Z世代を甘やかすな

「正直、上司ガチャはずれたと思ってますから」なぜZ世代は会社でブチギレがちなのか

2026.02.20 公式 Z世代を甘やかすな 第5回
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「残業したくないんですよね」「それって僕の仕事ですか?」「飲み会ダルいんで行きたくないです」「そのやり方タイパ悪くないですか?」

指示は素直に聞かず、指導をすれば「それってパワハラですよね?」と口答え。世間は「価値観のアップデート」を強いてきて、Z世代への指導はどんどん弱腰になってしまう。好き勝手にふるまうZ世代部下のおかげで、職場の空気は弛緩する一方です。つけあがってさらにモンスター化するZ世代部下は、あらゆる職場に出現し、管理職を困らせています。そんな現状に、ビジネスライターの黒坂岳央さんは「Z世代を甘やかしてはならない」と警鐘を鳴らします。Z世代部下にかき回された職場を正常化するために、Z世代を甘やかさない、毅然としたコミュニケーションを身につけましょう。

上司に高級ホテルマン並みのホスピタリティを求めるZ世代

近年、Z世代の間では「理想の上司像」に対する要求水準が、際限のないインフレを起こしている。自分の提案を全肯定し、常にニコニコして、優しく機嫌を損ねないよう丁寧に教えてくれる……。もはや「上司」ではなく、「高級ホテルマン」や「過保護親」のようだ。だが、会社はホテルでも実家でもない。利益最大化を目的とした組織である。上司・部下の関係とは本来、役割分業に基づいたドライな契約関係に過ぎない。

にもかかわらずZ世代は、上司が自分の思い通りのフィードバックを返してくれないだけで「不当な扱いを受けた」「上司ガチャはずれた」と憤る。彼らは幼少期から、家庭でも学校でも「褒めて伸ばす」温室育ちな教育を受け、全肯定されることがデフォルトの設定になっている。厳しい指導を受けた経験が乏しく、わずかな否定に対しても、強い拒絶反応を示してしまう。

そして、指導されたことによる「自身の至らなさ」や「プライドの傷つき」と向き合うストレスから逃避したいがため、「これは不当な攻撃だ」「ハラスメントだ」とすり替えて自己防衛を図る。本来、向き合うべきは自身の無能さであるはずが、その感情の処理を「相手の攻撃」へと責任転嫁しているのだ。これは、とてもではないがプロフェッショナルの態度とは言えない。

誠実な上司であれば、その幼稚な態度にひるまずに、基準を下げず、結果を求め続けるべきである。上司の役割は、部下のご機嫌取りではない。組織の目標を達成するため、部下というリソースを最適化し、出力を最大化することだ。上司は部下よりも高い給与を支払われている。会社は「1人分のプレーヤーをマネージャーに変え、さらに高い人件費というコストをかけても、それ以上の効果が得られる」という経済的メリットを期待して、上司というポジションを設けている。

部下を「会社が自分を成長させてくれる」という受動的なお客様気分のままにしては、給与に見合う成果を求められるプロとして、同じ土俵には立たせることはできない。上司、部下それぞれの役割が果たされてはじめて、意味ある会社組織となるのである。

不完全な人間が、不完全な環境でも、仕組みの力で結果を出す。それが会社という組織が利益を生み出す構造なのだ。言うまでもないことだが、指導の結果として部下が不快感を抱くかどうかは、ビジネスの指標にはなりえない。

Z世代新卒社員は会社の「負債」

新卒社員は、会社にとって「負債」である。人材募集のコスト、成果の有無にかかわらず給与は先払い、研修にかかるコスト、上司のマネジメントコスト、そして失敗の許容と、新卒社員は存在するだけでマイナスである。これらの負債を会社側があえて引き受けるのは、ひとえに将来的に利益の回収を期待した「先行投資」と位置づけているからに他ならない。

筆者も、20代の若い頃はこのことが理解できなかった。会社が従業員に給与やボーナスを支払い、研修をつけてくれ、福利厚生を与えるのは「働いてあげているのだから、このくらい当然」という傲慢な感覚もあった。

その傲慢さから目が覚めたのは、日系企業の経理部に配属された時だ。上司が非常に厳しい男性で「君はもらっている給与以上の価値を出せているか?」をしょっちゅう問われた。最初は腹が立ったこともあったが、おかげで企業における利益については非常に感覚が鋭くなり、ビジネススキルも大幅に引き上げてもらえた。彼とは衝突することも多かったが、厳しくも愛ある指導で、人生で最も素晴らしい上司だったと思う。しかし、それが分かったのは退職して随分時間が経ってからのことだ。上司のありがたみが分かるのは、かなりタイムラグがあるものなのである。

この経験から余計に思う。管理職は会社から、新卒社員という投資対象の運用、すなわち「人材育成」を任されている。何事も投資をする以上、投資対象には厳しい品質管理が伴う。人への投資であれば、間違いを正し、負荷をかけ、プロの基準まで引き上げなくては意味がない。この泥臭く厳格なプロセスは、日本企業が守り続けてきた良き伝統であり、組織が次世代にプロフェッショナルを継承するために避けては通れない道である。つまり、ハラスメントのリスクを過剰に恐れる上司が、「叱らない」「負荷をかけない」という選択をしたとき、それは「投資停止」を意味する。ハラスメントのリスクを恐れて「投資停止(沈黙)」を選択するのは、預かった資産を腐らせることになる。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

なめてくるバカを黙らせる技術

黒坂岳央 /
世の中「なめてくるバカ」が多すぎて、共感、感動、絶賛の声殺到! 大人気Web連...
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