23時間で住宅一棟を完成…3Dプリンターが変える「家」、住宅ローンもなくなる?

 店舗やレストラン、駅舎、万博会場の施設に加え、防衛省との協力で防爆シェルターの開発も進む。壁を二重・三重構造にできる3Dプリンター建築は、防衛分野との親和性も高い。

 さらに、セレンディクスは施工自体は担わず、デジタルデータを世界に提供するモデルを採用。すでに5か国で同一データによる建築実証を成功させており、水平分業による住宅産業の再編を進めている。

「もし300万円で家をつくれるなら、世界で10億棟は売れるだろう」。ある日経記者の言葉をきっかけに、セレンディクスはグローバル展開を加速させた。

 日本国内ではJR西日本との資本業務提携をはじめ、大手印刷会社、自動車メーカーとも連携。海外ではタイ最大手の財閥とも協力し、材料開発や供給体制を整えている。問い合わせは1万件を超え、うち3000棟以上が具体的な購入希望だ。

3Dプリンター住宅がもたらす「自由」

 セレンディクスが描く未来は、単なる低価格住宅の提供にとどまらない。住宅ローンがなくなったら、人は何を選択するのかーー。仕事、家族、挑戦──人生の自由を取り戻すことが、同社の最大のミッションだ。

 現在、国内外で実証棟はわずか十数棟にすぎない。しかし、建設キャパはすでに年間500棟規模に拡大。BtoC・BtoB・ガバメント・防衛・グローバルの五つの柱で事業を進めるなか、同社は「住宅産業の完全ロボット化」という壮大な目標に挑み続けている。

「私たちのファーストミッションは、30年の住宅ローンをゼロにすることです。家が自由になれば、人の人生はもっと自由になる」

 飯田氏の言葉には、3Dプリンターというテクノロジーを超えた「住宅の再発明」への情熱が宿っていた。

(文=BUSINESS JOURNAL編集部)