「雑談力」がビジネスの世界で注目されています。
営業の商談や、社内の人間関係などにおいて、じつは雑談がもっとも重要だという意見もあり、“雑談を制する者がコミュニケーションを制する”とさえ言われています。近年では、雑談力をテーマにした書籍が、何冊もベストセラーになっています。
そもそも雑談には、「聞く力」と「話す力」の両方が求められるため、じつは雑談力は、かなり高度なスキルと言えます。
雑談力をみがくことができれば、顧客や社内メンバーとよい関係を構築をすることができるだけでなく、誰とでも仲良くなれるようになれる。雑談力は“究極のスキルである”、という意見も聞かれます。
とはいえ、それほどの雑談スキルは、家庭内では必要ないでしょう。営業先や職場と違い、家庭内ではもっと気楽に会話しているはずです。
では、この子どもを持つ父親の皆さんにお聞きしますが、子どもと雑談、できているでしょうか?
こう問われると、意外にできていないことに気づくお父さんは多いのではないでしょうか。じつを言うと、私も子どもと雑談するのが苦手でした。
では、なぜ子どもとうまく雑談できないのかをさぐるために、いったん「雑談力」を「聞く力」と「話す力」に分けて、子どもとの雑談に苦手を意識を抱えていた頃の私のケースを例にとって考えてみましょう。
まず、「聞く力」ですが、子どもの話を聞くのはしんどいのです。
私は、子どもが話すことはすべて喜んで聞いてあげられるものだと思っていたのですが、実際に子どもと接しているとそうではありません。もちろん、一生懸命話す姿は可愛く、子どもの感性に驚かされることもあるんですが、毎日接していると、付き合うのがけっこうつらいのです。
子どもの話は、正直に言うと、とても退屈でつまらないのです。
「今日学校どうだった?」と質問すると、「楽しかった」と答えます。「何が楽しかったの?」と聞くと、「忘れちゃった」などと言います。
それにもかかわらず、自分が好きなことの話をしだすと止まりません。たとえば、電車の話。新幹線の種類や最高時速、駅の名前を路線ごとに暗唱したりします。ポケモンのモンスターの特徴や攻略法などを延々と話したりします。
これら1つ1つには、「よく覚えているね」とか「そこまで知ってるんだ」と感心する部分もあるのですが、毎日だとさすがに疲れてきます。そこから話を広げて盛り上がることも難しいのです。
続いて、子どもに対しての「話す力」はどうでしょう。
改めて思い返してみると、私には子どもと話すことができる、共通の話題があまりなかったようです。
私の関心事は、組織づくりや子育てはどうしたらうまくいくか、というようなことですが、そんな話を息子にしたところでちんぷんかんぷんでしょう。好きな映画やゲームなどのエンターテイメントも、子どもには難しいもののほうが面白く感じてしまいます。
そんな悩みを抱えていた頃、息子の学年が上がり、担任の先生が変わりました。この先生との出会いが、私にとって転機になりました。
この先生、とんでもなく子どもたちから人気のあるのです。
まだ若く、30歳前後なのですが、子どもたちから「かっちゃん先生」と呼ばれ、息子も学校から帰ってくると「今日のかっちゃんエピソードはね」と教えてくれるようになりました。
なにやら、毎日終わりの会で、「今日のかっちゃんエピソード」というのを話すらしく、これが面白くて仕方がないらしいのです。また、授業もわかりやすく面白い。
あまりにも好きすぎて、わが家の息子は、夏休みの期間などは、「早く2学期が始まってかっちゃん先生に会いたいな」と言いだすくらいでした。
なぜこれほどの人気があるのか。息子の話や、保護者会で親御さんからの評判から推測してみると、どうやら雑談が抜群にうまいらしいのです。
なんでもないような話題を、小学生にもウケる雑談に変えて爆笑をかっさらい、授業も面白くして成績も伸ばしている。あの先生なら「学校に行きたくない」という不登校児まで登校してくるなんてウワサ話までされるほどの人気ぶりだそうです。
どうしたら、かっちゃん先生のように好かれる親になれるのか? その問いから、私は雑談力に行き着きました。
ビジネスの世界では、雑談力のセミナーはとてもニーズがあり、先ほども言ったようにたくさんのビジネス書が出ています。私も雑談力の本を読みあさり、学んでいきました。
そうして、ビジネスの世界で使われている雑談力を子どもとの会話に応用しても、効果があることを発見したのです。この発見により、子どもとの関係性が劇的に変わり、子育てによい効果を生むことを実体験しました。
雑談を制する者は、子育てを制す。そう思えるくらい、雑談力は重要です。子ども向けの雑談力を鍛えていきましょう。