このような状況を放置すれば世論は批判に回り、他の海外諸国のように電動キックボードが一転して禁止される事態すら起きる可能性がありました。そのような状況になる前に、企業としてどのような対策をとるのか検討結果を公表したことは評価すべきです。
2つ目に、行政の側も実際に起きている問題を踏まえて道路交通法を頻繁に見直していくべきです。歩行者の安全や、自動車との接触事故を減らすためには、事業者の自助努力だけでなく行政のルールが重要だということです。日本でもこれまでグレーな領域で産業が急発展することが何度も起きています。わかりやすい例では家庭用ビデオの出現で生まれたレンタルビデオ市場や、インターネットの発展で生まれた動画ダウンロード市場が似たような歴史をたどっています。
これらの業界では著作権の面で違法なサービスが先行する中で、行政と業界団体が協力して新しいルールをつくることで、最終的には新サービスが事業として成立する環境が整いました。電動キックボードについても一度の道路交通法改正では不十分で、これから何度も現実を踏まえた法律の改善が必要とされるはずです。
3つめに重要なことは、それらの措置を踏まえて、なお起きる違反行為については、きちんと摘発をすることです。株式市場が発展するなかでは、インサイダー取引などの違法行為がきちんと摘発されることが重要でした。電子書籍が定着するためには『漫画村』のような違法にアップロードされたサービスが閉鎖される必要がありました。
電動キックボードが定着していく過程では、違法な利用者がきちんと罰せられることで違法行為が激減するようなプロセスが絶対的に必要です。今のところ、利用者からみれば自転車の延長で取り締まりのお目こぼしが目立つ電動キックボードですが、本格的にサービスとして日本に定着するためには、原付と同じように違反行為は即座に捕まって切符が切られるような状況に移行することが、これからの発展プロセスのどこかのタイミングで必要なことになるでしょう」
(文=Business Journal編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)