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【6話】キノコ採り
しおりを挟むフィードを紹介したあと、ティオールはいつものように仕事に出かけていった。
レティスも新たな仕事であるキノコ採取へ出かける。
フィードと横並びになって、森の中を歩いていく。
森を歩くレティスの視線は前でなく横。
気高い足取りで歩くフィードをじっと見ていた。
「先ほどから我をじっと見ているようだが、どうしたのだ?」
「いや、その……柔らかそうだなって」
「うん?」
「あなたの銀色の毛が柔らかそうだなって、そう思ったのよ」
フィードの銀色の毛並みはふわふわしている。
きっと触ったら、気持ちいいことこのうえないだろう。
もふもふしてみたいという気持ちが湧き上がってくる。
人間の本能とでもいうべきそれに、レティスは逆らえなかった。
「……触ってみるか?」
戸惑いながらもそう言ってくれたフィードに、レティスは大喜びで頷く。
すぐさま抱き着くいて、おもいっきり顔を押し当てた。
「ふわふわだわ!」
思っていた通り、毛並みはふわふわ。
ものすごく柔らかい。
それと同時に、両腕をいっぱいに広げて全身を撫でる。
これでもというくらいに。
「さいっっっこう!!」
これもまた気持ちいい。
ずっとこうしていられる。
「……我の体はそんなにもいいものか?」
「えぇ、とっても最高よ!」
「ふむ……そうなのか。こんなことをするのは、そなたが初めてだからな」
「え!? ティオールはもふもふしたことないの!」
「あぁ。あやつにされたことはないな」
「ありえないわ!」
なんてもったいないのだろうか。
家に帰ったらおもいっきり自慢してあげよう。
「くすぐったいが、悪くはない感触だ」
フィードの声は少し楽し気に弾んでいた。
「乗ってみるか?」
「うん!」
ありがたい申し出だ。
断る理由なんてあるはずもない。
大興奮で二つ返事をしたレティスは、大きな背中の上に乗った。
「振り落とされないよう、しっかり掴まっているんだぞ」
フィードが地面を蹴った。
森の中をびゅーんと駆けていく。
「はやーい!」
レティスは大はしゃぎ。
馬なんかよりもずっと速い。
こんなに早い乗り物に乗ったのは初めてだ。楽しすぎる。
レティスを乗せたフィードは、その後しばらく森中を駆け回ってくれた。
いつまでもそうしていたかったが、遊んでいるばかりではいけない。
ここへは食材調達にきた。
頼まれた仕事は果たさないといけない。
フィードから降りたレティスは、キノコ採取を行っていく。
「ねぇ、フィード。あそこに生えてるヤツは食べられるの? とってもおいしそうだけど」
「あれは毒キノコだ。口にしたら数日の間、酷い腹痛に襲われることになるぞ」
「危ない。見た目に騙されるところだったわ」
レティスはホッと安堵。
キノコに詳しいフィードがいてよかった。
そんな会話をしながら、キノコを採取していく。
もふもふしたことと背中に乗って走り回ったことで、フィードとはすっかり打ち解けていた。
「そういえば、そなたはこの森で瀕死の重傷を負っていたそうだな」
「えぇ。そこをティオールに助けられたの」
「……お人好しのあやつらしいエピソードだな」
フィードがフッと笑う。
楽しそうな笑みだ。
「ティオールとあなたって長いの?」
「初めて会ってから、もう五年ほどになるな。そなたは、アズーリ王国を知っているか?」
「えぇ」
アズーリ王国は、世界でもっとも魔法が発展している国だ。
腕利きの魔術師が数多く暮らしていると聞く。
「我とティオールはそこで出会ったのだ。当時のあやつは、アズーリ王国最強の魔術師と呼ばれていた」
(ただ者じゃないと思っていたけど、まさかそこまでとはね)
数多くの腕利きの魔術師の中が暮らしている国で、最強。
それはつまり、ティオールの実力は計り知れないほど高いということだ。
「あれ? じゃあどうしてティオールはアズーリ王国を離れたの?」
最強の魔術師ともなれば、国から手厚い待遇を受けていただろう。
いい暮らしをしていたはずだ。
それなのにどうして国を離れて、こんな森の中で暮らしているのだろうか。
どうにも納得がいかない。
「それは――」
言いかけたところで、フィードは首を横に振った。
「我が話すことではない」
フィートが遠くを見つめる。
その瞳は悲しみの色を帯びていた。
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