日本生産性本部の「新入社員の働くことの意識調査」では、近年「仕事よりもプライベートを優先する」と回答する新入社員の割合が、過去最高水準で推移し続けている。プライベートを大切にすること自体は何も悪くない。だが問題は、それが組織の状況を一切省みない「利己的な権利の乱用」へと変質している点にある。「自分の仕事はここまで」と勝手に線を引き、そこから一歩も出ようとしない。にもかかわらず、同僚や上司が善意から仕事を手伝ってもらったときは「ありがたい」ではなく、「当たり前」と感謝の気持ちなく消化するテイカー気質である。
彼らの論理の根本にあるのは、「会社=搾取する敵」という思想だ。「会社のために協力しても、給料は上がらない」「無理して働いて体を壊しても、会社は責任を取ってくれない」などという損得勘定が極端に働き、「契約以上のことは絶対にしない」という防衛線を張っている。権利を行使すること自体は正しい。だが、権利を行使するために必要な「周囲への配慮」や「事前の調整」というビジネススキルが欠落しているため、結果として彼らは職場で孤立し、重要な仕事を任されなくなる。彼らは「権利を勝ち取った」と思っているが、長期的には「信用」という最大の資産をドブに捨てていることに気づいていない。
ビジネスの現場、いや人間社会は「法」だけで回っているわけではない。「恩」や「貸し借り」という目に見えない「信頼残高」で成立しているはずだ。にもかかわらず、力を借りてばかりで、権利の名の下に一切返済をしないZ世代のふるまいは、「人間関係の焼畑農業」と言わざるをえない。Z世代社員はこれを「ドライで合理的な働き方」だと思っているかもしれないが、実際には「相手の善意を一方的に搾取するテイカー」に過ぎない。
「善意は搾取するが、負担は一切負わない」というスタンスを貫けば、当然、周囲からの「信頼残高」は枯渇する。「自分の仕事以外はしません」と宣言する彼らに対し、会社側も学習する。「わかった、ではこちらも契約以上の温情は一切かけない」と。今後、彼が本当に困った時、例えば、体調不良で急に休みたくなった時、家族の事情で融通を利かせてほしい時、大きなミスをして守ってほしい時に上司は冷徹に就業規則を取り出し、「ルール通り」に処分を下すだろう。その時になって「冷たい」「優しくない」と泣きついても、もう遅い。彼らは自らの手で、セーフティネットを焼き払ってしまったのだから。