●この記事のポイント
・電機メーカーとして名を馳せたソニーGが近年、急速に「アニメ会社化」
・日本のアニメがそのまま世界中で見られるという現象
・音楽・映画事業とアニメ事業のシナジー効果が創出されている
かつてテレビやオーディオ機器、PCなどを手掛ける電機メーカーとして名を馳せたソニーグループ(G)が近年、急速に「アニメ会社化」している。アニメ動画配信会社の米クランチロールやアニメ制作子会社のアニプレックスを傘下に持ち、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のゲーム機「PlayStation 5(PS5)」の人気タイトル『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』のアニメ化を両社が進める(2027年公開予定)など、アニメ事業の他事業への横展開も進めており、いまやアニメ事業はソニーGにとって注力事業になったという見方も強い。同社のアニメ事業はどのような現状なのか、そして今後、どのように展開されていくのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
●目次
ソニーGの業績は好調だ。26年3月期連結決算は、営業利益が前期比0.3%増の1兆2800億円になる見通しで(10月に分離する金融事業を除いたベース)、3期連続で過去最高益を更新する。好業績を支えるのがゲーム・音楽・映画のエンターテインメント3事業であり、ソニーG全体の売上高の約7割を占める。アニプレックスが手掛けたアニメ『鬼滅の刃』は、ソニー・ピクチャーズエンタテインメントが映画版の世界展開に参画し、またPS5向けゲームもヒットするなど他のエンタメ事業とのシナジー効果も生まれている。だが、ソニーの事業セグメントには「アニメ事業」は見当たらず、単体での売上規模は明らかにされていない。
東洋証券シニアアナリストの安田秀樹氏はいう。
「ソニーGのアニメ事業は音楽事業と映画事業の2つにまたがって入っていまして、まず、アニプレックスは音楽事業に入っています。その理由は、アニプレックスがソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の子会社であるためです。アニプレックスは『Fate/Grand Order』などのゲーム事業で大きな利益をあげている企業で、音楽セグメントのなかにゲームのセグメントがあり、この売上規模が900億円ほどとなっています。そしてアニプレックスの売上規模は1500億円程度ほどだと推測しています。一方、アニメ配信サービスのクランチロールは映画セグメントに入っており、クランチロールの売上は300~500億円ほどではないでしょうか? よって、アニメ事業全体では2000億円には満たないと見ていますが、正確な数字は分かりません。ソニーG全体の売上高は約12兆円なので、2000億程度の事業規模だとセグメントなりの業績を開示する必要はないということになるのでしょう」(安田氏)
ソニーGにとってアニメ事業は今、どのような位置づけなのか。
「もっとも注力すべき事業になっています。世界的にアニメが人種や文化、宗教の差異なく日本のアニメが視聴されるという現象が起きています。たとえば1990年代につくられた『美少女戦士セーラームーン』は南米などでも広く見られていると聞いています。これは、1990年代に日本のアニメ会社が非常に安い価格で海外に積極的に作品を販売し、南米の放送局が毎日のように放送して、かつ何度も再放送しているために幅広い年齢層に浸透している模様です。イスラム圏でも日本のアニメが見られており、世界中で受け入れられるようになっています。加えて世界のアニメ市場は成長しているので、ソニーGがそこに注力するのは非常に理にかなっています。