4 / 19
【4話】褒められるのも悪くない
しおりを挟む
翌日。
レティスはティオールと一緒に家事をすることになった。
言いなりになるのは負けた気がして悔しいが、家主の意向に逆らう訳にはいかない。
反感を買って家を追い出されてしまうのはマズい。ここは言うことを聞くしかなかった。
「まずは掃除からだな。いいかレティス。ホウキは軽く持つんだ。そっとだ。決して、力を入れすぎてはいけないよ」
「そんなに言われなくたってわかってるわよ!」
唇を尖らしたレティスはホウキの持ち手をそっと握る。
昨日よりもずっと力を落としていた。
「そうしたら、床の隅から優しく掃いていくんだ」
ティオールに言われた通り、部屋の角から掃いていく。
ここでも力をこめずに、優しくやってみた。
「いいぞ。その調子だ!」
隣で見ているティオールから明るい声が飛んでくる。
個人的にはもっと力を入れた方がいい気もするのだが、反応からしてこれでいいらしい。
掃き掃除が終わった。
今度は拭き掃除だ。
「まずは俺が手本を見せる」
雑巾を持ったティオールが、窓ガラスを拭いていく。
隅から隅まで丁寧に、そして優しく手を動かしていた。
「こんなもんだな。次はレティスがやってみてくれ。今の俺と同じようにやるんだ」
頷いたレティスは、雑巾を手に持った。
ティオールの動きと同じようにして、隣の窓を拭いていく。
その動きは、ティオールとまったく同じ。
寸分たがわず、少しの狂いもない。
真似というよりも、それよりもはるかに上。
完全なるコピーだ。
それは、レティスだからこそなせる技だった。
一度見ただけで相手の動きを完全再現できる――それが生まれ持ったレティスの才能だった。
「おぉ……!」
ティオールが感嘆の声を上げる。
動きを完全にコピーしているレティスの動きに、大層感心していた。
「一度見ただけでここまで完璧に再現するなんて……君はすごい能力を持っているね!」
ティオールの金色の瞳がキラキラと輝いた。
レティスは無言。
こういうとき、どういう反応していいのかがわからなかった。
だから知らんぷりをして、雑巾を持つ手を動かし続けた。
すべての窓をふき終えた。
次は料理だ。
テープルの上を見れば、じゃがいも、にんじん、鶏肉が乗っていた。
「これが今から使う食材?」
「あぁ。シチューを作ろうと思う。まずは野菜の皮むきだからだ。やり方を見ていてくれ」
料理作りも、さきほどの窓ふきと同じ手順で進んでいく。
ティオールが手本を見せた後に、レティスがそれを実践するというやり方だ。
料理作りはトラブルもなく、順調に進んでいった。
「完成だ!」
シチューが完成した。
牛乳の白色が鮮やかだ。
おいしそうな見た目をしている。
「さっそく食べよう!」
皿によそったシチューを持った二人は、テーブルに向かい合って座った。
レティスはスプーンを手に持つ。
シチューを少しすくって、口に入れた。
「……おいしい」
思わず声が漏れる
こんなにもおいしい料理を食べたのは、これが初めてだった。
ティオールと一緒に作った料理は、自分でもびっくりするくらいのできばえとなっていた。
「ものすごくおいしいよ!」
立ち上がったティオールがレティスへ手を伸ばした。
レティスの頭を優しく撫でる。
「掃除も料理も完璧だ。よくできました。これからもよろしく頼むね」
にこやかに笑って手を動かすティオールを、レティスはぼーっと見ていた。
(仕事以外で褒められるなんて、これが初めてね)
これまでにも褒められたこと自体は数回あった。
難しい任務をこなすと、漆黒の影のリーダーが褒めてくれた。
でも褒められたところで、レティスはなにも感じなかった。
けど、今は違う。
こうして褒められ頭を撫でられると、温かい気持ちが湧いてくる。
なぜだろうか。
理由はわからないが、悪い気分ではなかった。
レティスはティオールと一緒に家事をすることになった。
言いなりになるのは負けた気がして悔しいが、家主の意向に逆らう訳にはいかない。
反感を買って家を追い出されてしまうのはマズい。ここは言うことを聞くしかなかった。
「まずは掃除からだな。いいかレティス。ホウキは軽く持つんだ。そっとだ。決して、力を入れすぎてはいけないよ」
「そんなに言われなくたってわかってるわよ!」
唇を尖らしたレティスはホウキの持ち手をそっと握る。
昨日よりもずっと力を落としていた。
「そうしたら、床の隅から優しく掃いていくんだ」
ティオールに言われた通り、部屋の角から掃いていく。
ここでも力をこめずに、優しくやってみた。
「いいぞ。その調子だ!」
隣で見ているティオールから明るい声が飛んでくる。
個人的にはもっと力を入れた方がいい気もするのだが、反応からしてこれでいいらしい。
掃き掃除が終わった。
今度は拭き掃除だ。
「まずは俺が手本を見せる」
雑巾を持ったティオールが、窓ガラスを拭いていく。
隅から隅まで丁寧に、そして優しく手を動かしていた。
「こんなもんだな。次はレティスがやってみてくれ。今の俺と同じようにやるんだ」
頷いたレティスは、雑巾を手に持った。
ティオールの動きと同じようにして、隣の窓を拭いていく。
その動きは、ティオールとまったく同じ。
寸分たがわず、少しの狂いもない。
真似というよりも、それよりもはるかに上。
完全なるコピーだ。
それは、レティスだからこそなせる技だった。
一度見ただけで相手の動きを完全再現できる――それが生まれ持ったレティスの才能だった。
「おぉ……!」
ティオールが感嘆の声を上げる。
動きを完全にコピーしているレティスの動きに、大層感心していた。
「一度見ただけでここまで完璧に再現するなんて……君はすごい能力を持っているね!」
ティオールの金色の瞳がキラキラと輝いた。
レティスは無言。
