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身長二メートルの大男、ツバキの職業は仕立屋だ。
とはいえ店を持たない渡りの裁縫士。受ける仕事は古着の修繕ばかり。
庶民相手の仕事は実入りが少なく、ツバキはいつもすきっ腹を抱えていた。
どうしようもなく食うに困ると、ツバキはその体を生かした日雇い仕事で食い扶持を稼ぐしかなかった。
口入屋で紹介される仕事は裁縫とは無縁の力仕事。中には護衛や用心棒といった危険が伴う仕事も含まれていた。
「その体に、その顔。それだけで泥棒除けになる」
岩を鑿で削ったような武骨な顔つきを見込まれて仕事をあてがわれることもあった。
そんなある日、ツバキが用心棒として泊まり込む大店に強盗団が夜襲をかけた。たまたま便所にいたツバキをのぞいて、用心棒たちはいきなり命を奪われた。
主人家族を脅して金蔵の鍵を開けさせようとする強盗団相手に、ツバキは一人戦うことを決意する。
登録日 2026.07.30
【カクヨム10テーマ小説コンテスト<選考委員セレクト賞>受賞!】
十歳の少年吉田健人は左足を動かすことができなかった。交通事故の後遺症で機能を失ったのだ。
父と母はその事故で命を落とし、健人は叔父の豪に引き取られた。
学校の同級生に虐められることに嫌気がさした健人は、「誰よりも速く走りたい」という願望を抱く。
叔父の豪は健人の足は治らないと告げる。その代わり健人を強くすることならできると言う。
豪は健人に柔術を教えた。
関節技や絞め技を習得した健人は、いじめられることがなくなった。しかし、仲間を失い、孤立してしまった。
中学から高校に進むといじめる人間はいなくなったが、逆に憐みの目で観られることが多くなった。健人にはそれも煩わしいことだった。
「誰よりも速く走る」という目標を果たすため、健人は工学部のある大学に進み、「走行アシスト装置」を開発する。それが健人の目指す進路となった。
そんなある日、考古学者である豪が発掘品を捏造したというニュースが流れ、豪と連絡がつかなくなった。
健人は豪の足跡を追おうと研究日誌を調べるが、「真なる勾玉」という謎のことばに関わる陰謀に巻き込まれていった――。
登録日 2026.08.02
カルマの仕事は付与魔術師。剣や槍などの武器に魔術を付与して、攻撃力を上乗せする。
しかし、武器が付与魔術を受け入れる回数には限界があった。上限回数を超えると、その武器は破壊されて粉々になる。
「あと一回! あと一回だけ頼む!」
そういって粘る客を断り切れず、カルマがかけた魔法で名剣が砕け散った。
客は絶望し、その怒りはカルマに向けられる。
「あたしのせいじゃない!」
そう叫びたいが、客を怒らせたら商売にならない。カルマは怒りを抑え、唇をかんで客の罵声に耐える。
「ちっ! やってらんねえっての!」
客が立ち去った後は、安酒を飲んでやさぐれるカルマの姿があった。
「武器が持つ魔術付与の限界を見極められれば、壊さずに済むはずよ」
カルマは一念発起し、鑑定魔術を探す旅に出る。魔法書、スクロール、エルフの古老、ダンジョン、古代都市遺跡。
カルマは鑑定魔術を求めたが、どれも空振りに終わった。
ある日カルマは、「武器の声を聞こう」と古道具屋で真っ赤に錆びた刀を手に入れた。ところが慎重に錆を落として刀身を清めてみると、見たこともない美しい刀身が現れた。
「なんて美しい刃紋。山上の湖を覆う朝もやのように神秘的な『にえ』。それでいて地金は力強く、形は素直で飽きがこない。これが人だったら、天下の美男子ね」
『随分とほめてくれるね。いささか照れ臭いのだが』
なんと! 刀がカルマの頭に直接語りかけてきた……。
その日からカルマと「妖刀朝霧」の不思議な旅が始まった。
登録日 2026.08.02
セイナッド城は交通の要所にあり。小城といえど、難攻不落。
