セブン-イレブン運営が外資系企業になる可能性…日本の消費者にはデメリット

 ACTからの買収提案は約7兆円ですから、新経営陣は今と比較して3割以上企業価値が向上するような結果を出さないと、株主からの『買収を受け入れろ』という圧力を跳ね返すことは難しい状況です。仮に買収は拒否できたとしても、アメリカのコンビニ事業のIPOを実施して、ACTにその株を一部持ってもらうような妥協案も必要となるかもしれません。少なくとも完全に単独経営を貫くのは難しい状況へと追い込まれたことは間違いありません」(鈴木氏)

日本市場は後回しに

 もしセブン&アイがACTによって買収をされた場合、セブン&アイHDにとってはメリットのほうが大きいのか、逆にデメリットのほうが大きいのか。

「株主にとっては買収を受け入れた時点で、1.3倍の価格で持ち株が売れます。これは過去最高値の株価水準でもあります。国内でのセブン-イレブンの凋落を含め、先行きが厳しい中でこの提案にはメリットしかないでしょう。一方で、もし買収が成立すれば経営スタイルは外資流へと一変します。経営陣は創業家の伊藤順朗副社長含め一掃されるでしょうし、幹部社員にとってもこれまでとは違ったかたちで厳しい環境へと変わるでしょう」(鈴木氏)

 では、日本の消費者にとってはどうなのか。

「買収で日本の消費者が感じるであろうデメリットは、日本のセブン-イレブンがおそらく後回しにされてしまうだろうということです。海外の新しいオーナーから見れば一番重要なのがアメリカのコンビニ事業、その次に重要なのが中国を含めたアジア市場での成長です。買収後の新経営陣はこの2つの戦略に集中するでしょうから、どうしても日本市場は後回しになります。セブンの魅力は日本の消費者に向けた商品開発力にありましたが、もし買収が成立してしまったら、セブンについてはそのようなメリットを消費者は感じることができなくなるかもしれません」(鈴木氏)

(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)