【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空

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【10話】一週間ぶりの再会


 こちらへ歩いてきたジオルトは、間に食卓テーブルを挟んでエレナの正面へ立った。
 威厳たっぷりにエレナを見下ろす。
 
(お、怒っているのかしら……?)

 睨まれている訳でも怒っている雰囲気も出ていないのだが、すさまじい威厳についそう感じてしまう。
 
「娘たちとずいぶん仲良くなったのだな」
「……色々とありまして」
「らしいな。イザベルから簡単に報告は受けている。なんでも教育係になったそうではないか?」
「はい。勝手な振る舞いをしてしまい申し訳ござません」
「別に責めているわけでは――いや、詳しい話は後にしよう。今は夕食の時間だ」

 ジオルトがエレナの対面の席へ座ると、すぐに彼の分の食事が運ばれてきた。
 
 解放されたことで、エレナはほっとひと息。
 別に怒られていた訳ではないのだが、すごく緊張した。助かった気分だ。
 
 四人揃っての初めての食事が始まる……が。
 
(……バランスが悪いわね)

 始まってすぐ、エレナはそんなことを思った。
 
 こちらの列は三人。
 対して、向かいの列はジオルトひとりだけ。
 
 せっかく四人いるのだ。
 ここは両列に二人ずつにした方が、バランスがいいのではないだろうか。

 そう思ったのはバランスのことを考えてというのもあるが、それだけではない。
 食事が始まってからずっと、ジオルトの視線を感じるのだ。
 
 じとりとしたその目線は、ものすごく羨まし気。
 俺も娘たちを隣に座らせたい、という激しい自己主張を感じる。
 
 悪いことはしていないのに、そんな目で見られると罪悪感がものすごい。
 
(ここは双子のうちのどちらかを、ジオルト様の隣に座らせるしかないわね)
 
 本音を言えばどちらもあげたくないのだが、罪悪感に耐えられそうにない。
 仕方なく、そんな決断を下す。
 
「せっかくジオルト様もいるんだし、どっちかお父さんの隣へ移動しようか?」

 両隣の双子へ呼びかける。
 
 しかし双子は、両方とも動こうとしなかった。
 じーっと視線を交わし、火花を散らしている。

(そんなにジオルト様の隣が嫌なのかしら……)

 父と娘たちの仲は、あんまりよろしくないみたいだ。

「アクアが行きなさいよ」
「……やだ。私はここがいい」

 二人とも譲る気ない。
 居座る気だ。
 
 そう言ってくるのはエレナとしては嬉しい限りなのだが、状況的にはよくない。
 娘に拒否られてしまったジオルトからすれば、悲しい以外のなにものでもないはず。
 
(ほら、やっぱり)
 
 ジオルトの表情に、悲しみの色が浮かんでいる。
 早くどちらか一人を向こう側につけないとまずい。
 
「じゃあ、じゃんけんで決めましょうか。負けた方が――」
「俺の隣は罰ゲーム扱いなのか……」

 ジオルトの悲しみ具合がアップしてしまう。
 やってしまった。
 
「……じゃなくて、勝った方がジオルト様の隣へ移動ね! はい、せーの!」

 エレナの掛け声に合わせて、姉妹がじゃんけんをする。

「わーい!」
「チッ……最悪だわ」

 結果はフレイの勝利。
 ふてくされた顔は勝者というよりも、完全に敗者のそれだった。

「勝って嬉しなくない勝負は、これが初めてだわ」

 フレイはしぶしぶ席から立ち上がった。
 
 容赦ない痛烈な一言に、ついにジオルトは目頭を押さえてしまう。
 
(……ごめんなさい。本当にごめんなさい)
 
 罪悪感から逃れるために取った行動は、さらなる罪悪感を積み重ねるだけだった。
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