「家族」というチームのつくり方

9割の夫が間違えている――妻の機嫌がよくなる会話術

Getty Images

奥さんにGROWモデルってできる?

前回は、家庭内に1on1面談を持ち込んでみたらどうなるか、についてお話ししました。そして、1on1面談で、目標を明確化したり、目標を共有したりする際に使われているGROWモデルについて解説し、それが家庭で子どもと話す際にも有効であるということをお伝えしました。
では、このGROWモデルを使った1on1面談を奥さんにしたら、受け入れてくれるでしょうか?

奥さんに向かって「今の目標は何?」とか「ほかに選択肢は?」とか質問したら、「どうしたの? 頭でも打ったの?」と不審がられたり、ムッとされたりするのがオチでしょう。
そもそも、夫婦間でのGROWモデルは有効なのでしょうか? 私のこの問いへの答えは、半分は「イエス」であり、半分「ノー」です。いったん、面談の5レベルを思い出してみてください。

【面談の5レベル】
レベル5:課題鮮明化面談
レベル4:目標共有面談
レベル3:お悩み相談室面談
レベル2:火消し面談
レベル1:雑談面談

レベルに分かれていますが、レベルの低い階層の面談を「してはいけない」ということではありません。むしろ、レベル1、2、3ができていないと、レベル4、5をやろうとするとうまくいきません。

ビジネスの現場でもそうですよね。部下や同僚と少なくとも雑談ができるような関係性を作っておかないと、どんな話し合いもできません。トラブルが起きているなら、トラブルの火を消してからじゃないと次に進めません。
家庭においても同じです。悩みを抱えている奥さんに対して悩みを聞くことなく、「目標は?」などと聞こうものなら「はぁ?」と怒りを買ってしまいかねません。
面談は、低いレベルのものができていることが前提にあり、その土台がしっかりできていることで、次のステップアップした面談を行えるようになるのです。

まだ関係性がよくない職場では、リーダーは率先して、雑談面談、火消し面談、お悩み相談室面談をしっかり行うことが重要です。「この人は自分の味方なんだ」という信頼感をメンバーに持ってもらえたら、徐々に目標や課題をテーマにすることができます。そしてそのとき初めて、GROWモデルがそのまま使えるようになるのです。
つまり、奥さんにGROWモデルが使えるかどうかは、日ごろ奥さんと雑談面談、火消し面談、お悩み相談室面談ができているかどうか次第だということです。

そして、奥さんの悩みは普通尽きません。いくらでも悩みが出てきます。女性は男性の5倍危機感が強いと言われています。子どものことも、家族のことも、仕事のことも、皆さんが男性であれば、その5倍は心配性だと思ったほうがいいのです。
私の妻は、いま、インプラントを入れるかどうかで非常に悩んでいます。奥歯が虫歯になってしまって、抜いたほうがいいと歯医者に言われて抜いたのですが、この抜くか抜かないかでも大いに悩み、ネットやYouTubeで調べに調べ、調べれば調べるほどに不安が募り、結局抜いたのですが、その後、インプラントにするかどうか、失敗しないかどうか、歯医者さんはどこにしたらいいのか、その評判はどうか、実際にカウンセリングに行って……不安だ、心配だと、悩みが尽きません。

私も仕事柄、共感が大事だということはわかっているので、最初はふむふむと話を聞きます。「それは心配だね」「そっか、それは気になるね」と共感アプローチの相槌を打つのですが、会話の半分くらいがインプラントの話になってきて、だんだんと辛抱がたまらなくなってきます。やがて、「もうさ、リスクは絶対にあるんだから、決めちゃったら?」とアドバイスし始めます。心の中では「最近インプラントの話ばっかりだよ。考えすぎじゃない?」などと否定的なことを言いたい自分が顔を出していき、いっそ「もうインプラントの話はやめよう」と言いたくなっています。
男性は、問題を解決したいのです。インプラントに不安があるなら、不安をリスト化して1つずつつぶすなり、検討して結論を出した答えには立ち戻らずに進めていくなどしないと、延々と悩みを吐き出すだけの会話になり、なんの生産性も感じなくなっていきます。最終的には「もう知らんがな」状態になってしまうわけです。

ですが、ここが堪えどころです。共感とは、答えを出すことではありません。問題を解決することではありません。相手が感じているように感じ取ることです。
1対1の対話の中で、私たち男性はすぐに答えを出そうとしてしまいます。そのことが、夫婦の共感度を高めないハードルになっています。
相手が感じたように感じることに専念する。これが、夫婦間における心の修行であり、ここで共感アプローチを崩してしまうと、目標を共有することなどできないのです。

ご感想はこちら

プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

チームづくりの教科書

高野俊一 /
成績が振るわない。メンバーが互いに無関心で、いっさい協力し合わない。仕事を...

その仕事、部下に任せなさい。

高野俊一 /
通算100万PVオーバーを記録した、アルファポリス・ビジネスのビジネスWeb連載の...
出版をご希望の方へ

公式連載