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「ああ、なるほどね。実家は難しいもんね」
とは言え、理由の大部分は華やかに死にたかっただけ。遠く離れた富士の樹海へヒッチハイクで向かい、道中の思い出を抱きながら死ぬ。何の起伏もない私の人生を、最後くらいはドラマチックに幕を締めたかった。
「それじゃあ今日は富士山の近くに泊まって、明日樹海に行くってことでいい?」
こくこくと頷く。
「決まりね。チェックアウトして朝ご飯食べよう」
軽快に返事をし、そろって身支度を始めた。けれども荷物の少ない私は着替えを済ませ、軽く部屋を片付けるだけ。あっという間に手持無沙汰になった。何かできることはないだろうか。
そんな私の視線の先、杏さんは黙々とメイクをこなしていく。高校生になってもすっぴんの私には、今何をしているのかも、メイク道具の名前すらもいまいち分からない。挑戦してみたいとは思うものの、自分なんかがという卑下にいつも好奇心が負けてしまう。
「あんちゃん」
デスク上に置かれた鏡に映る杏さんと目が合った。
「あんちゃんは化粧しないの?」
心を見透かされたような問いに、まばたきで返してしまった。
「コンタクトして化粧もしっかりやれば、あんちゃんすごくもてると思うよ」
「それは、そんな。私なんかが無理ですよ」
きらきらとした期待から目をそらす。今日もまた自分を卑下して逃げた。何も変わらないのは分かっていても、何かに挑戦する勇気はてんでない。
「それじゃあ私がやってあげる。おいで」
杏さんの手招き。こうなると逃げられない。けれども言い訳を並べてしまう。
「いや、そんな」
「とりあえずやってみようよ。駄目ならすぐ化粧落としてあげるから」
「あ、えと、はい」
引き寄せられるように椅子へと腰をかけた。鏡に映る杏さんは嬉しそう。私も正直、嫌な気はしない。いつかいつかと心の奥に仕舞っていた憧れ。それが今、目の前にある。
「それじゃあ早速始めるね。眼鏡取って、前髪もピンで留めようか」
眼鏡を外して頷くと、杏さんの手によって前髪がヘアピンで留められた。鏡に映る額をあらわにして座る私。分かりやすいほど緊張している。
「まずは、と」
杏さんがポーチからあれこれ取り出し、手の甲にクリームを出して塗ったりパウダーを付けたり。目の前で行われるメイクはやっぱり分からない。
けれど目の前の自分は徐々に変わっていく。どこかあか抜けたというか、血色がよくなったというか。気のせいかもしれない変化が今は嬉しかった。
「これでよし。どう? どう?」
背後で左右に体を揺らす杏さん。まるで自分のことのように嬉しそう。
「なんだか明るくなった気がします」
「そこはきれいになった、じゃないの?」
杏さんが頬を膨らませた。
「それは、どうですかね」
「きれいになってるよ。元がかわいいから、頑張ったらもっときれいになるかもね」
杏さんが言うのなら、多分、恐らく、きっとそうなるのかもしれない。今はまだ信じがたいけれど、自分の小さな可能性につい笑みを漏らした。たとえそれが意味のないものだと分かっていても。
再び自分のメイクへと戻った杏さんを視界に入れつつ、部屋を見渡した。ベッドは軽く整えられ、ナイトテーブル上に忘れ物もない。ごみはビニール袋に入れてまとめ、あとは杏さんのキャリーケースさえ片付けるだけ。
ぱっくりと開かれたワインレッドのキャリーケース。その中に仕舞われた着替えに何気なく目が止まった。確か杏さんも私と同じで、二日分の着替えしか持っていないはず。今のうちに洗濯しておいた方がいいだろう。ちょうど同じ階にランドリーもあることだし。
「あの、杏さん」
「んー?」
鏡越しに杏さんと目が合う。
「今のうちに昨日の分、洗濯してきていいですか?」
「あー、今何時?」
「九時前です」
「チェックアウトが十一時だから……そうだね。今のうちに行った方がいいかも」
「手が空いたので私がランドリーに行ってきますね。杏さんのも持っていきますよ」
「いいの? ちょっと待って」
杏さんがメイク道具を置き、ビニール袋片手に着替えを詰めだした。私も袋にまとめよう。下着は入れるとして、今履いているカーゴパンツの汚れもしっかり見ておこう。昨日の穴掘りで土が付いていなければいいけれど。
「それじゃあお願いね。お金渡すから、ついでに飲み物も買っていいよ」
