カエルな私とアホの魔法使い

Tsumitake

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第一章

カエルになった私

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「大丈夫!解き方は簡単!」

(なら早く解け。)

薄い瞼の幅を拡げて、出来る限りジト目にして見せる。

「解くのは君だよ。」

空気は読めないけどカエルの考えてる事は読めるらしい。

「君が僕を本気で好きになってキスしたら戻るんだ!」

え、無理。

「ロマンチックでしょ。」

喜々とした表情で語りかける魔法使い:だいちさん。
どうやらカエルの考えすら読めなかったようだ。

「他にないの?」

身振り手振りが伝わったのか、カエルの言葉がわかるのか、魔法使いには伝わってはいるようだ。

「ないね!」

即答…。

「無理なハズはないけど、万が一には僕もカエルになってあげる!」

(『あげる』ってなんだ!元はと言えばお前が…!)

ひっぱたいてやろうと手足をビチビチばたつかせるが、届くわけがない。
ちょっと首の辺りの皮が痛いし。指熱いんだけど…。

「よし!とりあえずそこの駄菓子屋で虫かご買う!」
「!?」

コイツ最悪!
女の子カエルにした挙句150円の虫かごに入れて飼うつもりだ…っ!
私が目を丸くしているのも全く気にかけない様子で嬉しそうに虫かごを買いに向かう魔法使い。

(さて…どうしよう?)

さっきまで歩いていたコンクリートの床が高いビルから見下ろしたみたいに離れている。
私の喉がこれから実行しようとしている事への緊張で、いつもよりだいぶゆっくりと上下した。
魔法使いが手のひらに私を置いた。その瞬間…

ぴょんっ

いや、実際はなんかひちゃっとかいう小さな音でしたが…と共に私はひらりと…はいかず、べちゃっと地面に着地。

「あっ!」

魔法使いが短い声をあげる中、私は走…飛び跳ね去る…?
思ったよりカエルって跳ぶものらしい。
早速草むらが見えてきた。

(これで逃げられる!)

とかチラッと頭を過ぎった辺りで、視界全面が肌色になって、私はTHE ENDを悟った。

「んー…、どうやら僕、君に嫌われてるようだね…?」

今ごろ気付いたか。


ーーーーー


「おかしいな…魔女が惚れない事はなかったのに。」

魔女は思ったよりどMな生き物だったようだ。
もしくはコイツのアホさを可愛いと思えるだけの大人な女性か。わぁー、無理。

「普通の人間って難しいみたいだね。」

真顔で種族の違いに責任転嫁。やはり彼は余程の自信家。
魔法使いとしてはいい感じなのかもしれない。
人間としては色々なってないけども。

足にぶつかるたびにガランゴロン鳴る値上がりしていて450円だった虫かごに揺られながら考えを巡らせる。
プラスチックの中から見た見慣れた町はちょっと前よりくすんで見えた。

「どうしたら好きになってもらえるかなー。」

隣のぶつくさ言ってるアホを…好きに………いや、ホント無理。
確かに私はぐだぐだしてるさ。
でも理想は知的で真面目な、よくつまらないとか言われてるような地味な…

「え…?君、ちょっと待って…!」

思い浮かべた瞬間、上記の理想の人の声がした。
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