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正義025・朝露
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翌朝。
エスとユゼリアは、ロズベリーの医療系クラン【朝露】の応接室にいた。
ノックの音でエス達が目を覚ますと、眼鏡をかけた緑髪の男性が入ってくる。
【朝露】のクランリーダーであるベンだ。
「エスさん、ユゼリアさん。ロレアさん達が目を覚ましましたよ。状態は良好です」
「ほんと!?」
「よかったわ……!」
エスとユゼリアはほっと息をつく。
――時は遡り、昨晩のこと。
倒れたロレアとエンザを見たエスは、ラナとヴィルネに状況を尋ねた。
すると案の定、仮面の2人組に襲われたということらしい。
敵の数はエス達の時よりも少ないが、戦法は全く同じである。
後方のラナ達はナイフの攻撃を免れたが、前に出ていたロレアとエンザがナイフを受けてしまった。
事情を把握したエスは、ジャスティス1号に警戒を、遅れてやってきたユゼリアに応急処置を任せ、自身は連合へと向かった。
そこで職員から医療系クラン【朝露】の情報を聞き、ロレア達を運び込んだのだ。
【朝露】はそのメンバーの大半が薬師系の職業持ちで構成されており、毒を受けた人間の治療に強い。
ロレア達の容態を見たクランリーダーのベンは、エス達が言う前に瞬時に青毒であることを見抜き、適切な治療を施すと言った。
そうして、ジャスティス1号を送還後、応接室に泊まらせてもらうこと数時間。
ベンがやってきて、ロレア達の回復を伝えてくれたのだ。
「ベン、ありがとう!」
「ええ。青毒の治療は難しいのに、すごいわね!」
「いえいえ。今回はいろいろと好条件が重なりましたから」
エス達を病室に案内しながらベンは言う。
曰く、受けた毒の量がそれほど多くなかったこと、ユゼリアとヴィルネが応急処置の回復魔法をかけたこと、ロレアとエンザは実力のある冒険者で体が強かったこと等が幸いしたそうだ。
「さあ、どうぞ」
ベンはそう言って、病室のドアを開ける。
室内には複数のベッドが置かれていて、その内の2つにロレアとエンザが寝かされていた。
ベンが言うように状態は良好らしく、ベッド横に座ったラナ達と談笑している。
「ロレア! エンザ!」
「回復してよかったわ」
「エス、ユゼリアさん。この度はありがとうございました」
「おう、ラナ達から話は聞いてるぜ。ありがとよ」
エス達を見た2人がそう言うと、ラナとヴィルネも頭を下げる。
「改めて、2人とも本当にありがとねー」
「ふ、2人には助けられました」
「いいよ、気にしないで!」
「そうよ。い、一緒に邪獣を狩った仲なんだから!」
エスとユゼリアの言葉に、ロレア達は笑みを浮かべる。
それから、エス達の下へやってきたベンが、ロレアとエンザの状態について詳しく説明してくれた。
既に喋れる状態にはなっているものの、完全回復まではしばらく時間がかかるらしい。
というのも、青毒は治療後も影響が残りやすい毒で、場合によっては後遺症が残るのだそうだ。
今回は適切に処置できたため後遺症の心配はないが、少なくとも3~4日は安静にするべきだと言われた。
「――では、また後ほど参ります」
説明を終えたベンが部屋を出た後、ロレアが「はぁ」と溜め息を吐く。
「完全にやられましたね……数日で治るのは幸いですが……」
「ああ……アタシらが不甲斐ないばっかりに……」
同意したエンザが悔しそうな顔をする。
「しかし、相手は何がしたかったのでしょうか……命を狙うのが目的なら、追撃もできたはずですが……」
「ナイフがロレア達に当たったのを見て、すぐに逃走したんだっけ?」
「そう、目的は達したって感じだったよ」
エスの質問にラナが答える。
「なるほど……よく分からないなぁ」
「そうね……私達の時も失敗したとみるや逃走したし」