「世に1つ 落とせぬ城はセイナッドの城」
世にうたわれた小領地には、秘術を行う異能の集団がいた。
セイナッド氏の次男ヨウキ・セイナッド。得意とするは奇襲肉弾戦法。夜陰に紛れ、敵陣深く潜入する。
暗殺、放火、爆破、敵中突破。夜に溶け、影を盗む。
操るは隠形五遁の術。火遁炎隠れ、水遁霧隠れ、木遁木の葉隠れ、金遁金縛り、土遁山嵐。
霧を呼び、風を操り、水を送り出す。炎を撃ち出し、木の葉に紛れ、雷気を飛ばして人を縛る。
向き合えば五歩の彼方から遠当てを飛ばし、十人を一足で跳び越える。
しかしてその面貌は「猿」。人に非ざる物の怪として、周辺豪族に恐れられた。
この物語は「セイナッドの猿」とうたわれたヨウキ・セイナッドと、一人の少女にまつわる出来事である。
登録日 2026.08.02
「落穂拾い」。それは夫を亡くした寡婦、養ってくれる者がいない老人、そして孤児にのみ許された仕事であった。
ダンジョンで放棄されたアイテムを拾い集めて、売りさばく。
モンスターに倒された冒険者の遺品を拾うこともあった。
人は彼らを「ダンジョン乞食」と蔑んだ。
14歳の少年、ビリーの夢は妹のミライに腹いっぱい食べさせ、きれいな服を着せて、でっかい家に住ませてやること。
そのために臆病者と呼ばれても、ビリーは生き残らなければならない。
ある日ミライが毒虫に噛まれた。「3日虫」。噛まれたものは3日以内に死ぬ。
ミライを救うためには高額の薬を手に入れなくてはならなかった。
それも2日以内に。
できることはたった一つ。命を懸けてダンジョンに挑み、第3層のフロアマスターを倒し、ドロップアイテムの宝玉を金に変えることだ。
たった一人ダンジョンに潜り、レベルアップを繰り返すビリー。やがて第2層の敵は余裕で倒せるようになった。
しかし、第3層は様子が違った。幾ら焦ってもフロアマスターに勝てる見通しがつかない。
そんな時、イレギュラーの「ゴブリンキング」が第3層に発生した。
絶対に適わない相手。ビリーは必死に逃げるが、行き止まりに追い詰められてしまった。
そこで発見した謎の小部屋、その中には黒いオーブ「時の砂」があった。
絶体絶命のビリーはオーブを自分に使う。
その効果は、「触れた対象の時間を10倍に引き伸ばし、世界とのつながりを奪う。クールタイムは使用時間と同じ」というもの。
試しに使ってみてもその威力は、ゴブリンキングに通用するものではない。
その時ビリーの脳裏に走馬灯が走り、ビリーは「時の砂」の真の使用法を理解した。
靴を脱ぎ捨てたビリーは「時の砂」をダンジョンの床に対して発動する。
ついにゴブリンキングを倒したビリーは、フロアボスも倒して宝玉を得、ミライを背負って街へとひた走る。
朝の光をを追い越して。
登録日 2026.08.02
「ジョナサンの息子、ダーミア。そなたに授かりしジョブは――『ゴミ拾い』じゃ」
七歳になった少年が祝福の儀で与えられたジョブは「ゴミ拾い」。しかも少年は口がきけず、知恵も遅れていた。
ダーミアは祝福の儀で衝撃を受け、意識を失う。
家に帰ったダーミアは役立たず、出来損ないとののしられ、虐げられる日々を送ることになった。
しかし、ダーミアの体の中にはヨブという人格が目覚めていた。魔導術を極め、大賢者と呼ばれた男、それがヨブの正体だった。
自ら苦労を求めて転生したかつての天才は、まったくの凡人ダーミアとしてゼロから魔導具師を目指す。
一切魔気を持たないダーミアが魔導具師になることは不可能に見えた。だが、ダーミアはどれほどの逆境をも意に介さない。
「ぞくぞくするのう」
立ちふさがる困難が大きければ大きいほど、ダーミアの心は燃え立つ。
逆境をはねのけ、自らの手で道を切り開く凡人の物語――。
登録日 2026.08.23
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