戦後七年が経った昭和二十七年の夏
少女雑誌の挿絵画家、蒔田俊幸は画材屋で一人の少女と出会う。幼い時に空襲で背中に火傷を負ったことで人前に出るのを嫌がり、話すことが苦手になってしまった美鈴は、戦争で父を亡くし母との二人暮らしだった。そんな美鈴に、少しでも収入になればとモデルを依頼した蒔田。アトリエで美鈴と向き合ううちに、未熟ながらも瑞々しい美しさを持った少女に惹かれ始める。
西陽が射すアトリエで、見つめ合うだけの二人の間にいつしか芽生えた感情は、一体何と呼べばいいのだろうか──
文字数 35,770
最終更新日 2025.07.24
登録日 2025.06.25