「そういえば、エスとユゼリアさんも襲われたのでしたね。ラナから聞きました。2人とも無事でよかったです」
ロレアはそう言って、顎に手を当てる。
「……エス達も襲われたとなると、明らかに調査依頼絡みですね」
「うん。ユゼリアとも――」
エスがそう言った時、病室のドアがノックされる。
話を中断してドアのほうを見ると、クランリーダーのベンがデルバートを連れて入ってきた。
「デルバート! なんでここに?」
「おう、エスか。【英霊の光】のパーティが襲撃されたという報告を受けてな。それに、エス達も襲われたと聞いている」
デルバートはエス達のほうへとやってきて、来訪の理由を説明する。
彼もエス達と同じく、報告の内容から調査絡みの事案だと判断したらしい。
ロレア達の見舞いを兼ねて、襲撃された当事者の話を聞きにきたそうだ。
「エス達もいたのは都合がいい。襲撃の件について、少し話をしたい」
「オーケー!」
「分かりました」
デルバートの言葉に頷くエスとロレア。
そんなわけで、30分ほど話をする流れになった。
「――なるほど。たしかによく分からんな」
皆の話を聞いたデルバートは、神妙な顔で呟く。
話を整理して導き出された推論は、敵の目的が調査の妨害であるということ。
殺し自体が目的ではないので、ロレアとエンザが青毒を受けた時点で目的は達された。
エス達の前からすぐに逃走したのは、調査の妨害よりも正体がバレないことを優先した結果だと考えられる。
ただ結局のところ、肝心なことは何も分からない。
妨害の先にある目的も、相手の正体も全くの不明だ。
ひとまず、ロレア達の護衛として数人の冒険者を【朝露】に常駐させ、調査依頼を受けている他の冒険者達にも注意を促すことが決まった。
また、エスとユゼリアについては予定通り調査を続行する。
このタイミングで狙われた以上、まだ何か隠されている可能性が高い。
「じゃあ、俺達はこのまま調査に行くよ」
「ああ……くれぐれも気を付けろよ?」
【朝露】をあとにしたエスとユゼリアは、同じく【朝露】を出たデルバートと連合の前で解散する。
そしてそのままロズベリーの門を抜け、再び森の調査に向かうのだった。
エスとユゼリアは、ロズベリーの医療系クラン【朝露】の応接室にいた。
ノックの音でエス達が目を覚ますと、眼鏡をかけた緑髪の男性が入ってくる。
【朝露】のクランリーダーであるベンだ。
「エスさん、ユゼリアさん。ロレアさん達が目を覚ましましたよ。状態は良好です」
「ほんと!?」
「よかったわ……!」
エスとユゼリアはほっと息をつく。
――時は遡り、昨晩のこと。
倒れたロレアとエンザを見たエスは、ラナとヴィルネに状況を尋ねた。
すると案の定、仮面の2人組に襲われたということらしい。
敵の数はエス達の時よりも少ないが、戦法は全く同じである。
後方のラナ達はナイフの攻撃を免れたが、前に出ていたロレアとエンザがナイフを受けてしまった。
事情を把握したエスは、ジャスティス1号に警戒を、遅れてやってきたユゼリアに応急処置を任せ、自身は連合へと向かった。
そこで職員から医療系クラン【朝露】の情報を聞き、ロレア達を運び込んだのだ。
【朝露】はそのメンバーの大半が薬師系の職業持ちで構成されており、毒を受けた人間の治療に強い。
ロレア達の容態を見たクランリーダーのベンは、エス達が言う前に瞬時に青毒であることを見抜き、適切な治療を施すと言った。
そうして、ジャスティス1号を送還後、応接室に泊まらせてもらうこと数時間。
ベンがやってきて、ロレア達の回復を伝えてくれたのだ。
「ベン、ありがとう!」
「ええ。青毒の治療は難しいのに、すごいわね!」
「いえいえ。今回はいろいろと好条件が重なりましたから」
エス達を病室に案内しながらベンは言う。
曰く、受けた毒の量がそれほど多くなかったこと、ユゼリアとヴィルネが応急処置の回復魔法をかけたこと、ロレアとエンザは実力のある冒険者で体が強かったこと等が幸いしたそうだ。
「さあ、どうぞ」
