「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」
指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、ビジネスライターの黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。
Z世代部下に資料のミスを指摘すれば「指示が曖昧だったんですけど?」。始業時間に連絡もなしに遅刻したので聞いてみれば「昨日寝るのが遅くて。10分くらい遅刻してもよくないですか?」。指導をしようにも、延々に続く自己正当化の言い訳の数々。もしそこで我慢できず、Z世代部下を叱りつけようものなら、彼らの「権利主張」のスイッチが入り、「パワハラを受けた」と騒ぐネタにされかねない。「パワハラ上司」と認定されるリスクに怯えた結果、他の部下に対する指導にも及び腰になり、「あいつは怒らない」と舐められてしまう。そうなれば職場全体の規律が乱れ、公平性が損なわれてしまうのだ。
では、このように謝れない&反省できない部下に対し、いかに指導すれば、行動を改めさせられるだろうか?
仕事でミスをしたり、遅刻をしたりしても悪びれない態度は、じつはZ世代の典型である。注目すべきは「昨日寝るのが遅くて」という発言である。当然ながら、睡眠時間は自己管理の範疇であって、仕事には関係ないし、言い訳になるわけがない。かつての社会人は「公私混同をしない」「体調管理、自己管理も仕事の内」と教わった。しかし、今のZ世代はこうした指導を受けた経験がない。彼らにとって、始業時間や締め切りは「何があっても全うするべき、絶対的な業務命令」ではなく、「できるだけ頑張るが、できなくても自分の責任ではない」という「努力目標」なのである。
私の考えでは、彼らがこのような意識を持つ背景には2つの事情がある。1つ目は、幼少期から長期的な不況や不安定な社会情勢の中で育っているため、無駄な努力やリスクを避け、安定を志向する保守的なキャリア観を持っていることだ。そして2つ目は、多様性教育の中で育ったことだ。自分の時間や健康といった「個人の権利」こそが最上であり、会社の義務が相対的に低く置かれているのである。彼らは立場こそ正社員になっても、これまでの働き方を馬鹿にし、正社員としての責任感を軽視しているといってよい。
彼らにも理屈はある。生産性の低い状態で残業してまでタスクを終えることよりも、十分な休息をとり、翌日高効率で仕事をこなすことこそが「合理的」で、会社にとっても「コスパが良い」と考えているのだ。ただし、この考え方には高度なスケジュール管理能力を必要とする。Z世代社員にそのような能力はないため、結果として周囲が尻拭いに追われるというのが現状である。
また、彼らを指導したら最後、「そんなに怒ることですか?」と逆ギレするのは、彼らが「指摘=人格否定」と受け止めるためである。人格を否定された(と思った)彼らは「自分は悪くないのに威圧された」と解釈し、即座に心を閉ざすか、攻撃的防御姿勢に入ってしまうのだ。
かつての若者は、多少雑に扱われることも多かった。いわれなき叱責を受ける理不尽を、経験しないほうが珍しかった。ところが「叱られずに育った割合が多い世代」が今、就職試験を潜り抜け、続々と日本中の職場に登場している。一人っ子が多く、王子様、お姫様のように扱われ、兄弟喧嘩もなければ、親戚の大人との交流もあまりない。そうなれば、会社で叱責を受けた時に「なぜ他人からこのような屈辱を受けなければならないのか」と反発が出てしまう。ちなみに「指摘された」という行為自体に面食らっているので、「指摘される内容」は関係ない。
このような「非を認めないZ世代部下」の特徴というのは、以下の3点に集約が可能だ。
① 義務意識の希薄化
納期を「個人の努力目標」と見なしており、自己都合による遅延を正当な理由と考える。非効率な「根性論」を嫌い、自分の理屈を優先する。そのため、体調管理や自己管理といった暗黙の義務を理解していない。
② 「指摘」への過剰反応
指摘や注意を「自分自身への全否定」と捉えるため、感情的な指導には逆ギレするか、心を閉ざして指導内容が響かない。一方で、SNSの「いいね」に慣れきっているため、褒めても響かず、「褒めて伸ばす」も効果がない。
③歪んだ合理主義
「自分の人生」の幸福追求を最大の課題に置き、その感覚を仕事にも持ち込む。その結果、「(自分にとっては)合理的な選択」として会社の不文律やチームワークより私情を優先する。
このような人格が形成されるに至るまでには、時代背景の違いなども大きいため、一朝一夕には適切な指導を響かせるのは難しい。ステップバイステップで長期戦だと覚悟をしよう。管理職の心構えは、まず感情を完全に排除することだ。彼らは、怒りや常識では動かない。逆に、彼らがロジックを好む特性を活かし、今回の遅延を「感情的なミス」ではなく「合理的な損失」として扱ってみる。
特に納期は、社内の信用問題、そして最終顧客との契約に直結する。納期遅延を「自己都合」と正当化させないためにも、指導は個人の感情ではなく、会社と従業員間の「契約不履行」という冷静な視点で臨むべきである。指導内容と、その後の行動目標を記録に残すことで、将来の逆襲リスクへの防御策としよう。