JR東日本と新幹線、本当に事故は増えているのか?背景に深刻な人手不足

 では、トラブルが頻発している原因はなんなのか。コスト削減などが影響している可能性はあるのか。

「JR東日本をはじめ、鉄道会社各社はコロナ禍以後、経費の節減に努めています。鉄道事業は固定費の比率が9割前後と高いので、輸送需要がわずかに減少しても利益が減ってしまいます。とはいえ、鉄道事業で安定して売上を維持するには安全で安定した輸送が前提となり、必要以上のコストカットは逆にコストが増大する可能性があり、JR東日本に関しては絶対に削ってはならない部分のコストカットは行っていないでしょう。

 近年深刻さを増しているのは人手不足です。先に挙げた架線のトラブルでは架線の張力を保つテンションバランサのなかで、人の目による確認がより必要な滑車式と呼ばれる装置の破損が原因でした。メンテナンス頻度の低い装置への更新も同社は進めていましたが、人手不足の進行がより早かったために見過ごしたという見方もできるでしょう。

 新幹線ではないのですが、JR東日本では2025年2月10日に山手線内回りの浜松町駅と新橋駅との間で線路異常が発生し、一時山手線の内回りの電車が隣を走る京浜東北線大宮方面の線路を走ることとなりました。その際、田町駅から西日暮里駅までの各駅では駅員が山手線の電車に対してホームドアを操作することとなりましたが、鶯谷駅では普段はホーム監視担当の駅員が配置されていないため、応援の駅員が同駅に到着するまで山手線の電車は鶯谷駅を通過していました。コストの削減とトラブルの多さ、ましてや事故との関連はいまのところ薄いとしても、ひとたびトラブルが起きたときの復旧面では課題を残したといえます」(梅原氏)

(文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)