洗濯物の入ったビニール袋と小銭入れを受け取った。
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
部屋を後にし、ランドリーへ歩みを進める。ランドリー自体は何回か利用したことがわるけれど、ホテルも同じものだろうか。小さな不安を抱えながらランドリー室へたどり着くと、見慣れた機械が鎮座していた。よかった。これなら使える。
ちょうど空いていた洗濯乾燥機を開けてビニール袋をひっくり返し、小銭を入れて踵を返した。四十五分か。チェックアウトには余裕で間に合うけれど、それまで何をしよう。
来た道をなぞり、ドアをノックすればすぐに杏さんが開けてくれた。
「おかえり。どうだった?」
「四十五分後に終わるそうです。お釣り、置いておきますね」
「ありがとう。あんちゃんさ、朝ご飯をコンビニで適当に買って食べるってのはどうかな。今日ちょっと忙しいし」
杏さんが申し訳なさそうに目を床にやった。
「大丈夫ですよ。今買って来ましょうか?」
「いいの? でも、ランドリーも行ってもらったから悪いよ」
と言いつつも杏さんの目は泳ぎっぱなし。表情と言動が嚙み合っていない。本心が垣間見えてつい笑ってしまった。朝はいろいろ忙しいだろうし、暇人が動くのは当然のこと。それに杏さんには多大なる恩がある。少しずつ返していかなければ。
「乗せてもらっているので、これぐらいはさせてください。朝ご飯、何がいいですか?」
「そこまで言うなら、お願いしようかな。えっと、パンもいいけどおにぎりも食べたいし、朝から揚げ物もいってみたいかな」
手を止め唸りだした。じっと見つめていると杏さんが何か閃いたように目を見開いた。
「あんちゃんのおすすめで。あ、トマトは選んじゃ駄目だからね」
にっと笑う姿にたじろいだ。
「あんまり考え込まなくていいからね。適当においしくてあっさりしていてもう一度食べたいって思えるやつでいいから」
「あの、ハードル上がってませんか?」
「気のせい気のせい。ほら、ゆっくりでいいから選んできて」
急かす杏さんにお金を渡され部屋を出た。
パンかおにぎりか揚げ物か。それに飲み物も必要になる。無限とも思える組み合わせに頭を悩ませるも、チョコレートを添えればなんとかなると再び部屋を出た。そう楽観的に考えられる自分が、なぜか誇らしかった。
とは言え、理由の大部分は華やかに死にたかっただけ。遠く離れた富士の樹海へヒッチハイクで向かい、道中の思い出を抱きながら死ぬ。何の起伏もない私の人生を、最後くらいはドラマチックに幕を締めたかった。
「それじゃあ今日は富士山の近くに泊まって、明日樹海に行くってことでいい?」
こくこくと頷く。
「決まりね。チェックアウトして朝ご飯食べよう」
軽快に返事をし、そろって身支度を始めた。けれども荷物の少ない私は着替えを済ませ、軽く部屋を片付けるだけ。あっという間に手持無沙汰になった。何かできることはないだろうか。
そんな私の視線の先、杏さんは黙々とメイクをこなしていく。高校生になってもすっぴんの私には、今何をしているのかも、メイク道具の名前すらもいまいち分からない。挑戦してみたいとは思うものの、自分なんかがという卑下にいつも好奇心が負けてしまう。
「あんちゃん」
デスク上に置かれた鏡に映る杏さんと目が合った。
「あんちゃんは化粧しないの?」
心を見透かされたような問いに、まばたきで返してしまった。
「コンタクトして化粧もしっかりやれば、あんちゃんすごくもてると思うよ」
「それは、そんな。私なんかが無理ですよ」
きらきらとした期待から目をそらす。今日もまた自分を卑下して逃げた。何も変わらないのは分かっていても、何かに挑戦する勇気はてんでない。
「それじゃあ私がやってあげる。おいで」
杏さんの手招き。こうなると逃げられない。けれども言い訳を並べてしまう。
「いや、そんな」
「とりあえずやってみようよ。駄目ならすぐ化粧落としてあげるから」
「あ、えと、はい」
引き寄せられるように椅子へと腰をかけた。鏡に映る杏さんは嬉しそう。私も正直、嫌な気はしない。いつかいつかと心の奥に仕舞っていた憧れ。それが今、目の前にある。
「それじゃあ早速始めるね。眼鏡取って、前髪もピンで留めようか」
眼鏡を外して頷くと、杏さんの手によって前髪がヘアピンで留められた。鏡に映る額をあらわにして座る私。分かりやすいほど緊張している。
「まずは、と」
