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【15話】気になる関係
しおりを挟むレティスはグドラの森の中を歩いている。
食材調達にきていた。
その隣にはフィードがいる。
「ねぇフィード。ティオールってアズーリ王国にいたときは、女の人と付き合っていたの?」
バテランの公園でのファーストキス未遂から二週間。
ティオールへの気持ちを自覚したレティスは、以前よりも強くティオールのことを意識するようになってしまった。
でも、ティオールは違う。
普段と変わらない態度で接してくる。
ティオールも私のことを好きだと思っていたけど、それは勘違いかもしれない――なんて。
最近のレティスはそんなことを考えるようになっていた。
すっかり恋する乙女だ。
過去に付き合っていた人がいてその人が忘れられない――とかであればレティスはめちゃくちゃ不利。
事前に確かめておく必要があった。
「どうしてそんなことを気にするのだ?」
「別になんだっていいでしょ。教えてよ」
フィードは怪訝な顔をしてから、ため息をつく。
ゆっくりと口を開いた。
「整った容姿に、比類なき魔法の力。あやつに声をかける女性は、それはもう多かった」
「モテモテだったってことね」
「そうだ。しかしティオールは、まったく相手にしていなかったな」
「へぇ……そ、そうなのね」
(よっしゃー!!)
そしらぬ顔をするレティス。
しかし心の中では特大の歓喜の声を上げていた。
「ちなみに今はいるの?」
「今もいないはずだが――あ」
フィードがハッとする。
「昨日あやつとバテランに行ったとき、花屋の若い娘と楽しそうに会話をしていたな。確か、『また明日』とか言っておった」
「…………行くわよ、フィード」
「どこにだ?」
「決まってるでしょ! 花屋のところへよ!」
強く踏みこんだレティスは、拳をグッと握った。
真相を確かめねばならない。
青色の瞳にはメラメラと炎が燃えたぎっていた。
認識改変のメガネをかけたレティスは、バテランへ向かった。
物陰に身をひそめながら、花屋をじっと見つめる。
そんな彼女のすぐ横には、フェンリルのフィードもいた。
「神獣たる我が、なぜこのようなことを……」
「いいじゃない。付き合ってよ――あ、来たわよ」
花屋にティオールがやってきた。
店先に出てきたのは、金髪の若い女性店員だ。
愛嬌たっぷりでスタイル抜群。
かなりモテそうな風貌をしている。
「あの娘だな」
女性店員は楽しそうにティオールと話をしている。
その瞳はうっとりとしていて、大きなハートマークが浮かんでいた。
「泥棒猫め……!」
唇を噛んだレティスは無意識に横へ手を伸ばし、グシャッ!
フィードの体毛を強く握る。
「痛い痛い!」
隣から叫び声が上がる。
しかし怒りに震えているレティスの耳には、いっさい入ってこなかった。
「昨日言ったものは用意してくれたかな?」
「はい。もちろんです」
ニコリと笑った泥棒猫は、ティオールへ花を手渡した。
黄色のカーネーションだ。
「ありがとう」
「あの……ティオールさん」
もじもじした泥棒猫は、上目遣いでティオールを見上げた。
「今晩お食事でもいかかですか?」
「あの女……!」
レティスの怒りのボルテージはさらに上昇。
フィードの体毛を掴む力も、それに併せて強くなる。
「すまない。誘ってくれるのは嬉しいけど、それには応えられないんだ」
申し訳なさそうに言ってから、ティオールは花屋から去っていった。
「よかったな」
そう口にしたフィードの声色は、いつもより荒い。
それになぜか体毛もぐしゃっとしている。
いったいどうしたのだろうか。
「これで気が済んだだろう。森へ帰るぞ」
「なに言ってるのよ。まだ終わりじゃないわ。追いかけるわよ」
「おかしなことを言っているのはそなたの方だ。花屋の店員とはなんでもなかった。これでもうティオールへの疑いは晴れただろう」
「まだよ。カーネーションを持って、女の人のところへ行くかもしれないわ」
カーネーションの行方を突き止めるまでは終われない。
真実を確かめなければならない。
「……まったく。世話が焼ける」
フィードは呆れ顔でため息をついた。
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