
ADKの売却額は750億円だが、同社の市場価値は高まっているという。
「ADKは広告代理店のなかでもアニメのIPなどに強く、海外でも権利を持つ企業などを積極的に取得する動きをみせています。そのような企業の価値は現在、市場で高まっていますので、750億円という買収金額を聞いて、個人的にはちょっと安いかなという印象を持ちました」
ADKHDの主な事業は広告・マーケティング事業だが、アニメ・コンテンツ事業にも強みを持つ。『ドラえもん」『クレヨンしんちゃん」『プリキュア」『遊戯王』シリーズなど数多くのアニメ制作委員会に参加しており、アニメの制作・マーケティングのノウハウを持つ。また、多くのIPを活用する権利を持つとみられる。クラフトンがADKHDを買収する目的は何か。
「クラフトンとしては、自社ゲームタイトルを日本でアニメ化や映画化して展開するというよりは、日本のアニメなどさまざまなIPをゲームに活用することによって海外展開を進めていきたいという戦略だとみられる。ADKHDがすでに権利を持っているIPはすぐに使えるだろうし、その他のADKHDが直接的に権利を持っていないIPも、日本の大手広告代理店であるADKHDが窓口となって権利保有者である各企業と交渉してくれれば“話がスムーズに進む”と期待できる。加えて、ADKHDのノウハウやコンテンツ企業との接点を活かして、クラフトンは自社のIPに加えて日本のIPを活かしたアニメ・コンテンツの制作とその海外展開を進めることも可能になってくる」
一方、ADKHDは1月に米国企業(STAGWELL)と海外事業に関する協業を発表するなど海外展開に力を入れており、アジアをはじめ海外でもシェアを拡大させつつあるクラフトンを通じて、ビジネスを拡大させることが期待できるので、大きなメリットがあると予想される」(大手ゲーム会社関係者)
ADKHDは今回の発表に際し、「グローバルIP企業であるKRAFTONという戦略的パートナーを得たことにより、中期経営計画の中心に置くファングロース戦略の取り組みを加速させてまいります。ADKグループの広告・マーケティング事業や、特徴であるアニメ・コンテンツ事業と、KRAFTONの有するグローバルIPやネットワーク、テクノロジーおよび資金力等を活かし、お互いのユニークネスを最大限活用した持続的成長が期待できると考えています」としている。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=鈴木貴博/百年コンサルティング代表)