女性は男性よりも心配性だと言われています。一説には、女性は男性の5倍も心配しやすいそうです。
事件や事故のニュースを見て、まるで自分の身に起きたことのように心配してしまう。あなたの奥さんや母親など身近にいる女性で、以下のような人はいないでしょうか。
・飛行機事故のニュースがあると、「もう飛行機に乗るのはやめたほうがいい」と極端なことを言いだす
・クマに襲われた事件が報道されると、「山に近づくのは危険(クマが出ない山であっても)」だと主張する
・女性の一人暮らしでストーカー殺人が起こると、「娘は一人暮らしをさせちゃいけない」と言う
・息子と同い年の子どもが川で溺れたという記事を目にして、「あなたも気をつけてよ」と繰り返し言ってくる
その一方で、男性は、そうしたニュースを見ても自分の身には起きないだろうと思い、心配しない人が多いようです。
心配することがあっても、その場合「確率」に目がいきます。たとえば飛行機事故の場合、年間飛行機の利用者が何人いて、そのうち何人が事故に巻き込まれるのか、といった点に着目し、めったに事故が起きないのだから「大丈夫だろう」と納得するのです。
ちなみに、飛行機に乗った際の死亡事故に遭う確率は約18万分の1(約0.00056%)~1100万分の1(約0.00001%)。これは自動車の死亡事故確率が103分の1(0.97%)であるのに比べると、かなり安全と言えます(こうやって数字とらえてみると、自動車事故の約1%という確率ってすごく高いですね……)。
いずれにしても、家族で何かを決める際、何をどこまで心配するのかという問題は、夫婦間で常にぶつかるものです。リターンのためにどれだけリスクを取るのか、ということで意見衝突するのです。
とりわけ子育てに関する判断では、よくぶつかります。私の家族でも、私の周りの家族の話を聞いても、子どもにチャレンジをさせるか、それともリスクを考えてやめさせるべきか、でよく揉めているようです。たとえば以下のようなテーマです。
・海外留学させるべきか
海外経験はさせたいし、英語も身につけてもらいたいが、海外で事件に巻き込まれたりしないか。
・スマホを持たせるべきか
子どもと連絡を取れたり、位置情報を共有して安全を確保したい。デジタルネイティブに育つかもしれない。その一方で、友達とのコミュニケーションに悪影響があるかもしれない。スマホ依存症、デジタル汚染の心配がある。
・キャンプに行かせるべきか
自然の中で体験を積んでほしいが、事故やケガをしないか心配。
・包丁を使わせるべきか
料理の楽しさを知ったり、料理してくれる人の感謝を持ったり、食材への感謝を持ってほしいが、包丁で怪我したりして料理が嫌いになったりしないか。
・自転車に乗らせるべきか
移動手段としてアクティブに行動してほしいし、一生自転車に乗れないよりも乗れたほうがいいと思うが、交通事故を起こさないか心配。交通ルールを無視して車に迷惑をかけてしまうかもしれない。
子どもの海外留学について意見が分かれるのは理解できるとしても、自転車に乗らせるか乗らせないか、のような問題で揉めていたら結構大変かもしれません。
このように、皆さんの家庭でも奥さんと旦那さんとでリスクに感じるポイントが違い、かみ合わないことは多いのではないかと思います。
とはいえ、夫婦の意見を調整して、お互いが納得したうえで意思決定することは非常に重要です。
議論せずに、意見対立したまま強引に進めると、徐々にお互いの信頼が薄れてしまいます。やがて議論することすら億劫になり、それぞれが個々に判断していくようになってしまうのです。
結果として、相互に「勝手にしろ」という気持ちを抱えたまま、旦那さんと奥さんがそれぞれ別の考えで意思決定するようになり、家族がバラバラになってしまいます。こうしたすれ違いが離婚の原因になっていることは、じつは少なくありません。
何が心配なのか、何をリスクだと思っているのか。夫婦がお互いの心配するポイントを把握し、対立を解消できるかどうかは、家族において極めて重要だと言えます。
ここで、ビジネスの現場の話に移します。というのも、夫婦の関係というのは、社長とナンバー2の関係に似たところがあり、夫婦の心配するポイントの違いやその調整に関しても、いかせるところがあるからです。
「会社はトップで決まる」とよく言いますが、これは組織論の観点で言うと、半分正解で半分不正解だと私は考えています。
会社のトップというのは、少し一般とは違った感覚を持った人が多いものです。どこか尖っている要素があるから、これまで社会になかった価値あるものを生み出し、収益を上げることができるのです。そのため、ビジネスで成功している世の中の社長の多くは、その尖っている分だけ、欠けているところも多いというのが実感です。
しかし、組織を変えていかなくてはいけないとき、そうした尖った個性を持つ社長を変えるのは大変です。社長自らが変わろうとすることはとても大切なのですが、多くの場合うまくいきません。
そのため、組織づくりにおいては、トップの資質以上にナンバー2の存在が重要だと私は考えています。組織を変えるときは、トップを変えるのではなく、トップとナンバー2との関係性を変えるのです。
トップの強みも弱みも理解して、強みを活かし、弱みを補う。そうした調整を、ナンバー2が行えるかが、トップ自体を変えるよりもうまくいきやすいのです。