言った。その時に『月下の白蓮』の掛け軸を見つけた。それ以来、部屋に飾り、毎日それを見て心を癒されていた。
ある日、都が大量の死霊に襲われた。その時、天から光が降りてきて、死霊を一掃した。それが、天上人の白蓮だった。その出会いから、涼悠は白蓮に必要以上にまとわりついて、離れようとはしなかった。白蓮の存在は、それほどまでに涼悠の心を強く惹きつけていた。涼悠の無邪気で素直に白蓮を慕う姿に、白蓮もまたその魅力に心を奪われ、我を忘れそうになった。だが、天上人である白蓮は、神の使者としての務めを果たし、天界へ帰らなければならなかった。二人は別れ、涼悠は白蓮の掛け軸をしまい、もう二度と会うことはないと諦めた。
白蓮が天界へ戻って二月が経とうとした頃、強い怨念を持った悪霊が都を襲い、涼悠はそれらを自分に引き付け、都の外へと連れ出して浄化したが、そこに現れた玄道の師である恵禅尼によって命を奪われた。それを知った白蓮は、神に許しを得て地上へと降り立った。たとえ涼悠が死んでも、その魂を連れて天界へ帰ろうと考えた白蓮だったが、姉の美優によって涼悠は蘇り、禁術を施した美優の願いを叶えるべく、白蓮と涼悠が動く。美優の願い、それは復讐ではなく、両親と涼悠の命を奪った者と向き合う事だった。
天界から降りてきた白蓮は、これまで胸にしまっていた涼悠の前世について話して聞かせた。二人が神として生まれ、何度も離れて姿も変わり転生した。それでも巡り会う、それが二人の愛の絆だと。
白蓮と涼悠は、邪神となった恵禅尼を昇天させると、二人もまた天へと昇った。その光景を多くの都人が目にしていた。闇夜をゆっくりと昇っていく二人は淡い光に包まれていて、それはまるで月が昇るよう。後にそれは『月光の白涼』と呼ばれた。
登録日 2025.10.07
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