杏さんがポーチからあれこれ取り出し、手の甲にクリームを出して塗ったりパウダーを付けたり。目の前で行われるメイクはやっぱり分からない。
けれど目の前の自分は徐々に変わっていく。どこかあか抜けたというか、血色がよくなったというか。気のせいかもしれない変化が今は嬉しかった。
「これでよし。どう? どう?」
背後で左右に体を揺らす杏さん。まるで自分のことのように嬉しそう。
「なんだか明るくなった気がします」
「そこはきれいになった、じゃないの?」
杏さんが頬を膨らませた。
「それは、どうですかね」
「きれいになってるよ。元がかわいいから、頑張ったらもっときれいになるかもね」
杏さんが言うのなら、多分、恐らく、きっとそうなるのかもしれない。今はまだ信じがたいけれど、自分の小さな可能性につい笑みを漏らした。たとえそれが意味のないものだと分かっていても。
再び自分のメイクへと戻った杏さんを視界に入れつつ、部屋を見渡した。ベッドは軽く整えられ、ナイトテーブル上に忘れ物もない。ごみはビニール袋に入れてまとめ、あとは杏さんのキャリーケースさえ片付けるだけ。
ぱっくりと開かれたワインレッドのキャリーケース。その中に仕舞われた着替えに何気なく目が止まった。確か杏さんも私と同じで、二日分の着替えしか持っていないはず。今のうちに洗濯しておいた方がいいだろう。ちょうど同じ階にランドリーもあることだし。
「あの、杏さん」
「んー?」
鏡越しに杏さんと目が合う。
「今のうちに昨日の分、洗濯してきていいですか?」
「あー、今何時?」
「九時前です」
「チェックアウトが十一時だから……そうだね。今のうちに行った方がいいかも」
「手が空いたので私がランドリーに行ってきますね。杏さんのも持っていきますよ」
「いいの? ちょっと待って」
杏さんがメイク道具を置き、ビニール袋片手に着替えを詰めだした。私も袋にまとめよう。下着は入れるとして、今履いているカーゴパンツの汚れもしっかり見ておこう。昨日の穴掘りで土が付いていなければいいけれど。
「それじゃあお願いね。お金渡すから、ついでに飲み物も買っていいよ」
洗濯物の入ったビニール袋と小銭入れを受け取った。
「それじゃあ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
部屋を後にし、ランドリーへ歩みを進める。ランドリー自体は何回か利用したことがわるけれど、ホテルも同じものだろうか。小さな不安を抱えながらランドリー室へたどり着くと、見慣れた機械が鎮座していた。よかった。これなら使える。
ちょうど空いていた洗濯乾燥機を開けてビニール袋をひっくり返し、小銭を入れて踵を返した。四十五分か。チェックアウトには余裕で間に合うけれど、それまで何をしよう。
来た道をなぞり、ドアをノックすればすぐに杏さんが開けてくれた。
「おかえり。どうだった?」
「四十五分後に終わるそうです。お釣り、置いておきますね」
「ありがとう。あんちゃんさ、朝ご飯をコンビニで適当に買って食べるってのはどうかな。今日ちょっと忙しいし」
杏さんが申し訳なさそうに目を床にやった。
「大丈夫ですよ。今買って来ましょうか?」
「いいの? でも、ランドリーも行ってもらったから悪いよ」
と言いつつも杏さんの目は泳ぎっぱなし。表情と言動が嚙み合っていない。本心が垣間見えてつい笑ってしまった。朝はいろいろ忙しいだろうし、暇人が動くのは当然のこと。それに杏さんには多大なる恩がある。少しずつ返していかなければ。
「乗せてもらっているので、これぐらいはさせてください。朝ご飯、何がいいですか?」
「そこまで言うなら、お願いしようかな。えっと、パンもいいけどおにぎりも食べたいし、朝から揚げ物もいってみたいかな」
手を止め唸りだした。じっと見つめていると杏さんが何か閃いたように目を見開いた。
「あんちゃんのおすすめで。あ、トマトは選んじゃ駄目だからね」
にっと笑う姿にたじろいだ。
「あんまり考え込まなくていいからね。適当においしくてあっさりしていてもう一度食べたいって思えるやつでいいから」
「あの、ハードル上がってませんか?」
「気のせい気のせい。ほら、ゆっくりでいいから選んできて」
急かす杏さんにお金を渡され部屋を出た。
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