ベンはそう言って、病室のドアを開ける。
室内には複数のベッドが置かれていて、その内の2つにロレアとエンザが寝かされていた。
ベンが言うように状態は良好らしく、ベッド横に座ったラナ達と談笑している。
「ロレア! エンザ!」
「回復してよかったわ」
「エス、ユゼリアさん。この度はありがとうございました」
「おう、ラナ達から話は聞いてるぜ。ありがとよ」
エス達を見た2人がそう言うと、ラナとヴィルネも頭を下げる。
「改めて、2人とも本当にありがとねー」
「ふ、2人には助けられました」
「いいよ、気にしないで!」
「そうよ。い、一緒に邪獣を狩った仲なんだから!」
エスとユゼリアの言葉に、ロレア達は笑みを浮かべる。
それから、エス達の下へやってきたベンが、ロレアとエンザの状態について詳しく説明してくれた。
既に喋れる状態にはなっているものの、完全回復まではしばらく時間がかかるらしい。
というのも、青毒は治療後も影響が残りやすい毒で、場合によっては後遺症が残るのだそうだ。
今回は適切に処置できたため後遺症の心配はないが、少なくとも3~4日は安静にするべきだと言われた。
「――では、また後ほど参ります」
説明を終えたベンが部屋を出た後、ロレアが「はぁ」と溜め息を吐く。
「完全にやられましたね……数日で治るのは幸いですが……」
「ああ……アタシらが不甲斐ないばっかりに……」
同意したエンザが悔しそうな顔をする。
「しかし、相手は何がしたかったのでしょうか……命を狙うのが目的なら、追撃もできたはずですが……」
「ナイフがロレア達に当たったのを見て、すぐに逃走したんだっけ?」
「そう、目的は達したって感じだったよ」
エスの質問にラナが答える。
「なるほど……よく分からないなぁ」
「そうね……私達の時も失敗したとみるや逃走したし」
「そういえば、エスとユゼリアさんも襲われたのでしたね。ラナから聞きました。2人とも無事でよかったです」
ロレアはそう言って、顎に手を当てる。
「……エス達も襲われたとなると、明らかに調査依頼絡みですね」
「うん。ユゼリアとも――」
エスがそう言った時、病室のドアがノックされる。
話を中断してドアのほうを見ると、クランリーダーのベンがデルバートを連れて入ってきた。
「デルバート! なんでここに?」
「おう、エスか。【英霊の光】のパーティが襲撃されたという報告を受けてな。それに、エス達も襲われたと聞いている」
デルバートはエス達のほうへとやってきて、来訪の理由を説明する。
彼もエス達と同じく、報告の内容から調査絡みの事案だと判断したらしい。
ロレア達の見舞いを兼ねて、襲撃された当事者の話を聞きにきたそうだ。
「エス達もいたのは都合がいい。襲撃の件について、少し話をしたい」
「オーケー!」
「分かりました」
デルバートの言葉に頷くエスとロレア。
そんなわけで、30分ほど話をする流れになった。
「――なるほど。たしかによく分からんな」
皆の話を聞いたデルバートは、神妙な顔で呟く。
話を整理して導き出された推論は、敵の目的が調査の妨害であるということ。
殺し自体が目的ではないので、ロレアとエンザが青毒を受けた時点で目的は達された。
エス達の前からすぐに逃走したのは、調査の妨害よりも正体がバレないことを優先した結果だと考えられる。
ただ結局のところ、肝心なことは何も分からない。
妨害の先にある目的も、相手の正体も全くの不明だ。
ひとまず、ロレア達の護衛として数人の冒険者を【朝露】に常駐させ、調査依頼を受けている他の冒険者達にも注意を促すことが決まった。
また、エスとユゼリアについては予定通り調査を続行する。
このタイミングで狙われた以上、まだ何か隠されている可能性が高い。
「じゃあ、俺達はこのまま調査に行くよ」
「ああ……くれぐれも気を付けろよ?」
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