Z世代を甘やかすな

「正直、上司ガチャはずれたと思ってますから」なぜZ世代は会社でブチギレがちなのか

2026.02.20 公式 Z世代を甘やかすな 第5回
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損切されたZ世代社員が背負う三重苦

しかし、一方で投資の一つの概念に「損切り」がある。採用時には、投資の価値があると判断され採用されたZ世代部下だが、お客様気分のまま、常識的な指導にも従わない態度が続けば、上司は投資をする価値がないと判断する。ハラスメントで訴えられるリスクを冒してまで教育を施すのは、逆にコストになるのである。部下を「投資対象」から外す「損切り」の意思決定を判断するのも、これもまた管理職の仕事である。

日本の新卒3年間はボーナスタイムであると言われている。学生上がりの人材でも、大企業に入社でき、一流の研修を受け、その間は給与が出て、福利厚生も使える。実力不相応のリターンを得られる。また、最悪1社目で合わなければ、第二新卒枠という救済措置がある期間であり、教育コストを全額会社が負担してくれる「純粋な投資期間」である。

だがその魔法の効果は数年で終了する。最初のボーナスタイムで年齢相応の実績、経験、スキルを磨くことを怠ると、取り返しのつかない状況に陥ってしまう。いざ「アラサー」の年齢に達した瞬間、市場が求める評価軸は「ポテンシャル」から「即戦力としての実績」へと強制的に切り替わる。年齢を重ねれば、ポテンシャルなんて誰も見なくなる。面接では「やる気はいいから、まず実績を見せてくれ」となる。

ここで、耳の痛いフィードバックから逃げ続け、上司から「損切り」され、適切な「投資」を受けられず、アップデートを怠った社員は、以下の三重苦に直面する。

1つ目は実務能力の欠如。厳しいフィードバックを拒絶してきたため、スキルが市場水準に達していない。2つ目は指導経験の欠如、正しく育てられた経験がないため、後進を育てるロジックが持てない。最後に3つ目は過剰な権利意識だ。義務を果たさぬまま権利だけを主張する、組織にとって最も要らない、とにかく扱いにくい存在となる。

この状態で30代を迎えることは、キャリアにおける「死」を意味する。転職市場での価値はゼロになり、引き取り手がいないので社内ではリストラの筆頭候補となる。そのような末路も知らずに、生ぬるい「ホワイト企業」の恩恵を満喫しているZ世代部下は、将来の市場価値を日々ドブに捨てている。今、彼らに義務と結果を厳しく求めることは、決して攻撃ではない。数年後に彼らが直面する悲劇的なキャリアの死を回避させるための、上司としての「覚悟を持った温情」であり、最後にして最大の救済措置なのである。

いずれはみんな年を取る

もちろん福利厚生や労働者の権利を行使すること、これ自体は正当である。しかし、それは「結果を出す」という義務を果たすことが大前提である。会社とは「権利の行使」と「義務の遂行」を等価交換する場だ。結果を出すという義務を果たして初めて、権利は正当なものになる。

現在の潔癖な他責思考を持つ若年層に欠落しているのは、「いずれ自分が管理職になる」という時間軸の視点である。全員が課長や部長になる、という意味ではない。日本で課長になるのは全体の3割に過ぎない。

ここでいう「管理職」というのは、現場を動かす「非公式のリーダーシップ」のことである。指示を待つだけの「作業員」から脱却し、自ら課題を発見し、周囲を巻き込んで解決する「自律型人材」への転換だ。30代以降、この転換ができない人間は組織にとって「負債」となる。なぜなら、年次があがるごとに給与というコストだけが高くなり、指示がなければ動けない、その上若手のような柔軟性も吸収力もないからだ。市場価値は「素直で安価な新人」や「ハングリーな外国人労働者」に無条件で劣後する。

彼らが今、上司に突きつけている「完璧な配慮」という無理難題は、数年後の自分自身の首を絞める刃となる。「一生平社員でいい」という人もいるが、よほどハイスキルワーカーでないなら「年を取って扱いにくい社員より、素直で安く済む新人か、外国人労働者でいい」となってしまう。誤解を恐れずに言えば、平社員の価値は若さだ。年齢を重ねると無条件に若い人に劣後する。このメタ認知が出来ているだろうか?

不完全な上司を観察し、その能力を盗み、環境をハックして生き抜くタフさがない人間は、自分が指導側に回った瞬間、部下からの潔癖な要求に晒されて自壊する。上司を「当てる」のではなく、どんな上司であっても「使い倒す」ことこそが、生存戦略としての正解である。

「実績」なくしてZ世代は生き残れるか

「理想の上司」にめぐり合うことを夢見るZ世代の態度は、自分のキャリアの命運を他人の手に委ねる「他力本願」な甘えでしかない。どのような環境であっても、プロフェッショナルとして「実績」という資産を稼ぎ出せる自分を作り上げなくては生き残れない。

ある程度年を取ると、人材の価値は「実績」でしか判断できなくなる。筆者も過去発信したビジネス記事や動画を見て、テレビ出演、雑誌取材、書籍出版などのお仕事を頂いている。だが何の実績もなく今の仕事はさせてもらえない。若さという資産は、年を取ることで落ち続けていく。だが、加齢以上に実績という資産を作れば仕事は取り続けることが出来る。

現在、組織の意思決定を担う管理職層も、ただ単に社歴を重ねたからその席に座っているわけではない。彼らはかつての「新人ボーナスタイム」に、泥臭い現場で圧倒的な実績を積み上げた。組織への貢献を「個人資産」として蓄積してきたからこそ、今そのポジションに存在し、相応の報酬を得る権利を勝ち取っているのだ。彼らは「実績」を持っているからこそ、組織において代替不可能な価値を維持できている。

会社員にとっての「資産」とは、社名や役職を剥ぎ取った後に残る「実績のタグ」である。その場限りの労働をこなす「フローの働き方」から、自身の市場価値を積み上げる「ストックの働き方」への転換が重要だ。

若さというボーナスタイムはやがて尽きるが、稼ぎ出した「実績」という資産は目減りすることなく、次のチャンスを呼び込む。ゲームのルールが「ポテンシャル」から「実績」へ切り替わるのだ。

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プロフィール

黒坂岳央
黒坂岳央

1981年大阪府生まれ。実業家。学生時代から人間関係でなめられることに苦しみ、社会に出ても理不尽な扱いを受け続けた経験を持つ。しかし、その経験を逆手に取り、なめられないための戦略を研究、体系化した。現在は、本業のかたわら、アゴラ、プレジデント、Yahoo!ニュースなどネットメディアでニュース・オピニオン記事を執筆し、PVの最高値は1記事で150万PV超。テレビ朝日系、TBSラジオなどテレビ・ラジオ番組にも多数出演している。なめられる弱者だった立場から、自らを研究対象として積み上げてきた経験を土台に本書を執筆している。

著書

なめてくるバカを黙らせる技術

黒坂岳央 /
世の中「なめてくるバカ」が多すぎて、共感、感動、絶賛の声殺到! 大人気Web連...
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