ダブルヒーロー

Tsumitake

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最初の敵

黒魔術

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「ゆず!防具出来たよ!
 まだ素材が足りないから
 あんまり良いのじゃないって言ってたけど、
 制服よりは良いはず!」

張り切った様子の雛乃が図書室を訪れた時、窓の外はもう真っ暗だった。

「おかえり、ひな。」
「あれ、メガネ?」

街にあった在庫の中から機能性重視で見繕ってきたビン底眼鏡のつるを指で押し上げながら、うんざりした表情で譲が呟いた。

「うん。女神のヤツ…視力良くしとけよな。」

譲は元々メガネキャラだった。
転生後は視力が良くなっているんだろうと思っていたが、実はあまり良く見えていなかったらしい。

そう思うとよく見えないままボス戦に挑んだり、いの一番に元主人公狩りをしたり、度胸は勿論、スキル的にも並の才能ではないと感じる。

「…何で黒魔術の本なんて読んでるの?」
「敵の事を知るには
 黒魔術を知っておいた方がいいから。」
「なんだ、そっか。
 てっきり使うつもりなのかと思った!」

ははっと笑う雛乃に、譲はつられて微笑みながら

「勿論使うよ。
 その為に読んでるっていうのもあるんだから。」
「え、どれを?」
「コレ。」

譲が指差したのは『属性強化・属性付与等』のページ。

「ドリアードの属性を火に変えて叩こうと思ったんだけど、
 持っている属性を丸々変化させる事は出来ないらしい。」
「いや、ちょっと待って、
 ドリアードはオレが倒したいんだけど!」

譲の発言から、明らかに自分で倒そうとしている事を理解して雛乃が食い気味に反論する。

「欠点を補い合う為にバディ制なんだから…」
「そんな女神が考えた制度なんか知らないよ。
 朝に典明も言ってたじゃん、雛乃は守られるべき女の子だって。」

その時点から起きてたのか。と小さく驚いたが、

「今は男だよ!」

と即座に切り返す。
すると、それまで冷静な表情だった譲が、僅かに苛立ったように眉を顰めた。

「今はね。でも、いずれ女の子に戻るんだ。雛乃は強くならなくていい。
 誰もそんな事期待してない。」

自分に対して譲が全く期待していなかった。
必要とされていない。
今まで意気込んで頑張っていた分、ショックで言葉を失った雛乃を置いて、譲は図書室を出て行った。

何か言い返したかったのに、咄嗟には何も出て来なかった不甲斐無さに唇を噛む。
言い捨てるんじゃなくて、返事を待って欲しかった。

「…私がそう言われて、どう思うかすら、興味がないんだ。」

一人称がまた私になっている事にすら気が付かないまま、雛乃は呆然として勝手に流れ落ちた涙を見つめていた。
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