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【6話】ミレアの秘密
第一王子や第二王子と違い、これまで表舞台に上がってこなかった第三王子。
飛び抜けて優秀な頭脳と魔法力を持つ超人という噂はあるが、そのほとんどが謎に包まれている。
その正体が自分でした、と言ってきたラルフ。
いきなり何てことを言い出すのだろうか。
「……えっと、冗談ですよね」
あはは、と苦笑い。
ラルフには悪いが、冗談にしてはあまり面白くなかった。
しかしラルフは、一切表情を変えない。
真面目な顔で、まっすぐにミレアを見ている。
ラルフの真紅の瞳が、嘘を付いていないと訴えかけていた。
「もしかして本気ですか?」
「もちろん本気だ」
第三王子としての仕事のほとんどを、王都にいる超凄腕の有能執事がやってくれているらしい。
そのおかげで、のびのびと冒険者をやっているのだとか。
ラルフの話は、なんとも突拍子もないものだった。
普通であれば、とても信じられないだろう。
でもミレアは、その話を信じることにした。
ラルフの言うことなら信じられる。
それくらいにミレアは、彼という人間を信用していたのだ。
出会ってまだ二日だが、そう思えるだけの素敵な人物だということを、行動で示してくれている。
「俺から言っておいてなんだが、このことは他言無用で頼む。正体がバレると色々面倒だからな」
「かしこまりました」
そう言ってから、ミレアはすうっと息を吸い込んだ。
「あの、私の秘密も聞いてくださいませんか?」
どうして家出することになったのか。
ミレアはそれを、誰かに聞いてほしかった。
胸に溜まっているモヤモヤを吐き出したかったのだ。
「それは構わないが、俺は見返りを求めている訳じゃない。無理に話す必要はないぞ?」
「いえ、そんなカッコイイものではありません。私はただ単純に、誰かに聞いて貰ってスッキリしたいんです」
虐げられてきた家族との関係。
大切だった婚約者との出会いと裏切り。
具体的な名前を伏せながらも、家出に至った経緯を細かく話していく。
話を終えたミレア。
胸がスッキリして気持ちいい。溜まっていたモヤモヤを、うまく吐き出せたみたいだ。
「聞いて下さりありがとうございました」
「随分と苦労してきたんだな」
立ち上がったラルフが、ミレアの頭をそっと撫でる。
「よく頑張った」
どこまでも優しい声色が、ミレアの体をふわりと包み込んでいく。
これまでどんなに辛くても、誰にも言えず一人ぼっちだった。
労いの言葉をかけてもらえることなんて、一度だってなかった。
顔を下に向けるミレア。
ポロポロと涙がこぼれてしまう。
「ミレア、顔を上げてくれ」
ミレアの涙を、ラルフが指でそっと拭った。
「この家で君が涙を流すのはこれで最後だ。これからはずっと笑顔でいられるような、そんな場所にすると約束しよう」
「はい……!」
強くて頼もしい言葉に、泣き笑いの顔でミレアは応えた。
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