こういうとき、どういう反応していいのかがわからなかった。
だから知らんぷりをして、雑巾を持つ手を動かし続けた。
すべての窓をふき終えた。
次は料理だ。
テープルの上を見れば、じゃがいも、にんじん、鶏肉が乗っていた。
「これが今から使う食材?」
「あぁ。シチューを作ろうと思う。まずは野菜の皮むきだからだ。やり方を見ていてくれ」
料理作りも、さきほどの窓ふきと同じ手順で進んでいく。
ティオールが手本を見せた後に、レティスがそれを実践するというやり方だ。
料理作りはトラブルもなく、順調に進んでいった。
「完成だ!」
シチューが完成した。
牛乳の白色が鮮やかだ。
おいしそうな見た目をしている。
「さっそく食べよう!」
皿によそったシチューを持った二人は、テーブルに向かい合って座った。
レティスはスプーンを手に持つ。
シチューを少しすくって、口に入れた。
「……おいしい」
思わず声が漏れる
こんなにもおいしい料理を食べたのは、これが初めてだった。
ティオールと一緒に作った料理は、自分でもびっくりするくらいのできばえとなっていた。
「ものすごくおいしいよ!」
立ち上がったティオールがレティスへ手を伸ばした。
レティスの頭を優しく撫でる。
「掃除も料理も完璧だ。よくできました。これからもよろしく頼むね」
にこやかに笑って手を動かすティオールを、レティスはぼーっと見ていた。
(仕事以外で褒められるなんて、これが初めてね)
これまでにも褒められたこと自体は数回あった。
難しい任務をこなすと、漆黒の影のリーダーが褒めてくれた。
でも褒められたところで、レティスはなにも感じなかった。
けど、今は違う。
こうして褒められ頭を撫でられると、温かい気持ちが湧いてくる。
なぜだろうか。
理由はわからないが、悪い気分ではなかった。
35
あなたにおすすめの小説
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します
ちより
恋愛
侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。
愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。
頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。
公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。
薫る袖の追憶を捨て、月光の君に溺愛される
あとりえむ
恋愛
名門の姫君・茜は、夫の高彬に蔑まれ、寂れた離れで孤独な死を迎えた……
けれど意識が途切れた瞬間、視界を埋め尽くしたのは命を削って輝く緋色の夕映え。
目が覚めると、そこは高彬との婚約が決まったばかりの十五歳の春に戻っていた。
「二度目の人生では、誰のことも愛さず、ただあの方の幸せだけを願おう」
茜は、かつて自身の孤独を救ってくれた「最推し」の東宮・暁を、未来の知識で密かに支えることを決意する。
執着を捨て、元夫に無関心を貫く茜。
一方、高彬は自分に興味を失った茜の価値に気づき、今更遅い後悔に狂い始めるが……。
「見つけた。お前は俺の、運命の番だ」
正体を隠して東宮を支えていたはずが、冷徹な暁に見出され、逃げ場のないほどの執着と溺愛を注がれることに。
平安の雅な風情の中で描かれる、逆転と救済の物語。
最後は、二人が永遠の契りを交わす和歌で幕を閉じます。
前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます
由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。
だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。
そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。
二度目の人生。
沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。
ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。
「今世は静かに生きられればそれでいい」
そう思っていたのに――
奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。
さらにある日。
皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。
「沈薬は俺の妃だった」
だが沈薬は微笑んで言う。
「殿下、私は静王妃です」
今の関係は――
皇叔母様。
前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。
それを静かに守る静王。
宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
「妹の方が可愛い」と不倫夫に捨てられた私。どうぞ借金まみれの実家ごと引き取って。私が肩代わりしていた負債、すべてお二人に引き継いでおきました
唯崎りいち
恋愛
「お前より妹の方が可愛い」
不倫した夫は私を追い出し、略奪した妹と笑った。
どうぞ、その「可愛い妹」と地獄までお幸せに。
私が肩代わりしていた実家と店の多額の借金、すべてお二人に引き継いでおきましたから。
「財布」を失った元夫と、逃げ場を失った妹。
身の丈に合わない贅沢を望んだ寄生虫たちの、惨めな末路を特等席で眺めさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる